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(岩本視点)
風紀委員の会議で帰るのが遅くなっちゃったな。
今頃ふっかは何してるんだろ?
あの後すぐ帰ったらしいけど、家でゲームでもしてるのか?
「照、この後すぐ帰る予定?」
「宮舘先輩?」
昇降口、宮舘先輩に声をかけられた。
「一緒に帰らない?」
「え?」
笑顔のままの宮舘先輩。
珍しいな、宮舘先輩の方から声をかけてもらえるなんて。
促されるまま、宮舘先輩と横に並んで歩く。
なんか、え?何だこの状況?
宮舘先輩と2人きりなんて初めてじゃない?
「照、今ふっかとルームシェアしてるんだよね?」
「………え?」
何とも言えない空気を破った宮舘先輩の言葉。
いや、え?
何でそれを知ってるんだ?
「翔太から聞いたんだ。ふっかが楽しそうに照との生活のこと話してたって」
「ふっかが…?」
宮舘先輩は笑顔で頷く。
まさかふっかが周りに言ってるなんて…
嬉しいようなちょっと恥ずかしいような気分だ。
「それでなんだけどね、ふっかとルームシェアしてて困ってることとかあったりしない?」
「困ってること…」
何でそんなことを聞くのかはわからないけど、困ってること、か…
「…やっぱり生活リズムの違いかな…ふっかは朝弱いし、起こさないと昼まで寝てる」
「あぁ、確かにね」
宮舘先輩が苦笑する。
「これに関してはふっかに直してもらうしかないよね」
「そうですね」
それ以外には特に思い当たることはないな。
価値観の違いとかあるのは当たり前だし、なんだかんだふっかは家のことやってくれるからな。
「俺も翔太とルームシェアしてるからわかるけど、お互いのことを尊重するのが大事だよね」
「そうですね………え?」
さりげなく宮舘先輩の言った言葉。
翔太って、確か渡辺先輩だよな?
え?ルームシェアしてるの?
「俺らは結構長くルームシェアしてるから、困ったことがあったらいつでも相談してね」
あ、そういうことか…
何で宮舘先輩に声かけられたんだろうって思ってたけど、相談に乗ろうとしてくれてたんだ。
「ありがとうございます」
宮舘先輩とお互いの生活について話しながら歩く。
もうそろそろで家に着くなって思ったっとき、ズボンのポケットが震えた。
「…?すみません、ちょっと」
宮舘先輩に一声かけてスマホを開く。
電話……ふっかから?
「もしもs…」
『テメェ、今何つった!?』
通話ボタンを押してすぐ、知らない男の怒声が耳に響いた。
『うるせぇって言ってんだよ。あと、臭いから口も開かないで欲しいんだけど』
次に聞こえてきたのは渡辺先輩の声だった。
さっきの男の声が漏れてたのか、宮舘先輩も少し驚いた顔でこっちを見てる。
ふっかの電話から怒声と渡辺先輩の声がした…
「宮舘先輩…」
もしかしたら、宮舘先輩にも関係があるかもしれない。
宮舘先輩にも聞こえるようにする。
『ガキのくせに大人に逆らってんじゃねぇよ!!』
『…っ!翔太っ!!!』
『チッ、追い詰められたら暴力を振るしかできなくなるとか、お前らのがよっぽどガキだろ。頭がな』
『テメェっっ…!!!』
「……え?」
聞こえてきた声に、宮舘先輩は顔色を変える。
男の怒声、ふっかの焦った声、鈍い殴打音、渡辺先輩の冷めた声。
喧嘩……?
