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ワンク
青桃
BL
nmmn
NTR【赤桃】
桃視点
薄暗い部屋の中でぼんやりと瞼を開く
無造作なエアコンの音、カーテンの隙間から漏れた光、繋がれたままの手。
浅い意識の中、肺に注がれたのは何時もと違う香り。
普段より断然濃くて、女好みの甘い香り
その香りを離さないよう、彼の背中に腕を回した
桃)…おはよう
掠れた、酷く醜い声。
愛らしさなど夜に置いてきた
赤)おはよう、体…どう?
優しい第一声が脳を暖める
吐き気がするくらい甘ったるい
だがそれが良い
桃)平気。
桃)久しぶりだけど…優しかったから
赤)…そっか
赤)まだそばに居てもいい?
不安そうに聞かれた一言
彼の頬に手を添えた
桃)少しだけ…ね
そう言って唇を柔く重ねる
お互いの吐息が甘く交わり、手を強く握った。
たまに聞こえるバイブ音が俺を奮い立たせる。
赤)…いいの?
彼の無情な一言が、俺を現実に引き戻す。
桃)ここまでしたくせに言うんだね
赤)…それもそっか
少し切なそうな、なんとも言えない顔をした。
不安を拭うように彼の首筋にある跡を撫でる。
桃)逃がさないから
彼を睨みつけた
赤い瞳が寂しげに揺れる
赤)…逃げる訳ないよ
赤)俺こそ離さないから
首筋に顔を埋められ声が籠る
お互いのピアスが当たり、カランと音がした
貴方がちゃんと俺を見ていたら、悪い子になんてならなかったのにね。
俺には彼氏がいる。
ただ、俺に興味は無い。
桃)まろ、おは…
隣の沈んだ布団を見つめる
俺が起きる頃にはもう彼は居ない
顔を合わせることも減り、連絡も夕食の有無だけ。
最後に顔を見たのは何時だろうか。
愛してると言われたのはいつだろうか。
愛を感じたのはいつだろうか。
考えても答えはどこにもなかった
桃)…頭痛いな、
昨日のヤケ酒が脳に響く
カーテンは開けずブルーライトを浴びる
まだ隣には彼の香りが微かにする。
それが昨日のものなのか、もっと前なのか、何も分からない。
重苦しい体を持ち上げ、リビングに向かった
桃)…あ
目に付いたのは着信音が響くスマホ。
彼のものだ
後で謝ろうと思い、電話に出た
桃)はい
)あ、ないこ…
どこか気まずそうな、そんな声がした
彼氏だった。
桃)…スマホ忘れたの?
青)おん…悪いんやけど
桃)分かった
そう言ってすぐに切った
バツが悪そうな声を聞いていたくなかったのかもしれない
桃)…罪悪感あるならなんか言えよ、
一人きりの涼しい部屋で気持ちを吐き出す
久々に聞いた彼の声は、心做しか枯れていた気がする
珈琲を注いで、嫌な気持ちを流し込んだ
今日は早く家を出ないといけないな。
普段降りる駅より、2つほど先へ。
満員電車に長く乗るとやはり気分が悪い
濃い人の匂いが肺を圧迫する
早く降りたくてたまらなかった。
会いたくないのに
足早に駆け抜け、オフィスに辿り着く
扉の前に彼が待っていた
青)…ないこごめんな、
喉から捻り出したような、そんな声
疲れからなのか、気まずさからなのか、俺には分からなかった
桃)別にいいよ
桃)お仕事頑張ってね
青)…待って、や
取って付けたような関西弁
手首を軽く掴まれた
振り払える位の猶予を残されている力加減に胸が絞まる
桃)…何?
桃)もう時間まずいでしょ?
青)…今日、早く上がるから
青)一緒にご飯食べへん?
