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閉店後のピザ屋。
店の灯りは半分だけ。
カウンターの上には空いた皿。
エリオットは椅子に座って、頬杖をついていた。
金髪の長い天然パーマが肩に落ちる。
目の前にはチャンス。
ネクタイは――
もちろん。
エリオットの手の中。
ぐい
チャンスが少し前に引かれる。
「……」
エリオットはにこにこしている。
チャンスが言う。
「またか」
エリオットは笑う。
「癖」
「知ってる」
エリオットはネクタイを指に巻く。
くるくる。
そしてまた。
ぐい
チャンスが少し近くなる。
「今日は強い」
エリオットは楽しそうに言う。
「チャンス逃げるから」
「逃げない」
「ほんと?」
エリオットはにこっと笑う。
その顔はやけに楽しそうだ。
挑発みたいに。
「逃げないなら」
またネクタイ。
ぐい
「もっと近く来れるよね」
チャンスが少し笑う。
「……お前」
「ん?」
「絶対わざとやってる」
エリオットは首を傾げる。
「何が」
「それ」
ネクタイを軽く揺らす。
エリオットは目を細めて笑う。
「気づいた?」
「最初から」
エリオットは肩をすくめる。
「だって」
また引く。
ぐい
距離がかなり近くなる。
エリオットはにこにこしたまま言う。
「チャンス」
「ん」
「引っ張ると来るから」
チャンスが少し吹き出す。
「犬じゃない」
「似てる」
「どこが」
エリオットは楽しそうに言う。
「ちゃんと戻ってくるとこ」
チャンスは少し黙る。
エリオットはネクタイを指に巻いたまま。
にこにこ。
完全に挑発している顔。
チャンスが言う。
「……楽しいか」
エリオットは即答する。
「うん」
「性格悪いな」
エリオットは笑う。
「よく言われる」
そしてまた。
ぐい
今度はかなり強い。
チャンスの顔がすぐ近く。
エリオットは楽しそうに囁く。
「チャンス」
「ん」
「逃げないんでしょ?」
チャンスは少し笑う。
それから。
ネクタイを掴んでいるエリオットの手首を軽く掴む。
「……」
エリオットの目が少しだけ丸くなる。
チャンスが言う。
「挑発するなら」
少し顔を近づける。
「最後までやれ」
エリオットは一瞬止まって。
それから――
また。
にこっと笑った。
「いいよ」
ネクタイ。
ぐい
「捕まえてるし」
チャンスは小さく笑った。
夜のピザ屋。
ネクタイはまだ。
エリオットの手の中。