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翌日の11月2日
店内にはカラフルなカラベラだけでなく、たくさんの色鮮やかで香りが強いマリーゴールドの花が窓、壁、ドアにあちこち飾られていた。
オーナーの母親ミャ・ラ・ニュン、店長の父親ラ・ラ・ゼーヤ、料理人の兄イェ・ウェイ、狩猟兼解体屋の妹ソー・ハインが死者の日の骸骨メイクを施して店をオープンさせていた。従業員のタイ人2人とミャンマー人2人も骸骨メイクをしていた。
メキシコの死者の日の骸骨メイクは『死を恐れるべきものではなく、自然の摂理や生の喜びとして捉える文化が影響しているためである。
例えるなら日本のお盆のようなものではあるが、お店の雰囲気は一般社会の日本とは違ったメキシコ特有の賑やかさで盛り上がっていた。
お客様たちはカラベラを見るたびに自分たちの亡くなった先祖や身内に楽しく会話をするかのようだった。グアダルーペ様がそれらを温かく愛や平等と言ったラテンカトリック精神を与えた不思議な感覚だった。
それから8時間後の17時頃。
お店の営業終了後で、すでに他のタイ人とミャンマー人の従業員たちが退勤していた。
実家の店の中にて
ニュン『ウェイ、ハイン。あなたたちにはまだ伝えていなかったことがあるの。』
ゼーヤ『僕たちバマー族一家がなぜ東京フリーク区に移住したのか、なぜ僕たちがビルマと呼ばれることを嫌うのか、なぜ僕の名前に『ゼーヤ』がついているのかを教えよう。ハインが20歳を過ぎてる大人の年齢だからね。』
ニュン『あなたたちの亡くなったひいお爺ちゃんとひいお婆ちゃんが実はミャンマーのブリティッシュ統治時代、自身の幼少期にお母さんとお父さんと一緒に、当時の日本の東京フリーク区へ逃げていたの。ブリティッシュの植民地時代、当時東アジアにおける西洋列強に対抗できる国、日本に憧れを抱いていたから移住したの。だからこそ私たちはカラベラで死者の日を祝う理由は私たちの一族がアイデンティティを肯定できることに感謝するためでもある』
ウェイ『そんなことがあったんだなんて…知らなかったぜ』
ゼーヤ『今度は僕の番だね。僕の名前に『ゼーヤ』がつけられた理由はブリティッシュに滅ぼされる前、18世紀頃だね。コンバウン朝の創始者アラウンパヤー様の幼名、アウンゼーヤから取ったものでね、僕たちがコンバウン朝の末裔だと教えたのは、僕のご先祖様が偉大なるアラウンパヤー様だからだよ。当時のミャンマー王国を統一した偉大なお方でバマー族の王様だ。 どのカラべラよりも一回り大きい物は、偉大なるアラウンパヤー様を讃えるために作った物だよ。アラウンパヤー様の血を決して途絶えないようにする目的で憧れのこの場所へ移住したのも理由の一つだから』
ウェイ『そうだったの….じゃあ俺とハインは在日何世になるんだよ!!?』
ハイン『知りたいわね…』
ゼーヤ『在日5世になる。そうなると僕とニュンは4世になるからね』
ニュン『あなたたちには世間一般のビルマという言葉を信じちゃいけないのか話そう。ノーミーに住むミャンマー人コミュニティの友人から聞いたの。一般社会の日本の歴史の教科書は全部バマーじゃなくてビルマと表記している。すごい一般と東京フリーク区のカルチャーショックを感じたのを今でも覚えてる。でもここは違うよね。空前絶後エキセントリシティ学園の歴史の教科書だとちゃんと私たちのアイデンティティを肯定して、バマー族とか、ビルマ語ではなくミャンマー語と表記してくれて本当にありがたいと思った。』
ゼーヤ『ここで話を戻そう。なぜビルマを嫌うのか…植民地時代、ブリティッシュ政権がバマー族の言葉が訛ってミャンマー全体をビルマと呼んでいたからだよ。これは僕たちのアイデンティティなんかじゃない、外側からのラベルなんだよ。だからウェイ、ハイン、君たちには子どものうちから『ビルマという言葉を使うな』と教えたんだよ。例えるなら日本がジャパンというラベルでの呼ばれ方をして不快感を抱くのと同じ感覚ってことだよ』
ウェイ『前からずっと気になってたけど、この場所だから肯定されるかもしれねぇけどさ…なぜ俺たちには苗字がねぇんだ?』