意外だった
彼はもう俺に興味が無いと思っていた、なんなら家政婦くらいに。
もしかしたらそれは俺の憶測だったのかもしれない。
少し、気が揺らいだ
桃)…ちゃんと帰って来てね
手を握り返す
少し骨が浮いて、男らしい広い手
彼の前で笑ったのは、いつぶりだろうか
青)もちろん、笑
少し泣きそうな顔をしていた
でも嬉しそうで、俺は久しい感覚に胸が抉られる
桃)じゃあ、またね
青)またな、笑
最後にきゅっと力を込めて握り離した
優しい温もりが手から広がり、やがて全身を包む気さえした
きっとまだ彼は俺を好いてくれている 。
それだけで足取りが軽い気がした。
口元の笑みが隠せないまま、仕事を続けた昼休み
お弁当を開くと、スマホが揺れた
桃)…ん、
開くと予定通知に「同窓会」と書かれていた
彼には伝えないまま許可した同窓会
悪いが今日は辞退させてもらおう
桃)…連絡しなきゃな、笑
予定に穴を開けるのは申し訳ないが、今日は仕方がない
だって彼に会えるのだから
愛を持って
悪い事のはずなのに口元が緩い
当日欠席の文章を打ち込みながら今日の晩御飯を考える
暗くなったスマホに映る俺は、あまりにも可愛らしかった
18時半、買い物をして少し遅くなった
ドアノブに手をかけるが、鍵がかかっている
桃)…
嫌な予感がした
胃酸が引きあげられるような、臓物が絞られるような感覚
少しの期待を胸に、無理やり鍵を差し込んで扉を開ける
そこには真っ暗な世界だけがあった
おかえりも、ただいまもない
ただ悲しみと嗚咽が、涙まじりに流れ落ちた
帰りの電車は満員だった。
バイブモードのスマホに俺は気付かなかったらしい。
青:ごめん、帰り遅なる
一言だけ書かれたメッセージ
信じた俺が馬鹿だった、そう思うのに時間はかからなかった
買ってきた物を潰すように冷蔵庫に押し込んだ
閉める時に少し嫌な音がしたが、知った事じゃない
桃)…はは、は…
苦しく出た声は笑っていた
既読を付けたLINEを放置して、溜まった通知を覗く
桃)…ん、
懐かしい名前と、似合わないメッセージが目に止まった
赤:今日の同窓会休みなんだね
赤:別の日に予定合わせてさ、良かったら今度話さない?
赤:俺、会いたかったんだ
3件の言葉が脳を揺らす
同窓会の場所はただの居酒屋。
今行っても間に合うだろう
彼は今日、遅くなる
桃:今行くよ、俺も会いたかった
返信したのは高校時代の元彼だった
都内の暗い裏道を抜ける
隠れ家的な、小汚い居酒屋があった
煙草や酒の匂いが否応に鼻に注がれる
引き戸をゆっくりと寄せ、足を踏み入れる
ポケットのスマホが揺れることは無かった
入って早々、派手な赤髪が目に止まった
相も変わらず女の子が寄って来ている
桃)こんばんは〜…笑
暖簾をくぐって軽く挨拶をする
みんなだいぶ出来上がってるみたいで顔が紅い
モ)うわないこ遅いぞ〜!笑
モ)相変わらずいい顔してんな〜!!
バシッと肩を叩かれる
反射でいてっと声が出た
桃)お前呂律回ってねーぞー!笑
桃)飲みすぎんなよ、笑
モ)うわレディーキラー!!
酷いあだ名で叫び回る友人
呆れて笑っていると、覚えのある声が耳を突き刺した
赤)ないくん、久しぶり
砂糖菓子みたいに甘くて、とろけちゃいそうな声
低音が脳に来る
桃)…久しぶりだね、りうら
隣に座った彼は、俺より背は低いものの男らしくなっていた
真っ赤な髪に金色のピアス、変わらず上げている前髪が可愛らしい
赤)ないくんは変わらず綺麗だね
桃)口説くの早くないか〜笑
赤)そんなことないでしょ、笑
赤)俺は今日…ないくんに会うつもりだったんだよ?