『………舐めやがって…このガキがっ!!!』
『翔太!!!』
『危ねぇから逃げろって!!』
声だけで、その場で何が起こってるのかがわかる。
これ、ただの喧嘩じゃない。
さっき聞こえてきた殴打音とはまた別の音がする。
金属………
「翔太…!!!」
「っ!宮舘先輩!」
その音を聞いて何かを察した宮舘先輩が走り出す。
俺も、それを慌てて追いかけた。
(宮舘視点)
嫌な予感が俺の頭の中をぐるぐる巡ってる。
翔太の声、ふっかは焦ってたのに翔太だけは妙に冷静だった。
その声を聞いて、俺の中にはあの日の翔太が蘇ってきた。
あの金属の音とそれを引きずるような音。
多分、鉄パイプ…
ふっかがその場にいるってなると、きっと翔太は守ろうとする。
このままじゃ翔太が危ない。
それだけが、俺の体を動かしてた。
「……翔太、どうしてさっきの喧嘩に飛び込んだの?」
「ん?」
ある日の保健室での会話だった。
体育の授業で軽くトラブルが起こった時、翔太が喧嘩を止めようとして殴られた。
口内が軽く出血してて、俺が保健室に一緒に来た。
今は保健の先生が席を外してるみたいで、俺が代わりに翔太の手当てをしてたんだ。
俺の質問に、翔太は殴られた左頬を押さえながら目を丸くした。
「…何でって…あのまま放置してたら周りだって危ないじゃん」
「それはそうなんだけど…」
だからって、翔太が傷つく必要なんてないのにな…
保健室の棚からガーゼを取り出しながらそんなことを思う。
ここ最近、翔太はほぼ毎日怪我をしてる。
その理由のほとんどが喧嘩を止めてるからだった。
そのおかげで、俺はすっかり保健室の棚のどこに何が置いてあるのかを理解してた。
「心配してる?」
ガーゼをピンセットで挟んでると、翔太がそんなことを聞いてきた。
「当たり前でしょ。それに、俺は翔太の怪我してるとこ見たくないんだけど」
「ふ〜ん…そっか」
聞いてきた割には興味のなさそうな返事。
翔太に口を開けるように促して、切れてる部分にガーゼを当てる。
くすぐったそうにムズムズしてる翔太に対して、何だか可愛いなって思って笑顔が漏れる。
「出血は止まってるかな…」
「ん〜、だから大したことないって言ったじゃん」
少しだけ不満そうにする翔太。
大したことないって言っても、左頬は結構赤くなってる。
次に湿布を取り出す。
赤くなってる頬に軽く当てると、ひんやりしたのか翔太が目をぎゅって閉じた。
剥がれないようにしっかり貼り付けて、これで手当ては終わりかな。
開いた窓から風が吹いてカーテンが揺れる。
外からはクラスメイトの声が聞こえてきて、でも、それもどこか遠くに感じる。
翔太は外を見ながら湿布をいじってるから、その手を止めた。
「湿布取れちゃうよ」
「別にいいし」
軽く息を吐いて、翔太の手を握る。
「翔太、俺はさ翔太が傷つくのは嫌だよ」
「…知ってる」
ちゃんと伝えなきゃいけない。
これ以上翔太が傷つく必要なんてないんだよって伝えないと…
「でも、涼太は心配してくれてるじゃん」
「…え?」
「涼太が心配してくれるから、俺はやめる気ないよ」
「いや、え?どういうこと…?」
意味がわからなかった。
心配してくれるからやめない?
翔太が何を考えてそんなことを言ったのか、全然わからない。
「…とにかく、翔太はもっと自分のこと考えた方がいいよ」
「はいはい…」
本当にわかったのか心配になる返事。
俺は、翔太自身を大切にして欲しいのにな。
翔太が風紀委員を辞めたいって言い出した日。
後夜祭の後、翔太の様子がおかしかった。
殴られた跡はなかった。
あの頃の翔太なら、殴られたくらいであんなに震えてなかったと思う。
何かに怯えたような顔で、両腕を震わせて…
俺が心配で触れようとしても拒否された。
その後何とか落ち着かせられたけど、しばらくの間翔太に触れることが許されなかった。
それから、翔太は風紀委員を辞めるって言い出したんだ。
喧嘩に突っ込んでいくことも無くなった。
翔太が怪我をすることも無くなった。
喜ぶべきことなのに、俺は素直に喜べなかった。
翔太に何が起こったのか、俺にはわからなかった。
その上、学校には嫌な噂が広がり始めてたんだ。
狂犬とまで呼ばれてた翔太が風紀委員を辞めたことを“逃げ”って言い始めたやつがいた。
たかが喧嘩で負けた“だけ“で風紀委員を辞めたって嘲笑う連中が増えた。
そんな様子じゃなかった。
あの時の翔太は、絶対にそんなんじゃない…
