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A2視点
砂漠地帯を抜け廃墟都市まで帰ってくることができた
今頃2Bと9Sはレジスタンスキャンプにいるか、遊園地廃墟に向かっている頃合いだろう
このまま廃墟都市を抜けてパスカル村へ向かってもいい…というかそうするつもりだったんだが、気が変わった
レジスタンスキャンプに寄ろう
リリィとじっくり話がしたいというのもあるが…2Bの様子からするとリリィあたりに協力を頼み込んでいそうな気がする
A2「そうと決まればさっさと動くか」
私はパスカル村へ向いていた足をくるりと反転させレジスタンスキャンプへと走っていく
廃墟都市は見た目に比べそこまで広くない
だから走ってしまえばものの数分と経たずにレジスタンスキャンプに着くことが出来るだろう
走っている最中視界の端に映り込む敵意のない機械生命体を見かけては通り過ぎていく
この時はまだ機械生命体の大暴走が引き起こされる前だったな…なんて考えているうちにレジスタンスキャンプに着いてしまった
ビルの隙間を通り抜け広間へと出た
太陽の光が差し込みあたりはレジスタンス達の声で賑わっていた
そう、私が姿を現す前までは
静まり返り私を警戒するように睨みつけるの行動を見てもなお私は歩く
この様子を見るにどうやらここの奴らは記憶がないのかもしれない
2Bも言っていたが修復できたのは彼女とポッド達だけらしいと言っていた
パスカルに記憶があったのは機械生命体のサーバーのおかげだろうか
いや…パスカルは機械生命体のサーバーとは隔離されている
ならば、どうして?
私は巡る思考と共に足を進めリリィがいるであろうテントへと歩く
懐かしい後ろ姿が見える
ふと思い出してしまう、嫌なほど夢だと思いたかったあの悪夢を…真珠湾降下作戦
私たちプロトタイプのヨルハは実験部隊だった
身の丈に合わない任務内容に現地のレジスタンスを囮にした無茶苦茶な命令
そのせいで仲間を失った、居場所を失った、家族を失った
何度も夢だと願い、叫び、無力で何一つ守り通せなかった弱い私自身を恨んだ
その記憶は私の奥底にこびりついて今も私を呪い続けている
恐る恐る声をかける
A2「リリィ」
私の声に方を揺らして振り返ってくれる
「…2号……?」
信じられないようなものを見る目で私を見つめる
A2「あぁ、私だ」
私は表情を和らげ、にこやかに微笑みかける
A2「ただいまリリィ」
目の前の彼女が俯き震えた声で私を見上げる
リリィ「おかえり」
リリィ「フリージア」
その瞳には、家族を想う温かな涙があった
A2「それにしても…リリィは記憶があるんだな」
リリィ「あぁ、気がついたら過去に戻ってた…ってかんじかな」
柔らかな表情の裏に潜む闇が垣間見える
リリィ「みんな死んで」
リリィ「独りになって」
リリィ「もう仲間を…家族を失いたくなかった」
リリィ「だから死の間際で、やり直せるのならば…もう一度……」
リリィ「そう願った」
哀愁漂うその姿はどこかで見た記憶があって、私の心を揺さぶる
俯き彼女の苦悩をこの身に刻む
A2「……」
リリィ「そんな暗い顔しないでくれフリージア」
彼女の言葉で私は顔を上げた
ふわりと笑うその姿がこの世界でのたった一つの私の救いだ
私に唯一残された家族
守る、救う、二度と失わないように
A2「今回こそは……一緒に、家族を守ろう」
私が選んだ言葉は彼女に届いただろうか
彼女は母性あふれる瞳で私に頷いた
その後は今後の動向についてリリィと情報共有をした
話の過程で私もレジスタンスキャンプを拠点にして行動することとなった
ここで懸念がある
私がレジスタンスキャンプに滞在すると言うことはヨルハ部隊に情報を漏洩するリスクがあると言うことだ
あの時はバンカーが堕ち、監視もなにもなかったが…今は違う
A2「…滞在させてもらえるのはありがたいんだが…私は今脱走兵だ」
A2「ここでヨルハ部隊にでも探知されればリリィ達の立場が危なくなるぞ」