はい、と渡されたグラスにはハイボールが入っていた
きっと彼の飲みかけだろう
普通に渡してくる所が手馴れているというか、なんというか
桃)貰わないよ
赤)…なーに彼氏?
桃)そうだけど?
赤)え〜…居るんだ
桃)…そっちは?
店員さんから新しくレモンサワーを頂く
彼の好きな酒だ
赤)ないくんの後誰とも
桃)…引きずってんの?笑
赤)じゃなきゃあんな分かりやすく誘わないけどね
一言残してレモンサワーを飲む
変わらない遠回しな喋り方。
嫌いじゃない
桃)…生憎彼氏がいるもんでね〜
赤)なら今日のこと彼氏にはなんて言ったわけ?
やっぱり鋭い
見上げられた顔は端正で、どこか不安げ
愛嬌も変わらないみたいだ
桃)…なんだっていいだろ
桃)りうらに話すことじゃない
ついぶっきらぼうに返した返事
赤はそれさえも愛おしそうにクスッと笑った
赤)あんなLINEしといてね〜笑
赤)男と会いたいなんて…ギリ浮気じゃない?
小悪魔的に笑う姿、なんとも否めない
軟骨唐揚げを口に入れた
ごりごりと彼を喰い潰す
桃)ま、俺に興味ないからね
赤)…ふーん
赤)勿体ないね、彼氏さん
ぴくんと肩が揺らいだ
こんな甘い言葉、久々に聞いた。
桃)ね、りうら
赤)ん〜?なーに
合わせられた視線に動揺が隠せない
鼓動が頭の中を掻き乱す
桃)…この後、二人で
赤)いーよ
赤)元からそのつもりだったし
食い気味に遮られた言葉。
彼は軽く返事をした
テーブルの下に過緊張で冷たくなった手を置くと、暖かいものが重なる
彼はこちらを見て、甘すぎるくらいに微笑む
赤)…手冷たいね
赤)冷え性だったっけ?
桃)…そうじゃないよ
下を向いて呟くような返事をする
彼の手が優しく絡まって、汗がとめどなく溢れる
赤)…じゃあ意識してるの?笑
桃)悪い?
赤)んーん、そゆとこ好きだよ
軽く言ってしまうその口が憎い
どんどん戻れなくなる気がして、頭がクラクラする
酒の酔いなのか、彼への酔いなのか
判断する力さえ削られたみたいだ
赤)あ、ないくんもうお酒空だね
赤)何か頼む?
メニューをさっと広げる彼
少しだけ本能に天秤を傾けてみる
桃)…ハイボールがいい
赤)俺とお揃いがいいの?笑
桃)うん、それがいい
赤)…ずるいね
吐き出された一言
視線を傾けると、彼の頬は少し赤く見える
酒かな、飲みすぎたのかもしれない
桃)りうらのちょーだいよ
赤)…これ?
桃)それ
彼の飲みかけのハイボール
最初断ったグラスには、まだ半分程残っている
赤)いいの?
桃)もういいんだ
半ば奪い取るようにハイボールを喉に流し込む
苦い、慣れない味だ
でもレモンサワーより好きだった
赤)…酔っちゃった?
桃)ん〜…まだ
緩い意識の中彼と会話する
同窓会は終わり、二人で2件目に入った途中だ
彼行きつけの店で、彼のお気に入りの酒を飲んだ
気分は悪くない
赤)そろそろお店閉まるんだって
赤)ねぇ、どうする?