そして、もうひとつ…
俺と翔太が“特別な関係“だって噂が大きくなってたんだ。
この噂は結構前からあったみたいで、それがちょうど翔太がおかしかった辺りから目立つようになった。
翔太は、噂で自分を縛られるのが嫌いだった。
だから、すごい生活しづらかったんだと思う。
俺らが一緒にいるだけで周りからの視線が痛かった。
「ねえ、あの2人、知ってる?」
「渡辺くんと宮舘くんでしょ?」
「あの2人、いつも一緒にいるよね」
「同じ風紀委員だしね」
「なんか怪しいよな?」
「こっそり授業抜けて、保健室行ってるとか…」
「やば…もしかして、できてるんじゃない?w」
「え?男同士でってこと?やばぁ…」
いろんな声が、聞こえてきた。
そのせいで、翔太は風紀委員を辞めて、俺とも極力誰かがいる場所では近づかないようにした。
今もそうだ。
学校では翔太とは一緒にいないようにしてる。
一緒にいられるのは周りに人のいない登校時間と帰宅時間と家の中だけ。
これのおかげで、あの噂はほとんど消えた。
でも、本当にこれでよかったのかが俺にはわからない。
翔太も楽しそうに佐久間といる。
それでも、ずっと周りの目を気にしてる。
喧嘩に巻き込まれることだって無くなった。
でも、あの頃の翔太はイキイキしてた。
「宮舘先輩、多分ふっかと渡辺先輩は近くのゲームセンターにいます」
「ゲームセンター?」
急に走り出した俺についてきてくれる照が道案内をしてくれる。
「ふっかの行きつけのゲーセンがあるんですけど、小さくその店の音楽が聞こえたんです」
「わかった、ありがとう」
翔太、ふっか、無事でいて…!
(深澤視点)
照……来てくれるかな…
後ろに隠したスマホの画面をチラッと見る。
まだ、通話は続いてる。
「………翔太…」
「チッ……」
俺のことを守るように前に立つ翔太…
ギリギリの状態で男の鉄パイプを受け止めてた。
だめだ…数じゃ負けちゃう…
翔太だってタバコの煙のせいで息苦しそうにしてる…
俺も、ちょっと頭くるくるしてきてる…
酒なんて頭からかぶるもんじゃないよね、嫌って思ってても口の中に入ってくる。
「このガキがっ!!!」
「………っ!!」
鉄パイプを持ってる男とまた別の男が翔太に殴りかかる。
やばいってわかるのに、動けない…!!!
「翔太……!!」
「っっ!!」
翔太の頬に思いっきり拳が入る。
「翔太っっ!!!」
ふらついた翔太に、鉄パイプを振り上げる男。
だめ!!!絶対だめだ!!!
「っバカっ、こっち来んな!!」
「翔太!!」
翔太を庇うように前に出る。
これ以上、翔太のこと傷つけさせない…!
昔から、翔太はなんだかんだ正義感が強かった。
いろんなことに文句言ってるけど、結局は自分で色々やっちゃうんだ。
困ってたら積極的に協力しようとしてくれるし、喧嘩にもバンバン突っ込んでく性格だしね。
でも、その正義はいいものとは言い切れなかった。
俺は高2から学校に行かなくなったけど、佐久間、翔太、涼太の噂は積極的に取り入れるようにしてた。
俺が不登校になってからなんか気まずくって連絡とかも取り合ってなかったからね。
翔太と涼太が風紀委員になったってことを聞いて、ちょっとだけ納得する部分もあった。
薄々翔太の中の正義感には気付いてたから、翔太ならやるかもな、翔太がやるんだったら涼太もやるんだろうなって。
噂で聞く翔太は狂犬って呼ばれてた。
俺は噂の全部を信じるわけではないし、勝手につけられたあだ名とかも好きではないんだけど、話を聞く感じ、確かに狂犬かもなぁとか思った。
最初は細かいことに何でも口を出すからだと思ってたけど、それは違かったみたい。
「………喧嘩?」
翔太がいろんな喧嘩に突っ込んでるって噂をいっぱい聞くようになった。
その噂が本当か気になって、実際には会わなかったけど翔太の顔が見たくなった。
だからこっそり学校に行った。
「うわぁ…まじでじゃん…」
学校に行って翔太の姿を見てみたら、右頬に湿布を貼ってた。
ほんとに喧嘩に突っ込んだんだ。
でも、そんな翔太の気持ちが少しだけわかる気がした。
翔太の隣には、いつも通り涼太がいた。
心配そうな顔で翔太のことを見つめてて、翔太は少し満足そうな顔をしてた。
そうだよな、誰かに心配してもらえることは愛されてる証拠だもんな。
心配してもらえるんだったら、自分から危険な状況に足を踏み入れたくなる。
翔太も、そうなのかなって思った。
でも、本当にそれでいいのかな?
