テラーノベル
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なんだか、胃のあたりがモヤモヤしてきた。これが終わったら、ちょっと早いけどご飯を食べに行こうって言ってみよう。
そう言えば、柊とデートだからって、朝ごはんを食べるタイミング無くしたんだ。
だから今日のあたしは思考回路がネガティブ路線まっしぐらなんだ。
正確には食事をとるタイミングはちゃんとあったけど、ご飯が喉を通らなかった。
今日のことが楽しみすぎて、胸がいっぱいだったから、ご飯を食べるよりも服やアクセサリーを選ぶ方が優先されたし、プールだからまとめ髪にしようって、スマホで何度も見たはずなのに、ヘアアレンジのページをもう一度吟味していたの。
あたしにはよっぽど、そっちのほうが大事だったの。
泣きたくなりながら、我慢していると、柊よりも先に女の子があたしに気づいた。ビームは柊じゃなくて、あの子の方に効果があったらしい。
同性のあたしでさえ、どきん!と高鳴るくらい、可愛い子だった。柊と良く似合う女の子だと思えた。
にこりと妖艶に微笑んだひとは、次の瞬間。
──柊の頬に、軽いモーションでキスをした。
パキン、と頭の端っこで何かが割れた音がして、咄嗟にカーテンを閉めると、止めていた酸素を送り込むように、口から大きく息を吸い込んだ。
なにあれ。なに今の。あの女の子、あたしを見たよね?いま。確認したよね?それで柊にキスしたの?ありえなく無い?
柊だって、押し返せばいいのに、あんな時だって反応薄いよ。ありえなく無い?
……ありえなく無い?
熱が頭に集中したみたいに、頬が熱くなる。
モヤモヤっとしたものが、一気にイライラに変わって、黒いビキニを猛スピードで脱いだ。たぶん、10秒もかからなかったとおもう。
「……あれ?なんで着替えてんの」
「柊が選んだの、全然似合わなかったから、別の買ってきた」
「は?俺見てないんですけど。結局どれにしたの」
「最初にあたしが選んだやつにしました」
「ふーん。あれもまあまあ似合ってたから良いんじゃね」
柊はさっきの調子で手を出すけれど、拗ねたあたしはその手を軽く叩いた。
あーあ。あたしって、本当にかわいくない。
柊は、は?みたいな顔をしたけれど、一度ひねくれたこころはなかなか真っ直ぐには戻らない。
強引に手を攫ってくれるかなってほんの少しだけ期待をしたけれど、柊は手を繋いでくれなかった。せっかく繋いでくれたのに、ほんの少しのきっかけで穴が空いちゃう。
意地悪なわがままをしたのはあたしなのに、泣きたくなるのも、やっぱりわがままなあたしだ。
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白山小梅
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