何かを仄めかすような言い方
23時半、終電はまだある
まだ言い訳ができる
桃)…今夜はもう、帰りたくない
口から零れたそれは、紛れもない本音だった
彼は優しく頷いて俺の手を引いた
気持ちの良いベルの音と共に店を後にした
赤)俺の家この辺なんだ
赤)帰りたくないならおいでよ
赤)ホテルよりマシでしょ?笑
夜なのにビルの機械的な電気で明るい東京
彼の妖艶な笑みがよく映える
握られている手に力を込めて
こちらに少し引き寄せた
赤)おお、
赤)どしたの?笑
見上げて笑う彼に、ひとさじの本音をプレゼントしよう
桃)…連れてって
桃)ホテルとか…もう、どこでもいいから
身勝手に押し付けた感情
彼は恍惚としているように見えた
赤)…うん、任せて
赤)朝まで一緒に居よ
美しく歪む口端に、喉がきゅっと絞め上げられる
久しい感覚に俺は狂わされたのだ
そうしておこう
結局通されたのはマンションの角部屋だった
扉を開けるとホワイトムスクの甘い香りが肺を埋める
赤)はい、スリッパ
桃)ありがとう
扉がバタンと閉じて、ようやく引き返せない事に脳が追いつく
だが引き返すつもりもない
リビングのソファに座るよう促され、暖かい珈琲がことんと置かれた
きっと良くないものが入っている
彼の顔から理解出来ていたが、平然と飲み干した
馬鹿な男でいよう
それくらいがきっと丁度いい
赤)ねぇないくん
桃)なに?
赤)覚えてる?俺ら…付き合ってたの
桃)もちろん
赤)まだ好きだったりしない?俺の事
桃)…彼氏居るんだよ?
赤)俺は別れたつもりないけどね
重ねられた手が熱い
俺とりうらは大学で離れた。
そのせいでお互い連絡を取らず、自然消滅の形で終わった
それが覆されようとしている
桃)…ならなんで連絡しなかったの?
桃)今更すぎない?笑
赤)…それは、ごめん
困り眉で俯いた彼
見ていられなくて、顎を持ち上げて
また身勝手に自分の一部を押し付ける
赤)…っん
桃)…は、
お互いの吐息と甘ったるい声だけが耳を犯す
りうらからはお酒の苦い味がした
桃)…っね
赤)なに、笑
彼はまだ余裕ありげな顔で笑う
俺にはそんな余裕なんて無いのに
膝の上に跨って、視線を這わせる
桃)…まだ、別れてないならっ
桃)それでもいいよ
肩に手を置き、震え混じりに声にする
俺はなんてダメな人間なんだ
そう思った…がなんの歯止めにもならなかった
桃)浮気した…ダメな彼女に
桃)りうらは何する?笑
煽る様な、確かめるような、そんな口調で
彼の様子を伺う
赤)…誘うの、上手になったね
俺の髪を優しく撫でる
愛おしそうに目を細めて笑う姿にどきっとする
赤)いいよ、教育してあげる
赤)こっちおいで
開かれた両腕に迷わず倒れ込む
彼の匂いを肺がいっぱいになるまで吸い込んで、吐き出す
考える余裕が無いくらいに彼に染まっていく
赤)…ないくん
桃)…ん、
近付けられた顔を受け止める
舌を絡め合って、息が足りなくなるくらい長く続けて
お互いどんどん必死になって、唾液が垂れても辞めずに
恋情の深まりを感じていった
桃)…っぁ…
赤)ん、
赤)…ねぇ、好きだよ
離された唇から漏れた一言
本当か否かなんて分からないけど、嬉しかった
俺が返答をする間もなくまた唇を重ねられる
聞きたくないという彼なりの暗示だろう
桃)ここじゃ…痛くなっちゃうから
桃)りうらの部屋連れてって、
顔が熱い、きっと火照っている
口端から垂れた唾液を拭きながら彼に強請る
赤)いいよ、
赤)俺に捕まっててね
首に手を回し、赤子のように抱き上げられる
首筋に顔を埋めると甘い匂いがより濃くなる
本能に抗えず小刻みに吸い付く
桃)っん、”
濁った甘い音
ほんの少し赤い跡が残る
それに欲情して薄く幾つも付けた
気が付けば寝室に身体が下ろされていた
桃)…りうらっ
赤)1回俺の好きにさせて
余裕の無さそうな彼の顔
間接照明だけを付けて、俺を寝具に沈ませる
同じように首に吸い付いた彼
跡が残ったら言い訳は出来ない
だが止める気もない
桃)っふ、ぁ…
桃)りうらっ、ん…
自分でも驚くような声が漏れる
痛いくらいに吸い付かれた箇所はきっと、コンシーラーでも足りない
赤)…っごめん
赤)耐えれなくて…付けちゃった
桃)…悪気なんてないくせにね、笑
息が上がってお互い肩が揺れる
火照った顔で言葉をゆっくりと紡ぐ
赤)バレた?笑
赤)…まぁ、先につけたのそっちだしね
桃)なんとも言えない、笑
少し笑って見せて、深くキスをする
その間に間接照明も消され、瞼を開けても視界は真っ暗だった
赤)…ね、しよ?
