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「――あれ? 禁止なんだ」
冷たい、ちくりと刺すような声が部長の背中からした。
副部長が中の俺らを見たかと思うと、真っ白な顔色だった副部長は更に真っ青になった。
「太一ーー!!!!」
「む……し」
「お前らはやく拾い集めろー!!」
副部長を抱き締めながら部長が1年生に叫ぶと、部長の後ろからガヤガヤと1年が入ってきて素早く玩具の虫を回収していく。
「誰だ! こんなねちっこい嫌がらせをする奴はぁぁぁぁ」
「竜。……落ち着いて」
「お前は黙っていろ! そこのベンチで休め! お茶だ、飲め!」
部長は副部長を抱き上げてベンチに寝かせると、立ち上がり回りを見渡した。
「俺は悲しい! 悲しいぞ! もう引退一ヶ月もないのに、部内がこんなに荒んでいるなんて!」
引退、一ヶ月前……。
その言葉に副部長も悲しげに顔を歪める。
「お言葉ですが、部長」
夏樹は俺を未だに抱き締めながら、静かに言う。
「十夜のロッカーに玩具を仕込める人は限られますけど」
「何……!?」
「部室は2年から。一年は用具室で着替えてるじゃん。やるなら2年か3年だけです」
「あ……」
そうだよ。昨日電車の中でもぎ取ったのも一年ではないはずのボタン。
1年生がざわざわと話し出す。
俺に何が起きたのかバレてしまった……か。
「今日……、朝の当番は太一だったが、こいつは虫が苦手だから無理だ。同じ担当だった一年は?」
「あ、当番は俺です。俺と太一先輩です」
夏樹が挙手する。
他の2年は幽霊部員や大会前しか練習に来ないような奴、まだ今日は来てないのばかりだし。
3年は部長と副部長以外、フェンス越しに見に来るだけだ。
……怪しいのはやっぱあの時にボタンが無かった3人だけだ。
「本当に一年は関係ないのか」
珍しく、部長が落ち着いた声で言う。
「2年生の部長決めで、よくない騒ぎ方をしているのを、俺が知らないと思っているのか」
低い、感情を圧し殺した声で言うので、一年が静まり返る。
よくない騒ぎ方……?
夏樹と副部長を見ると、苦々しい顔をしている。
まさか知らなかったのは俺だけ?
「今日はもうブラックバスもいるし部活は筋トレだけにしようか」
崩れそうになりながら副部長が起き上がると、消えそうな声で言う。
「1年生も、蒼空くんの実力分かってないよね」
「え? 俺?」
「……十夜、あのさ、ちょっと待ってろ」
バタバタと夏樹が部室から出ていく。
実力? よくない騒ぎ?
神妙な副部長の顔になんだか不安になってくる。
「部長?」
1年生が出ていった部室で、仁王立ちの部長に話しかけた。
「俺は、引退したらお前に部長を譲りたいと思っている」
「竜!」
「夏樹には部長の仕事より自分のタイムを上げるのに専念して欲しくてな」
え。
俺?
「実力ない俺は、夏樹の雑用をしろって事ですか?」
「蒼空くん、それは違うよ。竜は言葉を選ばない馬鹿だから」
「つまり、俺が部長になるのを不満に思ってる1年がいるって事ですよね?」
まじか。
夏樹に誘われて入った素人の俺だもんな。
でもそれ、ちょっと凹むというか。
面倒くせー。
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