涼太は、翔太が傷つくことを望んでないじゃん。
翔太だって痛いでしょ?
「………っ!!!」
目の前まで鉄パイプが迫ってくる。
俺は、俺は大丈夫。
痛いのなんて慣れっこだから…
守ってくれた翔太を、今度は俺が守るから…!!
「………?」
でも、いつまで経っても痛みは来なかった。
ぎゅって瞑ってた目をゆっくり開ける。
翔太も口を開けたまま固まってる。
「………ひ、かる…?」
目の前には、鉄パイプを抑える照と、翔太を守るように経ってる涼太がいた。
「………」
照は難なく鉄パイプを押し返す。
それに怯んだ男たちは蜘蛛の子を散らすように逃げてった。
な……何だあいつら……!!!
「……ふっか」
「ん、!」
照にほっぺを挟まれる。
「お前…!!これ、酒か…!?」
「うむっ…ちょっとかけられちゃって…わら」
慌てながらカバンからタオルを取り出す照にちょっとだけ笑いがこみ上げてくる。
…やっぱり、心配されるってのはいいな。
「だめだな、全然匂いとか取れねぇ…くっそ、酔ってねぇよな?」
「ちょ、ちょっと…まぁ、酔ってないよ……?」
頭はクラクラしてるけど…
「……早く家帰るぞ。宮舘先輩、お先に失礼します」
「わっ!!」
照に腕を強く引っ張られる。
翔太……涼太がいるから、大丈夫かな…
(渡辺視点)
「………りょ、うた…」
何で、涼太がここにいるんだよ…
「翔太…」
心配そうな目で見つめてくる涼太。
「……怒ってる?」
「もちろん怒ってるよ」
「ふぅん……」
久しぶりに涼太に心配されてる。
若干痛む右腕に左手を当てる。
これくらいなら手当てはいらないだろ。
「ねぇ、翔太」
「……何?」
ちょっとだけ強い力で腕を引かれる。
怒った目……
「翔太、左腕怪我してるでしょ」
「……別に」
「嘘」
涼太が俺のシャツの裾をまくる。
思ったより大きい痣ができてんな……
もしかして、鉄パイプを受け止めた時のやつか?
「また、無茶したんでしょ?」
「してない」
これは無茶じゃない。
守るためにしたこと。
俺は間違ってないんだ。
それに、涼太だって心配してくれてるんじゃん。
「帰るよ、翔太」
「………」
腕を引っ張られる。
涼太、やっぱり怒ってる。
「い、痛い痛い痛いっ!!!!」
「暴れないの」
家に帰ってすぐ、涼太に手当てをされる。
消毒液が腕に染みてめちゃくちゃ痛い…!!!
「翔太、ふっかのことを守ろうとしたのはわかるよ」
「……」
「昔から翔太はそうだったもんね。誰かが傷つきそうになるならそれを止めずにはいられない」
「……」
涼太の淡々とした声だけが部屋に響く。
そうだよ、俺はふっかに傷ついて欲しくなかった。
でも、前は違うんだよ。
誰かを守りたいとかいう正義感なんかじゃない。
俺は、ただ……
「涼太に、心配されたかった……」
ずっと、ずっとずっと…俺は涼太に心配されたかった。
だって、それは愛されてる証拠だから。
怪我をした時、涼太は俺のことだけを見てくれてた。
俺のことが心配で心配でしょうがない目が好きだった。
今もそうだ。
心配そうに見つめる目、俺の怪我を手当する手、消毒液の匂いさえも愛しく感じる。
「俺に、正義感なんてないんだよ。怪我するのが怖くないのは、涼太が心配してくれるから。ただ、それだけなんだよ…」
「……翔太…」
「お前が俺に怪我して欲しくないってのはちゃんとわかってる!実際、俺は怪我をしても涼太が心配してくれるっていう軽い気持ちでとんでもない奴らに突っ込んだ……」
去年の後夜祭、あれだって俺は涼太に心配されたかっただけだったんだ。
全部、全部そうなんだ。
学校の風紀を守るための正義じゃない。
涼太が独占できる、俺のためだけの正義だった……
涼太は何も言わない。
………失望されたかな…
俺は、涼太に心配されたいがために、何回も涼太の言うことを無視してきた。
傷ついて欲しくないって涼太に言われるのも嬉しかったんだよ。
だからこそ、何回も傷ついた。
ほんと、バカみたいだよな。
俺がそんなことしなければ、涼太との噂も広がらなかったかもなのにさ。
もしかしたら、学校でも離れて行動する必要だってなかったのかな…
俺のためにしたことは、涼太の喜ぶことだったのかな…?