赤)今夜くらいは良いでしょ?
もう逃げれる訳も無いのに聞いてくる所が憎めない
手をきゅっと握り、彼を感じる
桃)…服脱がして
桃)ひとつになろっか
嫌気がさすほど甘い台詞
彼に惹かれて自分も吐いた
もう元には戻れない
桃)…ただいま
午後1時、彼はきっと居ない
悪い事をしたと思いつつ、昨日の幻影が脳を掠める
視界が暗転した
桃)うわッ!?
青)…おかえりッ、
苦しい程の香りに包まれて心臓が五月蝿く響く
彼だ。
甘いのに、消えそうなくらい薄づきな香水は昨日とまるで正反対だ
桃)…ただいま、遅くなってごめんね
吐き出した 言葉はとてもじゃないが平常心とは程遠かった
だが、半泣きの彼には丁度いいだろう
青)お疲れ様…昨日は遅くなってごめんなっ、
桃)んーん、俺も家に居なくてごめんね
抱き締め返した体は分かりやすく骨が浮いていた
酷なことをしている自覚が身体を蝕んだ
「何をしていたの」
と聞かないのは彼なりの贖罪だろう
桃)ここじゃなんだしリビングいこーよ
返事が聞こえない内に手を引いてリードする
昨日の学びが染み出ていた
桃)今日会社は?
注いだばかりのコーヒーにミルクを入れる
まだ湯気が視界の中で揺れていた
青)休み、有給使ったんよ
桃)…ふーん
青)…ないこに早く会いたかった
後ろから刺されるような言葉だった
ミルクを混ぜる手が、スプーンが止まる
隣を見ると、少し顔が赤い彼がいた
青)…久々に話すから…その、
青)関わり方が掴めんくて、ごめん情けないな…笑
嘲笑の笑みが苦しそうだった
俺はこの人からも離れられないらしい
桃)…じゃあ俺がリードしてあげるよ
桃)何でもするよ
腕を開けば躊躇なく飛び込んできた
服が寄れて昨日の跡が見えただろうに、一向に離れようとしない
そんな彼が好きだったりする
青)…好き
青)ないこ、好きだよ
桃)…俺も好き
首に手を回され、深くキスをする
2日連続なんて何処のドラマだろうか
口を離した時にふっと目が合う
スタートの合図はAVより生々しかった
桃)…
スマホを片手間に、ランダムに流れた曲を聴く
俺の好まないロックだった
公園の暖かな日差しが少し鬱陶しい
フードを深く被り直して人を待つ
)…わっ
桃)ッくした…
後ろから両肩に体重が乗る
突然の事でビクッと体が震える
赤)あはっ、ごめんね〜笑
思ってもいない乾いた笑みで話す彼
あの日から今も週1ペースで会っている
赤)今日はどこ行く?
桃)…家来てよ、
赤)え、なに積極的じゃん
瞼がぴくっと大きく開いた
可愛らしい瞳が俺を食い殺した
桃)悪い?
桃)嫌ならいいけど、帰るし
赤)あーごめんごめん笑
赤)行くから、そんな拗ねないでよ
腕にきゅっと抱きつかれた
俺より低い位置に見える赤髪が揺れる
鼻をかすめる嫌な匂いが、離れられない
彼との同棲は分かりやすく解消された
部屋は引き払って、お互い会社に近い場所に家を取った
別にりうらが居るから寂しくはなかった
そう思うのも洗脳だろうか
赤)…何考えてるの?
