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#グク
小鳥遊みや
520
車を運転する零斗さんを眺める。俺はカバンからデジカメを取り出し、零斗さんにカメラを向けた。
パシャっと一枚撮ると、零斗さんは一瞬こっちを見て呟く。
「お前また撮ったのか」
「はい。零斗さんの貴重な運転姿なので」
そう言ってもう一枚撮ると、零斗さんが呟く。
「運転姿くらいこれからいくらでも見れんだろ」
「えっ。それって、これからも色んな所に連れてってくれるって事ですか?」
「当たり前だろ。どこにでも連れてってやるよ」
「うわ。今、キュンとしちゃいました。やっぱり零斗さんはかっこいいです」
「だから…かっこいいは辞めろって…」
頬を赤くしながらそう言う零斗さんに俺はフフッと笑う。
「零斗さん、照れてますね。ほっぺ赤いんで、オーラ見えなくても分かります」
「うっせぇな。見んな」
「嫌です。ほら、証拠写真撮りますよ」
俺が零斗さんにカメラを向けると、零斗さんは左手で頬を隠す。
「撮んなバカ」
「あー、零斗さん。超超安全運転なんだから片手運転なんてご法度ですよ〜」
「あぁ。悪ぃ」
そう言ってハンドルに左手を戻す零斗さんを見て、すかさずシャッターを押す。
「はい。撮れました。照れてる零斗さんの証拠写真」
「お前…帰ったら覚えとけよ」
「え? なんです? もしかして、お仕置でもする気ですか?」
「んなもんしねぇよ。ただお前にくっつきまくるだけだ」
「なるほど。寝起きの零斗さんって事ですね」
「別にそんなくっついてねぇだろ」
不服そうにそう言う零斗さんに俺は反論する。
「いやいや。滅茶苦茶くっついてたじゃないですか。”もうちょっと寝るぞ”とか”大学なんて休んじまえ”とか言って」
「あぁ…あれはまぁ、気分的にそうしたかっただけだよ」
「へぇ〜。そうですか。本当か確かめたいんで今日泊まってってください」
「いいのか? 泊まって」
「はい。全然ウェルカムです」
「じゃあ決定だな」
零斗さんは嬉しそうにそう言った。
ショッピングモールにつき車を止めると、中に入る。
「どこ行きてぇんだ?」
「んー、とりあえず適当に歩いて、気になった店に入るって感じでどうですか?」
「それ、いいな」
「じゃあ行きましょう」
しばらく歩くと、好みの服が並ぶ店が目に入る。
「零斗さん、ここ入りたいです!」
「ん。いいぜ」
零斗さんの返事を聞いて俺は店に入る。
「わぁ〜。俺、こういう服めっちゃ好きなんです」
「確かに、今着てんのもそんな感じだな」
「はい。おっ、こっちもいいな。これも好きだし、こっちの色もいいし…」
(でもこんなにたくさん買えないしな…他にもお店あるし…)
どれにしようか迷っていると、零斗さんが言う。
「俺が全部買ってやろうか?」
「いやいや! そんな、悪いですよ」
「いいから、買ってやるよ」
ドヤ顔でそう言う零斗さんに、俺は言う。
「じゃあ、最終的にこれとこれで迷ってたんで零斗さんこれ買ってくれます?」
「他のは良いのか?」
「はい。さすがに全部は悪いので。こっちは自分で買います」
「そうか? 分かった」
零斗さんは少し残念そうにそう言った。
そしてその後、色んな店を回ってショッピングを楽しんだ。零斗さんが毎回奢ってこようとするから、断るのが少し大変だったけど。
数件回っているうちに気付いたけど、俺の買い物ばっかりで、零斗さんは何も買っていない。
モールを歩きながら、零斗さんに問う。
「零斗さん、何も買ってないですけど、いいお店無かったですか?」
「あー…俺は別にいいわ」
「え? なんでですか?」
「そんな服とか興味ねぇし。家に三着あるから着回せばいいだろ」
当たり前のようにそう言う零斗さんに唖然とする。
「三着…確かにいつも見覚えある服着てるな〜とは思ってましたけど…」
「なんだよ。悪ぃかよ」
「悪くはないんですけど…しょうがないんで俺が選んであげますね」
「あ? いいって…」
「いいからほら、あのお店とか見てみましょう」
俺は零斗さんの腕を掴んで半ば強引に店に連れていく。
「あっ。これ、零斗さん似合いそう」
