テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
騙された。
夏樹が両手を胸元でぼいんぼいんと動かすから。
だから俺は期待して水泳部に入ったのに。
男子しかなかったんだからまじで死のうかと思った。
辞めようかと何度も思った。
なのにその度に夏樹が笑顔でフォローしてくれて、
いつの間にか一緒にいる事が多くなった。
面倒臭くてやる気のない俺を、ガンガンに引っ張っていく夏樹。
――うん。
夏樹だけはこれからも良い友達でいたいな。
「――お前、いつまで寝てんだよ」
とうとう見てるだけが我慢できなくなったのか、夏樹が俺の頭をわしゃわしゃと掻き回す。
「うっさいなー。じゃあお前行ってこいよー」
「お前を一人で眠らせておけねーだろ。ほら行くぞ」
くっそ。
俺はお前と違って体力ねーのに。
「…………」
「観念して起きろ」
「一生恨んでやる」
渋々、炎天下のプール目指して歩き始めた。
「遅い! 遅いぞ! お前ら!」
「うわ……。部長だ」
「太一先輩も」
3年は部長と副部長が、見学用の屋根の下で座っていた。
二人とも着替えてはいないけど、
もう来てたのか。
「でも1年生が頑張ってくれてるから急がなくて大丈夫だよ」
すかさずフォローしてくれた副部長を見ると、顔が真っ青だった。
「副部長大丈夫ですか?」
「ああ。太一はロッカールームでちょっと貧血を起こしてな。帰れと言うのに見学するの一点張りで」
「竜……」
恥ずかしそうにする副部長に気づかない部長は、ペラペラと喋る。
なんか、ちょっと副部長……前をはだけてるのが艶かしいというか。
普段、上半身裸だから慣れてるはずなのに見えそうで見えないって良いよな。うん。
「おい、着替えるぞ」
――俺、何を言ってるんだか。
女の子に不自由しすぎて副部長にセクハラしてしまった。
部長に凭れる副部長を横目に、さっさと部室に入った夏樹の後を追った。
副部長ごめんなさい!
急いで着替えようと自分のロッカーを開いたら、
「ぎゃあぁぁぁああぁぁぁ!!!!」
「どうした! 十夜!」
「虫ー!! ゴキ〇リー!! せみ!!!」
ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃぁぁぁぁぁ!!
ロッカーを開けると、ドサドサと落ちてくる虫! 虫!虫!
「夏樹!」
ひょいっと猿のように夏樹に抱きつくと、ピクンと夏樹の身体が強張った。
「落ち着け、十夜っ」
「無理無理無理無理!」
「これ、玩具だから、ほら!」
カエルの玩具を摘まむと、びよよんと伸びた。
うわ。
これ、ゴム制のリアル玩具……?
「どうしたぁぁ!!!」
バンッと部室が開けられる。
力強く開けたのは部長だった。
「ふ」
その部長がわなわなと震えたと思ったら、握り拳で力強く叫ぶ。
「不純異性行為は部室では禁止だぁぁぁ!! ばかもん!!」
「え?」
チラリと夏樹を見る。
ぎゃー!!
俺の悲鳴に、夏樹は俺をロッカーから庇う形で壁に引き寄せられ、そこから俺は抱きついているわけで。
「ちがっ 誤解っ」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!