「……翔太…」
涼太の声が耳に響く。
何を言われるんだろうな。
もう失望したって、ルームシェアももうやめようとかだったらどうしよう…
でも、俺はそれくらいのことをしたんだから……
「それでも、翔太は誰かを守ってたよ…」
「………え?」
返ってきたのは、冷たい言葉なんかじゃなかった。
「さっきだってそう。翔太は確かにふっかのことを守った。それだけじゃない、翔太が喧嘩を止めることで、周りの人たちは傷つかなかったんだよ」
涼太の優しい手が俺の顔を上げさせる。
「でも、涼太は俺に傷ついて欲しくなかったんだろ…?」
「当たり前だよ。翔太が誰かを守るのは素敵なことだと思う。でも、それ以上に翔太は俺にとって何よりも大切なんだよ…」
「………っ…」
何よりも、俺が大切……
「ごめんね、俺が最初から翔太にそう伝えてればよかったよね…」
「りょう、た……」
涼太の力強い腕が俺を抱きしめてくれる。
「翔太は傷つく必要なんてない。俺はずっと翔太のこと見てる」
さっきまで何も感じなかった左腕の痛みを急に感じ始める。
今までも、ずっと痛かったんだ…
涼太に言われるまで気づかなかった。
ずっと、俺は痛かった。
痛かったけど、涼太に手当てしてもらえるからそれを見なかった。
だから、最初は痛かったのもだんだん消えたんだ。
痛みに意識を向けたら、涼太に心配される以前にそれをやめてしまいそうだったから…
でも、ちゃんと痛かった。
身体はずっと傷ついてた。
いくら涼太に手当てしてもらっても、心配されても消えなかった…
「翔太、ずっと痛かったよね……でも、もうそんなことしなくていいんだよ…」
「………ぅん…」
俺は、傷つかなくても涼太に見てもらえるんだ…
いや、それよりも前に、涼太はずっと俺のことを見てくれてた。
「翔太、何で俺が今年も風紀委員を続けたか気になってたよね?」
「……うん…」
涼太がそんなことを言い出す。
そうだ、俺が辞めたのに涼太は風紀委員を続けてる。
前聞いた時は何となくって言ってたけど……
「翔太のことを、守りたかったからだよ」
「…………え?」
優しい笑顔で答える涼太。
俺を、守りたかった……?
「俺が風紀委員を続けることで、俺は翔太の近くでトラブルが起こらないようにできるかなって思ったんだ」
「俺のため………?」
学校では一緒に行動してない。
一緒にいないようにしようって言い出したのは俺の方からだ。
それなのに、涼太はずっと俺のことを遠くから守ってくれてたのか…?
離れてても、俺がトラブルに巻き込まれないようにするために…
「翔太が佐久間と楽しそうにしてるのを見て、すごく安心したんだ。最近だとふっかとも一緒にいるよね。俺は、翔太の笑顔を守りたかったんだ」
「………っ…」
そうか、そうだったんだ…
「……涼太…!」
涼太の背中に手を回して抱きしめ返す。
お前は、ずっと俺のことを守ってくれてたんだな…
俺の知らないところで、ずっと…
俺が傷つかないように、笑ってられるように……
ようやくわかったよ。
最初から俺は傷つく必要なんてなかった。
そんなことしなくても、涼太は俺のことを見てくれてた。
そして、これからもそれは変わらないんだ。
俺が欲しかったものはずっと目の前にあった。
俺のための正義なんかなくても、ずっとあったんだな…
雫石
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コメント
6件
💛❤️きた!!!😭😭 ずっと対抗し続けた渡辺も、渡辺を守りにいくふっかさんもめっちゃかっこいい✨ 家に帰った後の❤️💙の会話が心に染みます😭✨ 心配=愛 な渡辺がそのためにずっと怪我し続けてきたのも良い。 でも❤️は怪我をして欲しくなくて、学校で関わらなくなってからもずっと見守ってくれてたのがすっごいすきです😭😭😭✨ 打ち明けあった二人の関係がこれからどうなっていくのか楽しみです!!!

iwdtきたぁああああ! 予想がかすって嬉しいです😚😚 次回も待ってます❤❤