テラーノベル
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キーンコーンカーンコーン
「起立〜。礼。着席。」
軽くお辞儀をし、着席した雪斗は家から持ってきた本を読み始めた。
『え〜みんなおはよう』
今日は始業式。
生徒はもちろん、教壇に立つ教員にとっても休みが終わり
【いよいよ始まった……】
——そんな空気が、教室内に漂っていた。
担任はそのまま話を続けた。
『今日から三学期が始まります。冬休み気分をしっかり抜いて、ちゃんと勉強に励むように。』
「はーい………」
数名の生徒が返事をするが、やはり活気がない。
だが、担任は知っている。
次に発する一言で、教室内のテンションが爆上がりすることを。
『それと、出席を取る前に。突然ですが、このクラスに転校生が来ることになりました。』
一瞬の静寂。
「「「イェーーーイ!!!」」」
「え?転校生?」
「女子かな?男子かな?」
「やば、もっとちゃんとメイクしとけばよかった。」
担任の予想通り、テンションが爆上がり。
うるさいなと思いながらも、
なんだかんだで興味はあるのだろう。
雪斗も、本を閉じていた。
『はいはい静かにー。それでは転校生入ってきて〜』
静まり返る教室
ガラガラ………
——ドクン
教室に入ってきた女の子を見て
雪斗の心臓が、大きく跳ねた。
「女の子じゃん!」「え?かわいくない?!」
すぐにざわつき始める教室。
『はいはい、静かに!』
手を叩きながら注意を促す担任。
ここまで完全にテンプレのような流れのため、担任も少し楽しくなっていた。
まだ若干のざわつきがあるが、ある程度静かになったところで話を続けた。
『それでは自己紹介をお願いします。』
教室を見回す転校生。
雪斗と目が合い、嬉しそうに笑う。
「皆様初めまして!
今日から転校してくることになりました。はる——」
一瞬、言葉に詰まり、慌てて言い直す。
「月城こはるって言います!よろしくお願いします!」
(今の大丈夫だよね………?
雪斗くん見てたら……
つい、はるって名乗っちゃったよ………)
2つの意味でドキドキしながら大きなお辞儀をしたこはる。
『え〜月城さんは、家族の都合で転校が多かったそうですが、両親が海外へ行くことになった事をきっかけに、今回は本人の希望で、昔住んでいたこの街に戻ってきたとのことです。』
『みんな仲良くしてあげてください。』
「「はーい!」」
担任の問いかけに、みんなで大きな返事をする。
ペコッ
こはるは再度お辞儀をした。
『それじゃ席だが……朝倉、廊下に机運んであるから、お前の隣の窓際に机運んで。月城さんはそこの席ね。』
そう言われ、返事をした雪斗が立ち上がる。
「あ、大丈夫です!自分で運びます!」
そう言って廊下に出ようとするこはる。
しかし、担任に止められた。
『大丈夫。こう言うのは男子に任せておきなって。』
担任はそう言うと、雪斗に早く行けとジェスチャーで合図を送り、雪斗もそそくさと机を運んできた。
『それじゃ月城さんはそこに座ってね。』
こはるは言われた通り、周りの視線にビクビクしながら、雪斗が運んでくれた机に向かった。
こはるが席に着くのを確認した担任。
『じゃー出欠を取るぞー。』
『朝倉雪斗』
「はい。」
『芦田真琴』
「はい。」
『……』
「…」
出欠が始まり、雪斗が1番に呼ばれたのを確認してからこはるは小さな声で雪斗に話しかけた。
「机……ありがとうございました。」
こはるの小さな声に気付いた雪斗は、こはるの方に顔を向け、同じく小さな声で答えた。
「全然大丈夫だよ。」
「あさくら、ゆきと……って言うんですね…」
いつも届かずに、心の中でしか呼べなかった名前。
ようやく本人の前で名前を呼べた事に、今にも飛び上がりそう。その衝動を抑えるのに精一杯のこはる。
「うん。よろしくね、月城さん。」
「こちらこそよろしくお願いします!でも……」
でももう一つだけ。
「私のことはこはるって呼んでください。」
——あなたの声で、
名前で呼んでほしい…
「ずっと名前で呼ばれていたので……その方が落ち着くんです。」
「わかったよ。でもこはる…もしかして年明けに神社で…?」
『月城こはる』
担任に名前を呼ばれる。
「はい!」
返事をした後そのまま雪斗の方を見て
「また…会えましたね♪」
笑顔で答えるこはる。
その笑顔を見て恥ずかしくなった雪斗はついつい視線をそらしてしまった。
「そうだね。」
【いよいよ始まった……】
月城こはると、雪斗の物語。
窓の外に視線を移すこはる。
低い位置に浮かぶ、白い月。
こはるは、満面の笑みでそれを見つめていた。
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