テラーノベル
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(向井視点)
誰でも、変われる……
さっきの佐久間先輩の話を、何回も頭の中で繰り返す。
そうやん、俺は変わるために東京に来たんやもん。
うん、きっと大丈夫。
目黒くんもラウールくんもいてくれる。
佐久間先輩、渡辺先輩、深澤先輩がいてくれる。
一つ呼吸して、帰ろうと後者に背を向ける。
「あれ?康二?」
「康二くんだ!今帰り?」
「目黒くん、ラウールくん!?」
後ろから声をかけられて振り向いたら、目黒くんとラウールくんがいた。
今日は、放課後に生徒会の会議があったんやっけ?
「ちょうどよかった!一緒に帰ろ!」
「康二、何か忘れ物とかない?」
ラウールくんと目黒くん……
この2人は、ほんまに優しいなぁ…
「うん!!」
2人の後を走って追いかける。
うん、佐久間先輩の言う通りや。
俺は、変われとる!!
(渡辺視点)
「………あ」
帰り道、通りかかった場所に吸い殻が落ちてた。
最悪だな、何で吸い殻ポイ捨てするんだよ、頭おかしいだろ。
嫌な気分になった。
嫌な気分になったけど、ポイ捨ては見逃せない。
「…………」
こういう時に過去に風紀委員やったのを恨む。
そしたら、こんな正義感生まれなかったのにな。
手袋……はねぇな。
仕方ない、ポケットティッシュを取り出して…
「はぁ…」
近くに喫煙所あるな、あそこに持ってくか。
何でこんな近くに喫煙所あんのにポイ捨てすんだよ。
喫煙所…っていうか、その近くも匂いはするんだよな。
はぁ、ほんと最悪。
何で俺がこんなことしないといけないんだよ。
ただでさえ嫌いなのに、何で俺がこんなことしなくちゃいけねぇんだよ。
ツンとした匂いが鼻を刺激して、頭がズキズキする。
さっさと捨てて、急いでそこから離れる。
気持ち悪いな…
早く手を洗いたくて、近くのゲーセンに入る。
直接触ったわけではないけど気持ち悪い。
タバコなんて、触りたくないのに…
って、手洗い場って店の奥なのかよ…!!
くっそ…ガシャガシャうるさいとこをあるってかないといけないのか…
「あれ?翔太じゃん!こんなとこで何してんの〜?」
しばらく歩ってたら後ろから声をかけられた。
この声と軽さ……
「ふっか……?」
案の定、振り向いたらふっかがいた。
何でこいつがいる……?
「翔太がゲーセンなんて珍しいね?」
「別に、俺は手を洗いに来ただけ」
「手を洗いにゲーセン……?」
ふっかがすごい不思議そうにこっちを見てる。
そうだよな、冷静に考えたら手を洗いにゲーセンって意味わかんないよな。
「そう言うお前は何してるんだよ?」
「俺?俺はクレーンゲームしに来ただけだよ」
「あぁ、そういえばお前好きだったよな」
「で、満足したからもう帰るとこ」
「………え?」
笑顔のふっかの手元、よく見て見たらでかい袋があった。
そこからはみ出すくらいに主張するぬいぐるみ。
これ、全部こいつがとったのか……?
「帰って照のこと驚かすつもりなんだ〜!わら」
「多分誰でもびっくりするぞ」
結局、手洗い場までふっかについてきてもらって一緒に帰ることになった。
……こいつ、多分気づいてるな。
俺はもちろんだけど、ふっかもタバコの匂いに敏感なんだよな。
喫煙所に行ったわけだし、多少の匂いはついてるわけで、こいつなら気づいてもおかしくない。
匂いついてるから早く着替えてぇな。
「………翔太、こっち側歩きな」
「ん?何で?」
「俺がそっち側歩きたい、わら」
「はぁ?しょうがねぇな」
ゲーセンから出てすぐ、ふっかに車道側を歩くように促される。
何なんだよって思いながら前を見る。
「……ぁ…」
少し先にある路地裏から煙が上がってる。
タバコ……
こいつ、俺がタバコ嫌いだから…
ふっかの顔を見ても涼しい顔のまま歩ってる。
「受動喫煙」
「息しなければよくない?わら」
そう言う問題じゃなくないか…?