ゼーヤ『それはね、歴史的、文化的にも先祖代々、個人の独立を重んじる文化と社会制度が
関係しているからだよ。一般社会の日本と違って特に我々のルーツ、バマー族社会では**『双系制』**と言って家系を父系、母系のどちらか一方だけで継承するのではなく、両方の血を大切にする社会を築いた背景から、ファミリーネームを持たなくなったと言われているんだ。』
ニュン『それからミャンマーの古くから占星術(ミャンマー暦)が根付いているからこともあって生まれた曜日と頭文字を名前として取り入れてる。ゼーヤの場合は偉大な王様から取ったんだけどね。』
ハイン『じゃあ私とド阿呆コーの名前は短いわよね?なんで?』
ウェイ『ド阿呆コーは一言余計だけど….トホホ….』
ゼーヤ『性別に縛られない、ジェンダーレスな名前にしたかったんだよ。ソー・ハインは確かに男性的な響きが強いけど、『凛として逞しく、自分らしく生きてほしい』意味を込めた。イェ・ウェイは『火曜日生まれで、炎のように勇敢でタフに生きてほしい』意味を込めた。だから性別に縛られない意味合いにしたんだよ』
ハインとウェイは納得した様子だった。
ハイン『だからミャンマー人一家、バマー族の一家って呼んでるのね…お店の名前の『ミャンマー人のラテン料理店 〜グアダルーペの聖母に捧ぐジビエ〜』なのも苗字のない我々バマー族一家の文化が反映されていたってことね…』
ここで回想シーンを終わります。
ムラクモ「そうだったんですか…そうなると一般社会の日本の歴史の教科書が滑稽に見えますね…それでは夕食にしますか…エビ入りのモフォンゴを食べますか」
ハイン「…うん、そうね、食べましょう」と少し焦るようだった。
そして2人で夕食のモフォンゴ料理を召し上がるのだった。
ムラクモ「どうかしましたか、ハインさん?」
ハインが「なんかさ、思い出したことがあるの….ウェイ…コーって人は本当にバカ…実家で私によく抱きついたり、キスしたりして、私がしばくんだけど、料理が苦手な私のために家ではいつもいつも料理してくれた…私料理作ったり教えるの苦手だけど、このモフォンゴ美味かったわよ。実家の味そのものだから」
ムラクモ「私は問題ないですよ。空エキ学園高校の全日制時代はTさんと一緒に合同アパートで料理を一緒にし出した記憶が鮮明に覚えていますから。あなたも全日制でしたよね?」
ハイン「そうよ。実家の手伝いもしたかったから空エキ学園全寮制じゃなくて全日制にしたの。
まあバカコーもお母ちゃんとお父ちゃんも全員全日制なんだけどね」
ムラクモ「そう言えば、あなたの2個年下の従弟の潮楽みりみさんは東京フリーク区を出て一般社会の海外でダンサーになりたいって言ってたそうですが…確かミャンマー人と日本人のハーフで、高校時代以降ずっと会っていない気がしますので」
ハイン「そうねぇ〜。向こうで踊りたいって言ってたし、なかなか戻って来れないのよ。しょうがないわよ。そうだ…彼はね、一瞬で輝き、流星のようにトップに返り咲いたい想いからダンサーになったけど…なかなか忙しいグループだから、向こうでバイトして資金貯めて活動してるのよ」
ムラクモ「なかなか大変な職業ですね」
ハイン「ウフフ…そうよね。明日さ、一緒にサルサダンス踊らない?子どもの頃から踊ってたの。どうかしら?」
ムラクモ「いいですね。明日もお互い仕事休みですし、私自身激しく踊ったことがないので教えてくれますか?」
ハイン「いいわよ。楽しみだわ」
このように夫婦円満な生活をするハインとムラクモ夫婦だった。
コメント
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みぅ🤍🥀です。 死者の日の飾りつけから始まる家族の歴史の重み、特に“ビルマ”という外からのラベルを拒むバマー族としてのアイデンティティの話がすごく響きました。教科書の表記一つで肯定される感覚の違い、考えさせられますね。苗字がない理由や名前に込められた意味も丁寧で、一家のルーツへの愛が伝わってきました。最後のハインさんとの穏やかな夕食とサルサの約束、じんわり温かかったです🌙