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白山小梅
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……何今の、きっっしょ。
あろうことか、あいつ、、、が不意打ちに触れた体温の跡をゴシゴシと腕で擦った。過剰なくらい擦って痕跡すら消してやる。
それに、別れ際めちゃくちゃテンション高かったけど、なんなの?怖すぎ。
気を取り直して、ずらりと並んだ水着を適当に眺める。黒が本命だけど、柴崎は艶々の健康肌なので、こっちのベージュも似合いそうだ。
しかも、胸、でかいからな。これは柴崎にとって、所謂地雷ってやつらしいので、言わない。
脳内で勝手にファッションショーをしながら柴崎が呼ぶのを待っていれば、何故か水着ではなく元々着ていた服に着替えた柴崎は「買ってきた」という。
なんで見せなかったわけ?
また恥ずかしいとか言うつもり?
水着とか下着とかわんないっしょ。なにを恥じらう必要があんのよ。
でもまあ、柴崎の意外とシャイなところも可愛くて仕方ないので、なかなか俺もやばい。
……でも、柴崎はどことなく暗い雰囲気だ。目の辺りが沈んでいる。俺がしつこすぎるのがいけなかったのか。
ごめんなさいの気持ちを込めて手を差し出すと、叩かれてしまった。どうやら、本気でしつこかったらしい。
俺はまた間違えたみたいだ。
試着室は一緒に入っちゃダメなのと、それから、何回も強請るのは無しで。
このふたつを脳内の柴崎メモに残しておく。
水着はスカートとかを選んでいたくせに、柴崎の今日の格好はショートパンツで、正直、さっきのスカートよりそれが短くね?と言ってやりたい。
ウエストがきゅっと細くなって、裾が拡がっているタイプのそれだ。個人的にこのショートパンツ、好き。
柴崎はびびるくらいスタイルが良いので、すらりとした長い脚をお咎めなしに拝めるのは嬉しいけれど、他の男から見られるって思うと腹立たしいものがあるから、マーキング代わりに手を繋いでた。
でも、ダメって言われたし、嫌われたくないので我慢する。
柴崎は昔から危機管理能力が薄いとおもう。昔も、急にねむい!と言って秒で昼寝したことがあった。俺の隣で。こいつ、距離感大丈夫なの?って心配したこともある。
「……何見てんの?」
お腹が空いたらしいので、早めの昼飯。俺も朝から何も食ってなかったからちょうど良かった。
柴崎の食べっぷりが良くて、頬杖をついて眺めていると、今度はそれがお気に召さなかったらしく、柴崎は不機嫌そうな視線を寄越す。
こういう、柴崎の強気な表情が、じつは俺の加虐心を煽る。高校の頃から、柴崎の綺麗で勝気な表情を見る度に、ずーっと屈服させたくてたまんなかった。これは、言えば確実に引かれるので、内緒。
飽きることなく、いつまでも見ていられるけれど、そろそろ口を開かないと、目からビームでも出して怒られそうだ。
「何でもない。てか、柴崎って自炊してんの?」
「まあ、人並みには出来るよ」
「まじか。得意料理あんの?」
「んー……あ、餃子とか!」
「最高じゃん。酒用意するからこんど食わせて」
「いいよ、いっぱい作るね。……柊、まだ食べないの?冷めるよ?」
「ん。もうちょっと、食べてる柴崎を見ていようかなーと」
「や、ちょっとそれは、流石に食べづらいから辞めて」
美人系の顔が、笑うと少し幼くなる。
こういう、俺が知らない、些細な柴崎ほとりを見つける度に、俺は柴崎のことが好きになっていた、と、おもう。昔のことだから覚えてないけど、多分。
だから、割といま俺は嬉しいわけで、柴崎といると勝手に頬が緩んで仕方ない。
急にニヤけるとキモイ男と思われそうなので、俺は自分の表情筋と戦っているのに、柴崎は急に《ひいらぎ、すき》とか言うの、ちょっと舐めてると思う。
ご飯を食べ終わると、ふらふらと適当に買い物をして、ゲーセンで撮りたいって言われたプリを撮って(これは実物が10倍可愛いと思った)、時間を潰していれば、柴崎の機嫌は元に戻っていたし、あっという間に日が暮れた。