まぁ、こいつがいいならいいし、こいつの優しさには甘えても問題ない。
それに、その路地裏を早く通り抜ければいいだけだし。
俺が少し早足になると、ふっかも俺に合わせてくる。
とっとと通り抜けようぜ。
そんな気分で路地裏前まで歩いた。
「「………!」」
急に、路地裏から人が出てくる。
タバコの匂い……頭いてぇ…
「……翔太」
ふっかが俺の前に出る。
路地裏から出てきたのは複数人の男たち。
手に持ってるタバコの吸い殻、ビール缶……
俺の嫌なものを全部集めたような連中…
そいつらは俺らを見下す。
「チッ、危ねぇな…おい、危うくぶつかるとこだったじゃねぇかよ?あ゛ぁ?」
タバコの臭いが鼻を貫く。
まだ残ってるタバコの煙が、そいつが喋るたびに匂いが充満する。
喋んなよ……
イラつきながら睨みつける。
「すみません、少し急いでて」
ふっかの方はやや抑え気味な笑顔で対応してる。
何でふっかが謝ってんだよ。
お前が謝る必要なんてないだろ。
俺らは何も悪くない。
悪いのはこいつらじゃん!!
「急いでてぇ?俺らだって急いでるんだぜ?なぁ?」
他の男たちと笑ってる……むかつく…
「それにさぁ、これ。慌てて止まったから服に酒こぼれたんだけど?どーしてくれんだよ?」
男はわざとらしく服の汚れを指差す。
嘘つけ、その汚れは元からだろ。
こいつら、全部の責任を俺らに押し付けようとしてる。
「………ビール缶、空なのに汚れたんですか?」
「…!」
ふっかが笑顔のままその男に言った。
「あ゛?」
男は明らかにイラついた表情をする。
「音的に、その缶全部空ですよね?それなのにそんな大きなシミができるとは思わないかなぁって思って。勘違いだったら申し訳ないんですけどね」
笑顔のまま、冷たい目で男を見つめてる。
「ははっ!空じゃねぇよ!w」
何もいえずにいる男の後ろにいた奴。
そいつが笑いながらビール缶を前に出してくる。
中身が出て……
「……っ!ふっか!!」
「………」
思いっきり、ふっかにかかった…
「ってめぇら……!!」
今すぐぶん殴りたい。
こっちは未成年だぞ…!!!?
正気じゃない、狂ってる…!!!
くそ、くそがっ!!
左手を握りしめて、思いっきり男の顔面に喰らわそうとする。
正当防衛、向こうからやってきたんだ。
絶対許さねぇ……!!!
「……翔太」
「……っ!!」
ふっかに肩を掴まれた。
止めんなよ、こいつらが許せない。
目の前でゲラゲラ笑ってるこいつらが許せない…!!!!
「ガキが大人に逆らうからこうなるんだよw」
「いい経験になったなぁ?w」
うるさい、うるさいんだよ!!喋んなっ!!!
「………っ」
目の前でタバコを吸い始める。
匂いがひどい……路地裏近くってのもあって人も少ない…
最悪だ、頭痛い、気持ち悪い……
目の前で、複数人の男たちがタバコを吸ってる……
視界が眩むくらいの量の煙……
赤く光ってるタバコの先端………
全部が、あの日と同じ…
「……ケホッ」
「翔太…先帰って」
「…や、だ……お前が危ないじゃん…」
思わず咳き込んだ俺を心配するように覗き込むふっか。
嫌だ、こいつだけをここに残して逃げるなんてやだ。
それに、ふっかは今頭から酒被ってる状態だし、早く帰らなきゃいけない…
早く、こいつらを何とかしないと…
「翔太……俺は大丈夫だから…」
「大丈夫じゃねぇだろ…ゲホッケホッ!」
「俺はこういうの慣れてるから!」
「うるせぇ!!」
絶対、絶対こいつを1人にさせない。
思いっきりゲラゲラ笑ってる男たちを睨みつける。
許さねぇ、絶対許さない……!!
