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ゆう&グリム
ナイトレイブンカレッジの夜は、いつもより静かだった。
風に揺れる木々の音と、遠くで鳴くフクロウの声だけが中庭に響いている。
「なあ,ゆう……この時間に呼び出すなんて、嫌な予感しかしねーんだゾ」
グリムが肩の上でぶつぶつ文句を言う。
原因は数時間前。ディア・クロウリー学園長から届いた一通の怪しすぎる伝言だった。
「旧校舎地下の“時計の間”で異変が起きている。
調査は“信頼できる生徒”に任せたい」
――そしてなぜか、選ばれたのがこちらだった。
地下へ続く階段を降りると、そこには巨大な古時計があった。
針はバラバラに回り、刻む音は不規則。空間そのものが歪んでいる。
「これ、完全に魔力暴走だゾ……」
その瞬間、時計が眩しく光り、視界が白く弾けた。
目を開けると、そこは見覚えのあるようで、どこか違う場所。
「……ハーツラビュル寮?」
だが、赤いバラは黒く枯れ、空は夜のまま動かない。
「面白いじゃない。時間と記憶が混ざった“迷宮”ってわけね」
声の主はアズールだった。
さらに、レオナ、ヴィル、マレウスまで現れ、どうやらそれぞれ別の場所から同時に迷い込んだらしい。
マレウスが静かに呟く。
「これは“後悔”を糧に広がる魔法だ。
強い感情を持つ者ほど、深く囚われる」
迷宮は、寮生たちの過去の選択を映し出し始めた。
・レオナは、王になれなかった自分
・ヴィルは、称賛されなかった瞬間
・アズールは、弱かった頃の自分
そして監督生の前にも、元の世界に帰れなかった“あの日”の記憶が現れる。
「……戻りたいって思ったこと、あるだろ」
グリムの声は、いつもより静かだった。
でもゆうは一歩前に進む。
「それでも、今ここにいる」
その言葉に反応するように、壊れた時計の針が止まった。
迷宮は崩れ、気づけば全員、地下の時計の間に戻っていた。
時計は元通り、静かに時を刻んでいる。
「チッ……余計なもん見せやがって」
レオナはそう言いながら、少しだけ表情が柔らいでいた。
学園長は満足そうに頷く。
「素晴らしい!やはり君たちは――」
「給料は出るんだろうな?」
全員の視線が学園長に突き刺さったのは、言うまでもない。
夜明け前、ゆうとグリムは並んで歩く。
「なあゆう。ここ、悪くないかもな」
静かに笑うグリムに、ゆうも少しだけ笑い返した。
――歪んだ世界でも、共に進む仲間がいる限り。