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ドンと外で何かが爆発するような音が聞こえ、
驚いて目が覚めた。
「なに!?なんの音!?!?」
そう思いながら窓を開けると、
音の正体は花火だった。
その瞬間、
ザァァッという音と共に雨が降ってきた。
が、よく見ると天気雨のようだった。
天気雨のイベントってなんかあったっけなぁ?
そんなことを考えていると、
ピンポーンと音が鳴り
「今日は妖祭りの日だぞ!!!」
とライくんの声が聞こえてくる。
「勝手に入るからな〜!!」
そう聞こえた後、玄関の扉が開いた音がした。
私は慌てて1階に降りて
「なんでライくんが私の家の鍵持ってるの!?」
そう聞くと
「別に持ってる訳じゃないぞ?」
「家が招いたんだ」
家が招く?
じゃあ家自体にも自我があるってこと?
「そういえば妖祭りって何?」
「妖祭りはな────」
そうライくんが話始めようとした時、
「話すより実際に見た方が楽しいんじゃない?」
と言いながらスイくんが2階から降りてくる。
「あれ!?いつの間に私の家入ったの?」
そう聞くと
「窓開いてたよ」
と言う。
そういえばさっき花火見てから
窓閉めるの忘れてた…。
「それもそうだな!スイの言う通り見てからの方がいい!!」
そんなこと言われたら、さらに行きたくなる。
「そういえば傘は?外雨降ってたでしょ?」
「妖祭りの時の天気雨は見た目だけで本当は降ってないんだ」
へー..なんか凄い..。
「陽葵さん、金平糖ってありますか?」
「金平糖?無かったと思う…」
「まじかよ!?」
「じゃあ俺らのあげるぜ!」
そう言ってライくんとスイくんは
私に金平糖が入った小袋を渡した。
「金平糖って何に使うの?」
「妖祭りで使うお金のようなものです」
「へー…」
「そろそろ妖祭りの会場に行こうぜ!!」
「俺、もうお腹ペコペコだし…」
「そうですね!陽葵さん、着いてきてください!!」
そう言いながらライくんとスイくんは
森の奥の方へ進んでいく。
「ねぇ、本当にこっちの道で合ってる?」
「合ってますよ?」
そうは言うもの、
なんだか薄暗くて不気味な感じがするんだけど…
そんなことを考えていると
急に目の前に居たライくんの姿が消えた。
「え!?」
次々に周りにいた人達も消えていく。
「陽葵さん、大丈夫ですよ」
そう言いながらスイくんはどんどん先に
進んでいく。
それ以上先に行ったらライくん達が消えた
場所に着いてしまう。
「待って!それ以上先は──」
そう言ったが言い終える前にスイくんは
消えてしまった。
「嘘でしょ…」
と声を漏らしながら、
私は意を決して先に進んだ。
気づけば隣にスイくんとライくんは居た。
「陽葵、驚いただろ?」
「へ?」
私が状況を呑み込めず、戸惑っていると
「妖祭りは神隠しという方法で参加するんです」
と言う。
じゃあさっきのはそういう演出だったってこと?
「びっくりしたに決まってるよ!!」
そう私が言うと
「先に伝えとけばよかったですね」
と申し訳なさそうにスイくんが謝る。
その時、
ヒヤリと寒気がして後ろを振り返ると、
青い炎を灯した提灯を持ったオバケが居た。
「妖祭りへようこそおいでくださいました」
そう言って礼をする。
「この先、真っ直ぐお進みになりますと屋台が見えてきます」
「どうぞ、行ってらっしゃませ」
なんだか雰囲気と違うオバケだけど、
まぁいっか。
「陽葵さん、行きましょうか」
「まぁ、ライはもう先に進んじゃっていますけど」
そう言いながら苦笑いするスイくんは
遠くにいるライくんを指差した。
さっきのオバケが言った通り、
近づくにつれて屋台の光が見えてきた。
「俺は先行くからなー!!」
そう言ってライくんはいつの間にか
見えなくなってしまった。
「じゃあ僕たちも、どんどん買っちゃいましょうか!」
「うん!!」
最初に見つけた屋台はオバケ菓子だった。
見た感じ、
オバケの形をした綿菓子のようなものだった。
そう思いながらオバケ菓子を見ていると
「お嬢ちゃん、これが気になるのかい?」
「金平糖1つでオバケ菓子1つだよ!」
と教えてくれた。
じゃあ…
そう思い、私は
「1つください!」
と言うと
「あいよー」
と言って私の手から金平糖1つを
貰っていった。
なんだかこうやって見るに、
人間界とそんな変わりは無いんだな…。
とそんな考え事をしていると
「お嬢ちゃん、もしかして転生者かい?」
「分かるんですか!?」
「世間ではちと噂になっとるで!」
噂…、なんの噂だろう…。
もしかして私、
知らず知らずのうちに何かやらかしてたとか?