桃)え?
赤)ああいや…話しかけても静かだったから…
赤)俺でよければ聞くよ?
桃)…
お前のせいだよ
なんて無責任過ぎるな
桃)なんでもないよ
桃)ねぇ、俺のこと好き?
赤)…好きだけど…
桃)だけど?
赤)他の男の事考えちゃうないくんは好きじゃない
ワイシャツの首元を掴んで無理矢理唇を重ねられる
目をぎゅっと閉じた衝撃で口も結ぶ
それなのに無理やり突っ込んで来るのは年下とは思えない
嗚呼、伝わってしまうものだな
彼からの愛情で自分を埋めようとしている事がようやく酷だと気付いた
赤)…やっぱ甘いね
桃)毎回それ言うけどほんっと分かんない
赤)ないくんも吸ってるでしょ?
赤)あ、俺も吸ってるからか笑
隣でケタケタと笑う
喫煙者は非喫煙者の口内を甘く感じるらしい
事後に吸う彼が妖艶に見えて、俺も吸うようになった
俺は吸い始めたのが最近だから、まだ甘いらしい
赤)甘くなくなったら1人前だね
桃)そんなんで威張るなよ、笑
ドアに鍵を挿して、いつも通り家に入れる
彼の家に行ったのはあの日が最初で最後
罪な男だ、隠したい女が居るだろうに分からせないなんて
♪♪
桃)…わ、ごめん
桃)ちょっと出るね
桃)先入ってて
赤)…はーい
少し嫌そうな声、顔は見えなかった
突然鳴った電話だが相手は何となくわかっていた
青)…ないこ今大丈夫?
桃)うん、平気だけどどした?
青)…今夜会えん?
桃)言い方が悪いな〜笑
青)愛を持っての発言やからセーフね
桃)はいはい分かってますよ〜
桃)…じゃ、またね
青)ん、また
端的に終わった会話
いつもの事だった
スマホをポケットにしまい込んで、彼との時間に脳を溶かそう
玄関の扉を開けてそう思った
赤)ないくんおかえり!
桃)ただいま、笑
桃)…このくだり毎回するよね
赤)え〜なに嬉しくない?
桃)嫌いじゃない
赤)好きっていえばいいのに、笑
変わらない狡さに胸が踊る
夜までの時間は長い、溺れてしまおうじゃないか
桃)…お邪魔します〜笑
青)ん、いらっしゃい
夜20時
仕事終わりの彼を迎えて、家に踏み入る
青)俺風呂入るけどないこは?
桃)んー…
桃)あ、お夕飯でも作ろうか?笑
いたずらっぽく笑って見せた
彼は乗らないと思っていた
青)じゃあエプロン貸すわ、
桃)え、
青)手料理楽しみにしてるな〜笑
そう笑って風呂場に消えてしまった
手に残ったのは彼の髪色に似たブルーのエプロン
料理は得意分野じゃない、知ってての事だ
桃)…面倒なことになったな、
頭を抱えながら夕飯のレシピを探す
この日常に楽しさを覚える前に、ずっと思っている事がある
俺の浮気に気付いて居る筈なのに、詰めないまろの心情だ
普通なら「どうして」「酷い」などと罵詈雑言飛び交う修羅場になるのに
まろはいつまで経っても黙ったままだ
こちらとしては彼が感情的になって詰めてくる様子が見たいのに… 本当に頭を抱える
桃)…まぁ、これも策略か
独りでに呟いた一言
タイミングよく風呂場の扉の開く音がした
青)…何作っとん?笑
桃)簡単な炒飯
青)ふーん…
桃)嫌い?
青)ないこの作る奴なら好き
そう言って首筋に顔を埋められる
分かりやすく残した煙草の香りにも何も言わない
ずるいな
桃)…ねぇ、まろ
青)ん〜?
桃)好きだよ
青)…俺も、
こんな関係値でも許してしまうまろのせいで、俺が悪い子に成り下がってる
そんな事しなくても傍に居るのに