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#衝撃のラスト
山根利広
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「うーん」
僕は大きく伸びをした。
やっと大学の課題が終わった。
やり始めたのは昼だったのに、もうすっかり夜になってしまった。
僕は立ち上がって、部屋の電気をつけにいった。
スイッチが廊下にあるのが、少し面倒だ。
カチッとスイッチをオンにすると、部屋全体に光が行き渡った。
ずっと座っていたからか、足が少し痺れている。
机がないので、ローテーブルで作業しているが、いつも学習せずにこうなってしまう。
部屋は、一人暮らし用のワンルームだ。
このリビングの電気さえつけてしまえば、廊下にあるキッチンも玄関もよく見えるようになる。
スマホを見ると、もう時刻は二十時を回っていた。
どうりでお腹も空くわけだ。
しかし、この一人暮らしの狭いアパートには、食べ物など残っていない。
何かを食べるためには、徒歩5分ほどのコンビニへ行くしかない。
お腹は空いたが、面倒だ。僕は玄関とは反対のベッドに倒れ込んだ。
ベッドは天国だ。
先ほどまでの疲れが、一気に体から流れ落ちるようだった。
体勢を変えて、壁を見る形になる。そして、ポケットからスマホを取り出した。
時間の無駄だと思っていても、やめられない。動画アプリを開いて、僕は昨日のことを思い出していた。
あの後すぐに、白紙さんと僕は車へと戻った。また車内は沈黙で満たされていた。
「今日はどうだった?」
そこで足立さんが声をかけてきたのだった。
「怖かったです……。僕もう心霊スポットにはいけないです」
普段なら言うのを躊躇するような言葉が、すらすらと口から出た。
もう二度とあんな怖い思いをしたくはない。
髪の毛の感覚や、息の感じなら気のせいだと思うこともできる。
だが、あのコメント欄は別だ。
あれは他の視聴者も見ているし、何より白紙さんが近くに来てから一瞬であの量のコメントが消えたのは、幽霊じゃなければ何なのだろうか。
「そうか。これからやっていくのは難しそうかな」
足立さんの問いかけに、僕はすぐには答えられなかった。
でもここではっきり言えば、もう二度と恐怖体験をすることはないのだ。
「はい。僕にはホラーは無理だと思います」
「そうか。それなのに、今日はありがとう」
僕は二人の顔をまともに見ることができなかった。
僕にはただ、合わなかっただけだ。
断るのだって、何も悪いことではない。
当然の基本的人権だ。しかし、それでも罪悪感があった。
配信中に感じた白紙さんの必死な思い。
それは人気者になりたいとか、お金持ちになりたいという理由ではないように感じた。
もっと何か、別のものだ。
それが気になってはいたが、僕にはもう関係のない話だ。
自宅に送り届けてもらったお礼を言うまで口を開かなかった。
動画を見ながら考えていたせいか、全くもって内容が頭に入っていなかった。
もう二度と関わることのない人たちなのだ。考えるのはやめよう。
僕はあまり頭に入らなかった動画のコメント欄を開いた。
動画を見ながら、このコメントを読むのが好きだ。
色々なコメントの中に、目を奪われてしまうものがあった。
「ねえ」
これは、デジャヴなのだろうか。
いや、ただその二文字が書かれているだけだ。
誰でも使うような言葉だし、気にする必要はないと自分に言い聞かせた。
ただ昨夜のことを思い出してしまったので、僕は違う動画を再生することにした。
そしてまた、コメント欄を見た。スワイプしていく指が止まる。
「苦しいよ」
まただ。
いいねも何もされていないこのコメントが、僕の心をやすりで撫でてくる。
逆立った心を落ち着かせるためにも、僕はもう動画を見ないことにした。
そうだ、せっかくだからコンビニに行こう。
スマホの画面をロックして、起き上がろうとしたときだ。
一瞬、部屋の電気がちらついた。
何だろう、電球の交換をしないといけないのだろうか。
パッと電気が戻って、明るい部屋が戻ってきた。
ブーブー。
その時、スマホが震えた。
誰かからの連絡だろうか。
そういえば、ヨシトには特に昨日のことを報告していないので、気になっているに違いない。画面を見ると――。
「ひっ」
僕は思わずスマホを落とした。
喉の奥が狭くなって、呼吸が苦しい。体の中心が冷水を浴びせられたようだった。
スマホのホーム画面には、一つの通知が来ていた。
「ねえ」
どのアプリの通知でもない。通知バナーだけが表示されていた。
落ちたスマホがまた震えた。フローリングとスマホがぶつかって、ガタガタとやかましい音を立てている。恐る恐る画面を確認すると、「苦しいよ」「助けて」……。
「うわっ!」
その時、また部屋の電気が消えた。今度はちらつきではない。暗闇が場を支配した。
唯一この部屋の中で、スマホだけが光源になっていた。
僕は震えが収まったスマホに、恐る恐る近付く。
先ほどの通知はまだ残っていた。間違いない。
昨日の幽霊は、僕の元に着いてきている。
僕はスマホをえいやと掴んで、ライトをつけた。
それを頼りに部屋の電気のスイッチの元へ向かう。
心臓が、大きく脈打っていた。
スマホを持つ手にも、汗が滲む。
電気が消えたのは、ただの偶然だ。
これは、幽霊とは関係ない。絶対に。
スイッチの元へたどり着くと、オンの状態のままになっていた。
僕は何度かスイッチのオンオフを切り替えてみる。
それでも部屋の電気はつかない。やはり電球を買い換えないとだめか。
そう肩を落としたときだった。
「うわああ!」
僕は走り出していた。
何も考えずに、部屋から飛び出した。
止まることなく、ひたすらに走る。
人の多いところへ行かないと。
走りながらも、全身に鳥肌が立つのを感じていた。
また、耳元に息を吹きかけられた。
もう耐えられない。
いやだ。
どうして僕がこんな目に遭わなくちゃいけないのだろう。
パニックになった僕の足は、自然とあの場所へと向かっていた。
コメント
1件
うわ、これめっちゃ怖いやつやん……! 部屋の電気が消えた瞬間の絶望感、スマホの「ねえ」「苦しいよ」って通知がどのアプリからでもない不気味さ、もう画面越しにこっちまで鳥肌立ったわ。主人公が「どうして僕が」ってパニックになる気持ち、めちゃくちゃ分かる。最後「自然とあの場所へ」って締めも、もう逃げ場ない感じがしてゾッとした。続きが気になりすぎる!