目が覚めると豚の数が減っていた。
出荷と呼ばれる日らしく20頭ばかり減っていた。
俺は腹部に感じた鈍い痛みを、感じないように立ち上がった。ちょうど餌やりでジョージが、スコップに入った米粒を投げているところだった。俺は米粒を食べながら泣いた。泣きながら食べた。同じ豚と言えど満足のいく会話も出来ず、仲間とも言えるほどではなかった。だが、飯はいつもより旨く感じなかった。
ふと背中がむず痒く感じ、振り返ると一匹の牝豚が鼻をこすりつけてきていた。
ブヒブヒと、まさにぶた鼻というやつだ。
この牝豚は満足に会話こそ出来ないが、どのタイミングで餌やりが始まるか、どの位置で餌を貰いやすいかを、把握している節がある。他の豚よりは、ましな豚だと思っていたが、今日はうっとうしい。
自慢の豊満なボディを揺らして、振り払おうとしたが、牝豚の目は潤んでいた。
俺はそのままにして、無言で飯を食い続けた。
無言で飯を食い続けている内に、俺はこのままで良いのかと思った。
他の豚と比べて、高い頭脳を持つ俺だ。この環境に一矢報いる事が、俺には出来るんではないかと。それは、他の豚のようにブヒブヒ騒ぐ事や、衝動的な怒りではないだろう。
おれは決めた。豚とは思えない高尚な方法でこの理不尽に抗ってやると。
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