俺は零斗さんの腕から手を離し、服を取り、零斗さんに合わせてみる。
「おぉ。やっぱり似合う。かっこいい」
「そ、そうか?」
零斗さんは頬を赤らめながら照れのオーラを出す。
「はい。めっちゃ似合います」
「じゃあ買う」
そう言って嬉しそうに服を持つ零斗さんに俺は笑みがこぼれる。
「これも似合いそうですね」
そう言いながら服を取り、もう一度零斗さんに合わせてみる。
「似合いますね。かっこいいです」
「買う」
零斗さんが服を受け取る。
「あっ、これも…」
「買う」
再び服を受け取る。
なんだか怪しい方向にいってる気がする。
「あとは…これ…」
「買う」
やっぱり。零斗さんが買う買うマシーンになってしまった。
俺は零斗さんから服を取り上げる。
「あっ、おい。なんだよ」
「零斗さん。ちゃんと見て選んでください」
「あ? お前が見てんだからいいだろ」
「でも、好みの服とかあるじゃないですか」
「俺は快が似合うって言うならなんでもいいんだよ」
「あー…」
この人、どんだけ俺に甘いんだ。
いや、これは甘いとかじゃないか。なんだ、これ。
なんなんだこの人。
「納得したか。ほら、返せ」
そう言って取り返してこようとする零斗さんの手から服を遠ざける。
「ダメです。納得してません。そんな何着も買ってたらキリないですよ? 零斗さんが似合う服いっぱいあるんですから」
「んなもん全部買やーいいだろ」
「確かに零斗さんには全部買う財力はあるかもしれないですけど、そんなバンバン買ってたらとんでもない量になりますよ」
「いいじゃねぇか。その分出掛けりゃあよ」
ドヤ顔でそう言う零斗さんを見て、俺はピンとくる。
「そうですよね。またショッピングデートもしたいですもんね」
「そうだな」
「ですよね? でも、零斗さんが今たくさん買っちゃったらしばらくショッピングデート出来なくなっちゃいますね」
「あぁ…確かにな」
「あーあ。俺、零斗さんと定期的にショッピングデートしたいな〜」
呟くようにそう言うと、零斗さんは納得した様な顔で言う。
「分かった。じゃあここでは二着だけにする」
「ホントですか? じゃあ俺が特に似合う二枚を選んであげますね」
「おう。ありがとな」
零斗さんが嬉しそうに笑う。
(ふぅ…上手くいった…)
そんなこんなで俺たちはショッピングを続けた。
モールを周り終わり、帰ろうと歩いていると、零斗さんが言う。
「あっ。俺、買い忘れたもん思い出した」
「ホントですか? じゃあ買いに行きましょう」
「あー、いや。結構ここから離れてるし悪ぃから快はここで待ってろ。そこの椅子座っとけ」
そう言う零斗さんの周りには内緒と期待と緊張のオーラ。
この三つの感情が何を表すのかを、俺は知っている。
(サプライズだ…)
「分かりました」
俺は気付かないふりをして零斗さんに微笑む。
「じゃあ、行ってくるわ」
零斗さんはそういった後、足早に歩き出した。
そんな零斗さんを見送ってモールの道に置かれた椅子に座る。
(何買ってきてくれるのかな…めっちゃ迷ったけどやめたあの服とか? 食べ物の可能性もあるな…)
そんな事を考えて、わくわくしながら待った。
零斗さんが何かを買いに行ってからしばらく経ち、俺は辺りを見回す。
(遅いな…道に迷ってないといいけど…)
そう思っていると、少し遠くに零斗さんの姿が見える。
そんな零斗さんは、両手に袋をたくさん持っていた。
(まさかあの人…)
零斗さんは唖然としている俺の前で立ち止まる。
「ほら。お前が欲しいって言ってたやつ、全部買ってきたぜ」
零斗さんはそう言ってドヤ顔をした。
コメント
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読ませていただきました!「買う買うマシーン」と化す零斗さん、めちゃくちゃ可愛かったです(笑)快くんに甘々なのに、照れながらも全部買ってあげようとする不器用な愛情にきゅんとしました。最後の「買い忘れたもの」のサプライズ、零斗さんの「全部買ってきたぜ」のドヤ顔が想像できて、読んでるこっちまでニヤニヤしちゃいます。続きも楽しみにしていますね🌷