「まぁまぁ、そんな不安げな顔しないでくだせぇ」
「みんな嬢ちゃんのことが気になってるだけみたいだからさ」
そう言ってオバケ菓子屋の店主は
私にオバケ菓子を1つ渡した。
「そういや嬢ちゃんの名前はなんて言うんだい?」
「陽葵です」
「ひまちゃんか!」
ひまちゃん…?
なんだかすごい子供扱いされてる気分…。
「わしのことは『オバケ菓子のおっちゃん』とでも呼んでくれ」
「分かりました!」
「じゃ、妖祭り楽しんでな〜!!」
そう言い、私はスイくんのところに戻った。
「随分、長かったですね」
「待たせてごめんね!!」
「いえ、大丈夫です!」
なんていい子なんだろう…。
いつの間にか、
スイくんも何か買っているようだった。
「スイくんは何買ったの?」
「猫目ラムネとスターベリーです!」
猫目ラムネか…美味しそうだな..。
そんなことを考えていると
「陽葵さんはここでオバケ菓子食べて待っててください!」
「え、どこか行くの?」
「ちょっとした用事です!」
そう言いながらニコリと笑う。
なんだか怪しい。
オバケ菓子は1口食べると
全身が凍るような寒気が身体中に広がる。
普通の綿菓子は甘くて、少し飽きそうになる。
だけどこれは冷たくて、
アイス感覚で楽しめるから食べやすい。
しかも従来の綿菓子より、
口の中で溶けるのが早い気がする。
そんなことを思いながらパクパクと
綿菓子を頬張っていると
「あれ、スイは?」
と口の周りに色々な食べカスが付いた
ライくんが戻ってきた。
「なんか用事だって」
「ふーん…」
「ライくんは何食べたの?」
「流れ星チップス6本」
「あと…花火ガム」
「陽葵のためにも買ってきた」
そう言って私に花火ガムというものを渡した。
「てか6本も食べたの?!」
「うん」
「まだ食べ足りないんだけどな」
6本も食べといて食べ足りないって…。
しかも流れ星チップスって、
さっきから持ってる人見るけど、
あの大きい星3つが串に刺さってるやつでしょ!?
てことは18個も食べたってこと?
「あれ、ライ帰ってきてたんだ」
「めっちゃ口に食べカス付いてるよ」
そう言いながらスイくんが帰ってきた。
「え、まじか!?」
「うん、あとこれ」
そう言いながら私に先程、
スイくんが飲んでいた猫目ラムネを渡す。
「え?」
そう私が戸惑っていると
「お持ち帰りようにも出来るから、日頃の感謝の気持ちを込めて…」
「私、感謝されることなんて何もしてないよ?」
「いいから貰ってください」
「じゃあ…お言葉に甘えて…」
「そういえばこれって何なの?」
そう言いながら先程、
ライくんに貰った花火ガムを指差す。
「それはな、食べてプクーってして、うーんって考えたらバンバンってなるやつだ!!」
一気に頭の中に、はてなマークが浮かぶ。
「それじゃあ何も伝わんないよ」
そう呆れるようにスイくんが呟いた後、
「陽葵さん、それ1つだけ貰ってもいいですか?」
「いいよ?」
「じゃ、見ててください」
そう言ってスイくんはガムを1つ口に入れて、
少ししたら膨らまし始めた。
ここまでは人間界と何一つ変わんないけど…。
そう思っていると、
膨らましたガムがどんどん空に飛んで行き、
小さい花火が空に咲いた。
「今、どうやってやったの!?」
「膨らましながら、花火とか色々考えるんです」
「そしたら、さっきみたいになるので…」
「へー..面白そう!!」
そう言いながら私はガムを1つ口に入れた後、
膨らましながら大きい花火を想像した。
すると、夜空に大きな大きな花が咲く。
周りからは『見たことない』だとか
『そういう演出あったっけ?』などの
声が上がる。
「陽葵すげぇ!!」
「才能あるな!!」
「何の才能だよ」
と呆れ気味にスイくんがツッコミを入れる。
なんだか漫才を見ているようで面白い。
「はー…今日はなんだかあっという間だったな…」
そう呟きながら帰っていると
「あ、そういえば俺の母ちゃんが陽葵に会いたいって言ってたぞ?」
「え!?」
「ライが陽葵さんの話ばっかしたんでしょ?」
「当たり前だろ?友達なんだから!」
友達…。
なんだかこういう関係も悪くない気がする。
「あ、もうこんな暗いじゃん!!俺帰るわ!!」
そう言ってライくんは嵐のように帰って行った。
「じゃあ僕も帰りますね」
私を家の前まで帰した後、
スイくんはそう言った。
なんだかスイくんってすごい紳士だな…。
今日はすごい楽しい日だった。
妖祭り…、来年も行きたいな。
私はそんなことを考えながら、
冷蔵庫に猫目ラムネを入れた。