「あ゛?お前、何だその目?」
俺の視線に気づいたふっかに酒をあぶせた男が不快な目をする。
何も言わずに、俺は静かに睨みつける。
正論だけじゃ何もできない奴がいる。
複数人に1人で挑もうとするなんてバカだ。
そんなことわかってる。
わかってる、嫌ってほどわかってるんだよ。
それでも、それでも俺は……
「翔太……」
不安そうな目をしてるふっか。
ここには、俺とふっかしかいない。
なら……
「おい、何だこいつ」
「バカじゃねぇの?w」
「まるで狂犬か?ww」
「ははっ!そりゃあいい!!w」
狂犬、か…
「ははっ、ほんといいな、それ」
「あ゛?」
男たちの笑い声に負けないくらいに声を張る。
ふっかも驚いたように目を丸くしてる。
「狂犬だって?こっちは散々呼ばれ慣れてんだわ」
「おい!今日は身だしなみチェックの日だぞ!制服ちゃんとしろ!」
「暴力禁止だって言ってんだろーが!」
「廊下走んな!!」
「提出期限!!!」
涼太と一緒に風紀委員をやってた去年。
俺の中に眠ってた正義感が目覚めたらしい。
些細なことにも首を突っ込んだ。
暴力とかが起こっても、俺は自分から足を踏み入れた。
最初のうちは殴られて泣いてた。
でも、それ以上に涼太が俺に構ってくれたんだ。
「翔太、見回りお疲れ様……え?」
「グスッ…りょぉたぁ……いたぁぁい!!」
初めて暴力沙汰に突っ込んだ日。
注意したら逆ギレされて俺がメチャクチャに殴られた。
涼太は驚いた顔をしながら、俺のことをめっちゃ心配してくれた。
一緒に保健室まで行ってくれて、ずっと優しかった。
だから、俺は殴られるのが怖くなくなった。
むしろ、暴力沙汰には積極的に足を踏み入れたんだ。
「渡辺って狂犬みたいだよな」
初めて狂犬って言われたのは夏休み明け。
クラスメイトにそんなこと言われたんだ。
いつの間にかそのあだ名は広がってて、みんなに呼ばれるようになった。
“風紀委員の狂犬“って。
他人の喧嘩だろうと何だろうと首を突っ込む。
それはいい意味でも悪い意味でもあった。
狂犬みたいで可愛いって言うやつの方が多いと思うけど、きゃんきゃんうるさいって言うやつも少数ながらいたらしい。
「狂犬で結構。俺は何事にも噛み付くで有名だったんだわ」
左耳のピアスをいじる。
もう2度とあの時の風紀委員魂を戻すことになるなんて思わなかったな。
今だけだし、あくまでふっかを守るため。
夢花𓂃𓂂ꕤ*.゚
1,339
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コメント
7件
翔太も変わろうとしてる、!!! 苦手なタバコを自ら拾って、トラウマなはずの注意もまた積極的に突っ込んでいったところが感激でした😭✨ ここまま最後まで耐え抜けるのか、いわだてが助けに来てくれるのか! 深澤の「帰ったらひかるを驚かそうと思って」発言がいわふかでまじテンション上がります....!! 次回も楽しみです!!✨
nbfk感じます…😌😌 好きだぁ… ここでiwさん来てくれたりしないかなぁという妄想が…! 次回も無理なく更新待ってます!
**第35話「狂犬」、読んだわ!** 向井くんが佐久間先輩の言葉で「変われてる」って実感してるの、すごく温かい気持ちになった。で、渡辺先輩パートで一気に空気変わって、タバコのポイ捨て拾ってるとこからもう胸がぎゅっとなった。 ふっかが車道側歩いてくれるシーン、優しさがにじみ出てて刺さった…そしてあの男たちとの対峙。翔太先輩が過去の「狂犬」時代を思い出して「噛み付くで有名だったんだわ」って言い放つとこ、めちゃくちゃ痺れた。ふっかを守るためにあえてその牙をむく覚悟、かっこよすぎる🔥 次、どうなるんだろう…ふたりとも無事でいてほしい。続きめっちゃ楽しみにしてる!