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童話事件簿

2 - 第2話

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71

2025年01月27日

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〜愛之助〜画像

最近では連続殺人事件なんてのが流行っているらしい。そして被害者全員、妙な死に方をしている。捜査も難航していて洒落にならない。そんな呟きをSNSで見つけた。友達からも聞いてはいたが……今は帰りの電車。

「じゃあね」

「うん」

先に降りていく何人かの友達を見送って、駅に着いたら俺、千秋愛之助も降りる。何やらおぞましいほどに騒がしい。行ってみたそこには野次馬、警察、テープ。例の殺人事件か。被害者を見てみる。残る赤い血。目が見えていなかったのだろう。謎は深まる。仕方ない。助けを呼んでみよう。ちゃんと音声通話で。

「秀香!」

「愛之助……?」

望月秀香。従兄妹だ。状況を説明すると渋々といった感じで話を聞いてくれた。

「現場を見せてもらえますか?」

ビデオに切り替えて辺りを映す。

「見える?」

「大丈夫です」

「ど、どう?」

「現場は分かりました。もう少し分析してみましょう」

色々と調べてくれているので沈黙が続いた。

「愛之助。もしかしてですが。いるんですよ。かつても同じ目に遭った人が」

「目、抉られるの? 誰が?」

「……シンデレラの姉です」

「……はぁ?」

「こういう話です」

〜秀香〜

画像

主人公が母親を亡くし、父親が再婚して義理の姉と母との生活が始まるところから物語は幕を開けます。早速、義姉たちは娘を台所へ引きずり出してあられもない服を着せました。水汲み、火起こし、料理、洗濯なんでもやらされてたのですね。

「もうメイドじゃん」

挙句ベッドにも寝られないのでかまどの側の灰の中で寝ていて、いつも灰にまみれていたそうです。それでも主人公は亡くなった母親の言葉を胸に何とか頑張っていました。

「実は登場人物たちには名前がありません。『娘(ここでは義姉と呼ぶ)』や『まま娘(ここでは主人公と呼ぶ)』と呼ばれています。タイトルもシンデレラではなく、『灰かぶり』です」

「ちょっと待って、じゃあシンデレラって何?」

「洋書版のタイトルだそうです。そこでは主人公に‘エラ’という名前が付きましてね。灰かぶりは英語で『シンダー(cinder)』洋書版の娘の名前は『エラ(Ella)』。二つ合わせて……」

「シンデレラ……?」

「そう。シンデレラは灰にまみれてでも生きる彼女をバカにして義姉たちやまま母が呼んでいたあだ名なのです」

「蔑称か……」

ある日、主人公は遠出することになった父親から土産に貰った小枝を母親の墓に植ました。そこでおいおい泣きながら小枝は立派な木へと成長します。そこにやってきたのは一羽の白い小鳥。主人公のほしがっているものをくれるようになったのです。

「いやいや、土産が木の枝って」

「いいえ。主人公が自分で欲しいと言ったのです。『帰り道で最初にお父さんの帽子にぶつかった小枝』と。お父さんも彼女に聞いていましたしね……

『灰かぶり、おまえはなにがほしい』と」

「お前も呼んどんのかい!」

そして城で舞踏会が三日間、開催されることになりました。それでも主人公は連れて行ってもらえません。それだけなら少しはマシでしたがね。それだけで済ませませんよ、このまま母。髪をすかせるわ、靴を磨かせるわ、留め金かけさせるわ。他には舞踏会行きたいなら豆を灰の中に入れたから拾えなど。小鳥たちに手伝ってもらって何とかやってのけた主人公にまま母は『なにをしたって、なんにもなりゃしない』と一蹴。皆がいなくなってから主人公はお墓に行って鳥から服と上靴をもらえたので出席成功。まま母たちに気づかれることもなく王子とのダンスを楽します。送っていってあげようという王子の言葉も断って主人公は早くに帰ろうとします。

「行ってたことバレないように?

「そう考えるのが妥当でしょう」

鳩小屋に飛び込んではしばみの木まで走って帰ってきれいな服は墓において鳥に持っていってもらいました。皆が帰ってくる頃にはもう台所の灰の中ですわってたのです。そして二日目には王子に後をつけられたり、よじ登った木を切り倒されたりしながら三日目を迎えます。

「いや、怪我しなくてよかった」

今までどおり帰ろうとした彼女をこの日は王子は大人しく帰しました。階段にネバネバする『やに』を仕掛けてありましたからね。それで主人公は見事に靴を落として行ったわけです。

「靴、王子の執念でむしり取られてたの⁉︎」

そして王子はその靴が合う人と結婚することを決意。色々な人に試しているとついに主人公たちの家にやってきます。最初に試した二人の義姉には靴は合いません。それを見たまま母が小刀を持って言うのです。

「入らない部分は『ちょんぎっておしまい』と(もっと細かく言うと上の義姉は親指を切り落とし、下の義姉はかかとを少しけずった)」

「いやいやいやいやいやいや……」

王子と結婚できれば歩ける必要ないと思ったのでしょう。当然、足もとは血だらけ。鳥のお陰で王子は騙されずに済みます。王子に言われて出てきた主人公は当たり前ですが靴がぴったりあったので見事、王子と結婚できることになりました。

「お、おめでとう……」

そして義姉たちはあろうことか主人公の両隣に付き添って結婚式まで向かっていきます。そこに主人公の肩にいた二羽の鳩が義姉たちの方を向いて……目をえぐるのです。

〜愛之助〜

えっぐいな、シンデレラの原作。黙って聞いているつもりが自分でもビックリするほどツッコんでしまった。出身でもないのに関西訛りが出るところさえあった。確かに関係あると思うと気になってしまう……秀香に見せるために辺りを回っていると奇妙な日記を見つけた。ページが全開だ。遠いのでしっかり読めない。ただ一つ分かった単語がある。『とあるモノ』ってなんだ……? 調べてみる必要がある。

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イラストはフォローしあってるいづみさんとすずきてつろうさんに描いてもらいました!

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