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4件
もしや.....!?
めっちゃ続き気になる!また新しく仲間増える!?
ゆう視点_
昨日
スマホの画面が暗くなる。
【いいよ】
その短い返信を、ゆうは何度も見返す。
震えているのは、怒りのせいじゃない。
数年前の夜。
電話をかけた。
何度も。
画面に表示された名前。
なつ。
出なかった。
既読もつかなかった。
あのとき、世界が静かになった。
助けて、って言えなかった。
言わなくても気づいてくれると思ってた。
一番近かったから。
なのに。
切られた。
選ばれなかった。
「重かったんだろ」
小さく笑う。
あの夜から、ゆうは壊れた。
完全にじゃない。
中途半端に。
だから余計に面倒くさい。
消えなかった。
消えられなかった。
数年ぶりに見た、なつの姿。
笑っていた。
誰かを守る顔で。
居場所を作って。
“ヒーロー”みたいに。
喉の奥が焼ける。
「俺は?」
ぽつりと落ちる声。
守られる側ですらなかった。
ただ、重い存在だった。
スマホを握る。
明日、会う。
今度は逃がさない。
選ばれなかった側が、
選ばせに行く。
翌日。
指定された場所は、駅前の小さな公園。
夕方。
人は少ない。
なつは先に来ていた。
ベンチに座る。
手が冷たい。
「……来るなよ」
小さく呟く。
自分に。
でも足音は止まらない。
砂利を踏む音。
なつは顔を上げる。
そこにいたのは。
ゆう。
痩せた。
でも目だけは変わらない。
真っ直ぐで、刺すような目。
「久しぶり」
軽い声。
なつは立ち上がる。
「生きててよかった」
本音。
ゆうは笑う。
「それ、今さら?」
距離は数メートル。
でも、数年分の沈黙がある。
「なんで戻ってきた」
なつが聞く。
ゆうは肩をすくめる。
「戻ってきてないよ」
一歩、近づく。
「ずっといた」
視線が絡む。
「なつ、お前さ」
声が少し低くなる。
「あの夜、なんで出なかった?」
直球。
逃げ場がない。
なつは息を吸う。
でも言葉が出ない。
ゆうが笑う。
でも目は笑っていない。
「俺、あのとき終わるつもりだった」
空気が凍る。
なつの指が強く握られる。
「でもな」
ゆうの声が、わずかに揺れる。
「怖くなった」
消えるのが。
ひとりで終わるのが。
だから、やめた。
「で、数年後」
ゆうはなつを見上げる。
「お前はヒーローやってる」
居場所を作って。
守る側で。
「笑えるよな」
怒りか。
悲しみか。
わからない声。
なつがやっと言う。
「……悪かった」
謝罪。
でも遅い。
ゆうは首を振る。
「謝ってほしくて来たんじゃない」
さらに一歩。
距離がほぼなくなる。
「選べよ」
低い声。
「今度は俺を選べ」
なつの呼吸が止まる。
遠くで、足音。
公園の入り口。
いるまが、立っている。
約束を破って来た。
守る側の罪は、
今、
選択に変わる。
公園の入り口に立ったまま、いるまは動けなかった。
なつと、ゆう。
距離が近い。
近すぎる。
ゆうが先に気づいた。
「……あれが?」
視線が、まっすぐいるまに向く。
刺さる。
なつが振り返る。
「来るなって言っただろ」
「関係あるって言った」
息が少し荒い。
でも逃げない。
ゆうが、ゆっくりいるまに歩いてくる。
なつが間に入ろうとする。
「大丈夫」
いるまが言う。
自分でも驚くくらい、静かな声だった。
ゆうは、目の前で止まる。
じっと見る。
観察するみたいに。
「へぇ」
小さく笑う。
「似てる」
胸がぎゅっとなる。
数年前の自分。
壊れかけていたゆう。
「名前は?」
「……いるま」
ゆうはうなずく。
「いるま。お前、なつに救われた?」
直球。
逃げ場がない。
いるまは、少しだけ考える。
「救われたかは、わかんない」
正直に言う。
「でも、ここにいるって決めたのは俺」
ゆうの眉が、わずかに動く。
「選ばれたわけじゃない?」
「俺が選んだ」
静かに、はっきり。
その言葉に、なつの呼吸が揺れる。
ゆうは数秒、黙る。
それから低く言う。
「俺は選ばれなかった」
空気が重く落ちる。
いるまは目を逸らさない。
「電話、出なかったんだろ?」
ゆうの声が少し荒くなる。
「あの夜、俺、助けてって言うつもりだった」
喉が詰まる。
「でも出なかった」
怒鳴らない。
静かに言う。
そのほうが、痛い。
いるまはゆっくり言う。
「それで、終わらなかったんだよな」
ゆうの目が揺れる。
「終われなかったんだろ」
消えられなかった。
壊れきれなかった。
だから今、ここにいる。
ゆうが一歩近づく。
「じゃあ聞くけどさ」
低い声。
「今、俺が“助けて”って言ったら」
なつを見る。
そして、いるまを見る。
「お前、どうする?」
選ばれる側。
今度は、いるまの番。
胸が強く打つ。
怖い。
でも。
いるまは、なつのほうを見ない。
ゆうだけを見る。
「助けるとか、救うとか」
少しだけ息を吸う。
「そんな上からじゃなくて」
ゆうの目をまっすぐ見て言う。
「一緒にいるなら、いる」
なつが息をのむ。
ゆうの表情が止まる。
「でも」
いるまは続ける。
「誰かを壊すために来たなら、帰って」
静か。
でも揺れない。
ゆうの拳が、わずかに震える。
怒りか。
迷いか。
わからない。
数秒の沈黙。
ゆうが笑う。
でもその笑いは、少しだけ崩れている。
「……ずるいな」
ぽつり。
「お前のほうが、ちゃんと向き合ってる」
なつは、何も言えない。
ゆうは目を伏せる。
「助けてって言ったら、ほんとに一緒にいるのか?」
いるまは、迷わない。
「いる」
即答。
公園の空気が揺れる。
選ばれなかった側と、
選ぶ側になった少年。
ゆうの目の奥で、何かがひび割れる。
壊しに来たはずなのに。
壊れそうなのは、自分のほうだった。