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2×××年、科学技術が急速に発展し人々の生活は便利なものになっていた。購入したロボットを働かせ給料を手に入れたり、はたまた家事育児などを任せたり、しかしそれは日常生活に限った事ではない。ゲームも同様に大きな成長をしていた。
特に数十年前から存在するRPGというジャンルが1番大きかった。3Dヘッドホンというものが誕生し、よりリアルにゲームに入り込めるようになったのだ。
3Dヘッドホンは目の前にレンズがありそれが画面を3Dに映し出す。音や振動もありその世界に入っているかのような感覚に陥るのだ。だが、ホラゲーなどでショック死という問題も起こっているが、それだけリアルに再現されるということだ。
そんな中、普通の大学生ゲーマーとして暮らしている咲紀弥 蓮莵(さきや れと)は、マイナーゲームを見つけ遊ぶのが趣味だった。 しかし公開されている大半を遊んでしまい暇を持て余していると、一つのゲームを見つけた。
「なんだこれ…『誰も幸せにならないRPG』?レビュー数は3件だが、賞賛のコメントが上がってるな」
このゲームは素晴らしい、人生が変わる!や、このゲームのおかげで全てが変わりましたなどといったコメントが乗っていた。
変なの。これで人生変わってたら3年も放置されてねぇよ。
違和感を覚えながらもマイナーゲームが好きな蓮莵は内心ウキウキしていた。いつも通り3Dヘッドホンを装着しダウンロードを開始する。
ゲームのアイコンは主人公らしきミニキャラドット絵が写っている。ゲーム詳細には『誰も幸せになりません。誰も幸せにできません。』と翻訳機にかけた日本語をそのまま持ってきたような下手くそな文だけが書かれていた。
ダウンロード完了という表示が現れ、プレイボタンをクリックする。会社名YaMiの次に何も加工がされていない初期のフォントで【誰も幸せにならないRPG】と書かれていた。ホーム画面になると、スタートボタンしかなく、ソフトを閉じるボタンも消えていた。
疑問に思いながらもスタートを押すと3Dで映し出されたどこまでも続く草原だけがあった。実践のチュートリアルはなく文字で説明される。『魔物を倒して攫われた姫を助けましょう。この世界を幸せにしてください。』 広く青い空が澄み渡る何も無い世界には魔物がいる気配もしなかった。
その時、ヒュッと風を斬る音と共にボロボロの剣を持った90cm程度の魔物が現れた。
「━━━━━━!━━、━━━!」
何も言っているか全く分からないが威嚇をされている事だけは読み取れた。最初はザコ敵で経験値とアイテム集めをするかと理解し始めた。 魔物が剣を振り回し、近づいてくる。こちらも剣を振ろうと構えようとした。が、構えられなかった。あたふたしているプレイヤーに向かって敵が剣を振り下ろしてくる。
鋭い痛みと共に赤い数字で3とダメージ数が表示された。
あれ、3Dヘッドホンって痛みまで表現されたっけ…。
よく思い出せば風や地面を踏んだ感覚もある。キーボードを押しても反応しない。いや、キーボードが無い。手にある感覚は机とキーではなく木の剣だけだった。 魔物が次々に現れ、生臭くベッタリとした空気が肌を撫でる。
蓮莵は確信した、ここは3Dで映し出された架空の世界じゃない。本当にRPGの世界に入ってしまったのだ。なぜ3Dの世界に入ってしまったのか、なぜゲーム人口がこんなに少ないのか、なぜ誰も幸せにならないのか。魔物達が手に持っている骨やネックレスのように首にかけている紐で繋いだ頭蓋骨を見て悟った。そして、全てを諦めた。