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「ん?ここはどこだ……」

ドミニックは目を覚ます。エンジェルに睡眠剤を飲まされて、寝てしまったのだ。辺りを見渡す。

そこは薄暗くて冷たい空気が漂う地下のような場所。ゴツゴツした壁と広い空間が特徴的で、辺りを見渡すと姉のフローリスと妹のリリアンナも紐で縛られ拘束されている。

目を見開き、二人に声をかけた。

「姉さんとリリアンナ!?」

「なんでアンタがこんなところにいるのよ!口も聞きたくないわ。さっさと消えなさい」

「は?ふざけんじゃねえぞ。お前こそ目の前から消えてくれ」

フローリスとドミニックの二人は思考が似ていて犬猿の仲。隣同士なので、喧嘩を始める。それを止めるのは妹のリリアンナ。縛られた状態で怒りを沈めようとした。

「二人とも喧嘩はダメだよ!!」

しかし二人には全く効果がなく、「黙ってろ」と言われてしまった。謝ることしかできない。

仕方ないので、ずっと喧嘩しているのを聞いていた。リリアンナは腹が痛くなってきて、もうここから出たい気分だ。もう争いやめてよ……。

その気持ちが叶ったのか、そこへ黒いスーツと黒い帽子を被った男がやってきた。アズキールだ。

彼がきた瞬間、二人は口喧嘩をやめる。魔力が強すぎて、逆らえないと感じたからだろう。


彼はパチパチと拍手していた。ニッコリ笑みを浮かべる。

「素晴らしいな。こんなにたくさん喧嘩して」

「おい、解放しろよ!」と、助けを乞うがアズキールはそれを否定する。

「解放?するわけないだろ。特にドミニック。てめえは僕のことを何度もいじめていたな?許せねえ!」

ドミニックは幼い頃シプリートのことを何度もいじめていた。虫を食べさせたり、食べ物を床にぶちまけたり。足で蹴り上げたり頭を何度も殴ったり。

しかし彼は反撃しなかった。それが普通だと感じていたし、怒り方も知らなかった。

だがシプリートの憎しみと怒りを吸収していたアズキールは、ドミニックにストレスを感じるようになり憎しみから人間嫌いに到達したのだ。

つまり諸悪の根源。ただでは済まさない。


彼は隣のフローリスの方へ歩みを進める。

「そして、フローリス。てめえはシプリートの体に落書きして他の貴族に見せびらかせたり、罵声を浴びせたりしたな」

「ふん。アイツがいけないのよ。弱くて生意気で、ゴミみたいな弟なんていらないわよ」

そのクズすぎる発言に、アズキールは顔を真っ赤にしてブチギレた。

どうして貴族は自分が一番正しいと思っている奴が多いのだ?わがままな奴らだ。

恐らくドミニックやフローリスは親になんでもしてもらえたので、このようなわがままな性格になったんだ。絶対に許さない!!


拘束されているフローリスに闇魔法を使い、口を押さえつける。これで喋れなくなった。

そして最後に隣に歩いて、リリアンナの方へ歩く。興味なさそうにしていた。

「で、この中でまともなのはリリアンナだ。彼女は姉のフローリスのせいで性格が歪んだ。解放してあげよう」

「ほんと!?」

彼女はパッと笑顔をみせた。彼が頷いていたので本当なのだろう。

その言葉通りリリアンナだけ壁からの拘束が解かれ、近くにいた部下のガレスに「フリーダム城」の地下へ運ぶよう命令する。彼はその言葉でなんとなく理解でき、地下へ運ぶことにした。ただし、手と足は拘束されたまま。

「解きなさいよ!!」

甲高い叫び声をあげても解かれることはなく、フリーダム城の地下へ向かう。

それを見送った後、二人の方へ向き直る。彼は満面な笑みを浮かべた。その笑みで恐怖を感じてしまう。

「さて二人とも僕のコレクションにしてやるよ。喜ぶといい」

「コレクションって……そんなことするな!あの時はごめんなさい。考えてなかったんです。それに一緒に冒険したし、リーダーとしてまとめていました!」

涙を流して丁寧に謝罪するが、全く聞く耳を持たれない。このままでは、自分がモンスターにされてしまう。


青ざめた顔で何度も説得を試みるが、何も心に響かないようだ。しまいには口を闇魔法で塞がれてしまう。

二人は喋ることができず、大層辛い思いがのしかかる。息ができない。苦しい。

アズキールはクスクスと笑いながら、面白おかしく見ていた。

「口だけの謝罪ではダメだ。全く心に響かない。僕のしもべになってこそ、謝罪が完了したと言える。さて、儀式を初める」

壁に拘束されている二人の頭を握りしめ、彼は目を黒くする。聞き取れない意味不明な呪文を唱え、体全身が真っ黒に染まっていく。

その闇が二人を包み込み、彼ら二人は苦しみの声をあげる。

「グギャァァァ!!」

その声は悔しいような悲しいような悲惨な雄叫びだった。

二人は闇の中でモンスターに変身する。

ドミニックは青い髪の生えた巨大な真っ青な鱗のドラゴンへ。フローリスは首が三つの蛇になっているヒュドラに成り替わり、可愛い顔はなくなって目が細くなる。

その様子を見て、アズキールは悪巧みするように笑みを浮かべた。

「ふふふ。さあ、僕の可愛いコレクションたち。忌々しいシプリートを倒しに行こうじゃないか。彼を倒せば愛しのエミリ姫を自分のものにできるんだ。彼女は僕のものだ」

エミリ姫の優しさと愛おしい母性に感銘を受け、アズキールのものにしたかった。


その野太い声に反応して、赤い目をした二体のモンスターは叫び声をあげて合図を送る。

ドミニックとフローリスは自我をなくし、アズキールに命令されるだけの存在になってしまった。

だがまだ自我を完全になくしたわけではない。恐らく魔力が強いからだろう。自我はあるが、体が言うことを聞かない。葛藤している状態である。

ドミニックにとってシプリートは仲間だ。仲間を倒すなんてしたくない。だがその反面、倒したいという気持ちも感じ取ってしまう。

いじめていた時の感情である妬みが頭の中に駆け巡り、気分が悪くなった。


逆にフローリスには自我が残っておらず、自分が誰なのかすっかり忘れている。彼女は蛇の頭を一つ項垂れせて、アズキールの顔を蛇の舌で舐めて忠誠を誓った。そうしなければいけない気がする。

「ハハ……とてもいい子だ。いじめる前もこれくらい忠誠心があればな」

不気味な笑い声をあげて、蛇の頭を撫でる。彼女は目を細めてとても嬉しそうにしていた。その顔は、大層見ていられない。

ドミニックは戸惑いを覚える。一体全体どこで間違ったのか、いまだにわからない。

いじめも本当にただの遊び感覚で、全く反撃しない彼を見ていじめがさらにエスカレート。憎しみが溜まってしまったに違いない。


ドラゴンの目から一粒の涙が溢れ、いじめていたことを今更後悔する。


本当はシプリートのことが兄として好きだった。

だけど、彼が父親にチヤホヤされるのを見て腹が立ってしまったのだ。なぜ魔法も使えて頭も良い優秀な自分を見向きもしなかったんだと。

だから妬みからフローリスと共にシプリートをいじめてしまった。彼女も父親にチヤホヤされないことに苛立っていたので、手を組んでしまう。


結局、自分が行ったことは自分に返ってくることを知る。

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