リリィ「それについてはしっかりと対策を講じてある、心配しなくて大丈夫」
A2「対策…?」
リリィ「あぁ、フリージアが来る少し前に2Bとポッド達と情報共有をしたんだ」
リリィ「その時…ヨルハ部隊員はどうやらブラックボックスから位置情報や生体情報をバンカーに送信されているそうじゃないか」
リリィ「なら、ブラックボックスの情報発信を阻害してしまえばいいと思ってな」
A2「情報発信を阻害?そんなことができるのか…」
リリィ「ジャッカスに任せてある、もうじき完成すると思うんだが……」
その時だったドタドタと効果音がつきそうな程の足音が通路から響いてきた
?「やぁ!待たせたね」
そこにはジャッカスが立っていた
相変わらずの突拍子もない明るさを纏って現れる彼女にはどうにも慣れない
私がそんなことを考えているとジャッカスが私を見て一瞬で冷淡な言葉を放った
ジャッカス「リーダー、こいつは脱走兵じゃないのか?」
リリィ「…そいつは_____」
A2「リリィと家族のフリージアだ」
A2「訳あってここに滞在させてもらうことになった」
私がリリィの声を遮って話すとジャッカスはふぅーん?と一言だけ述べていつもの調子に戻った
ジャッカス「それで…依頼されてたモノはできたけど、正直なところ…成功するかは保証できない」
リリィ「あぁ、それで構わない」
リリィ「元々私が無理難題を押し付けてしまったからな」
ジャッカス「ま、できる限りの技術は惜しまずに利用させてもらったから今までの実験の中では最高傑作なんじゃないかな」
私はジャッカスからチップを受け取る
どうやら情報発信を阻害するモノとはプラグインチップのことのようだ
A型やB型などの戦闘モデルは技術面についてだいぶ疎いのだが、基盤に刻まれた細やかな配線と文字による細工を見てA型の私でも驚いてしまう程の技術力だった
私はプラグインチップを自身に装着する
数秒経ってから視界にerror表示がされる
error code
[41 6e 65 72 72 6f 72 6f [63 63 75 72 72 65 64](tel:63 63 75 72 72 65 64) 69 6e 74 68 65 42 6c 61 63 6b 42 6f 78 [72 65 73 70](tel:72 65 73 70) 6f 6e 73 65 46 61 69 6c 65 64 74 6f 74 72 61 6e 73 6d 69 74 62 69 6f 6d 65 [74 72 69 63](tel:74 72 69 63) 61 6e 64 6c 6f [63 61 74 69](tel:63 61 74 69) 6f 6e 69 6e 66 6f 72 6d 61 74 69 6f 6e [73 79 73 74 65](tel:73 79 73 74 65) 6d [64 61 74 61](tel:64 61 74 61) [41 74 74 65](tel:41 74 74 65) 6d 70 74 74 6f [72 65 - 61 63 63 65 73](tel:72 65 - 61 63 63 65 73) 73 74 68 65 42 75 6e 6b 65 72 69 6d 6d 65 [64 69 61 74 65](tel:64 69 61 74 65) 6c 79]
この表示から察するにどうやら情報発信を阻害できたらしい
リリィ「どうだ?」
A2「情報発信が阻害されてる、エラー文が表示されてるから多分成功だと思う」
ジャッカス「それはよかった!」
ジャッカス「じゃあ私はこれで失礼させてもらうよ」
リリィ「あぁ、ありがとうジャッカス」
そう言って奥のテントへと歩き出すジャッカス
A2「ありがとうリリィ、ジャッカス」
ジャッカスは私たちの方へ振り返ることはなかったが片手を上げ拳を握り親指を立てグッドサインを返してくれた