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音子)そういえばいつ三浦様、帰られたのですか?
〇〇)夜中だよ
瑪瑙)絵を描いてすぐに帰ったのね
〇〇)そうですね
聖生)その描いた絵、気になるね
〇〇)持ってきましょうか?
聖生)お願いします
その一言で私は部屋へと戻り、陸くんが描いてくれた絵を大外様に見せた
瑪瑙)あら、とっても上手いじゃない。暖色の使い方が上手だわ
聖生)本当ですね。寒色が一切ないんじゃないか?
〇〇)陸くんは暖色を使って描く絵が一番得意なんです
音子)△△先輩はどんな絵が得意なんですか?
〇〇)私は油絵が得意なんだよ。独特な色使いってよく言われる
聖生)独特な色使いといえばピカソを思い浮かべるね
〇〇)フィンセント・ファン・ゴッホも色使い独特ですよ
音子)ゴッホはひまわりの絵描いてる人ですよね?
瑪瑙)そうよ
〇〇)あの人は線描っていう描き方をする人で、補色の使い方が上手な画家なんだよ。そしてパブロ・ピカソは精神状態によって絵柄が変わっていく画家だね
聖生)塚原くんはピカソの本名言えるかい?
音子)言えると思います?
聖生)思えないね
音子)その通り、言える訳ないじゃないですか
瑪瑙)私も言えないわ
〇〇)パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・レメディオス・クリスピン・クリスピアーノ・デ・ラ・サンディシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソですよ。ちなみにこんなにも名前が長いのは、名前の後に洗礼名、聖人や縁人の名前を並べたからです
聖生)まさか言えるとは…
〇〇)大学は阿鳥先輩と同じ大学の美術科専攻でしたので
瑪瑙)阿鳥くんと一緒だったのね
音子)たしか△△先輩、阿鳥先輩の事盗撮してましたよね
聖生)君も犯罪者じゃないか
〇〇)阿鳥先輩の横顔が描きたかったんです。呼び止めるのも悪いなと思ってこっそり撮りました
瑪瑙)ちゃんと阿鳥くんに言ったの?
〇〇)謝ったら許してくれました
音子)阿鳥先輩、優しいですもんね
〇〇)そうだよね、どうやったらあんな優しい人になれるんだろう
聖生)親御さんの教育の成果だろうね
〇〇)親御さん、かぁ…お父さん、お母さん…元気かなぁ…
瑪瑙)やっぱり会いたい?
〇〇)会いたいですねぇ…会い、たいなぁ…
少し言葉が詰まった
音子)△△先輩、変わりましたね
聖生)そうかい?
〇〇)陸くんに会ってから色々どっか行った。陸くんが一緒に持って行ってくれたかもしれませんね
瑪瑙)良かったんじゃない?自分で自分を傷つけなくて、心を苦しめないようになるならね
〇〇)そうですね
陸くんと会ってから、本当に色々なものが何処かへ行った
両親への申し訳無さ、辛さ、苦しさ、陸くんへの申し訳無さ本当に全部
それか陸くんと会って気持ちの整理がついたからかなぁ
あとはもう自分が此処へ来た理由を知るだけだ
それだけを考えながら自分の部屋を掃除した
〇〇)これ…手帳?なんだっけ…あ、日記帳だ
パラパラと日記帳を見たけどちょっと見ただけで分かるほどの精神状態
〇〇)本当に不安定だったなぁ
私はふと、最後のページを見た
お父さんから連絡が来た
そして今日来る
ただそれだけだった
〇〇)何だろう、この文。皆に考えて貰おっかな
自分一人じゃ無理だし
そう思い、まずは厨房に行くと…
仕事をさせられた
お客様のお済みの皿を厨房へ持って行き、洗う仕事だ
さて、お客様………
金子このみじゃんかぁ!
めっちゃ綺麗
〇〇)金子様、お済みのお皿をお下げ致しますね
このみ)ありがとね。ねぇ、私の事知ってる?
〇〇)はい、存じ上げております。365シスターQの不動のセンター、金子 このみ様ですよね?
このみ)そうそう!私って有名?
〇〇)有名だと思いますよ。私、絵を描く時は必ず金子様の曲聞きながら描くので
けどこの世界では曲聞けないけど
聞きたいのに…
このみ)本当!?
〇〇)はい、本当です
このみ)ねぇ、私の絵描いてよ!歌ってる姿!
〇〇)金子様の絵ですか?そんな恐れ多い…
このみ)ねぇねぇいいじゃん!私の生歌聞かせるから〜!
〇〇)マジですか?
このみ)マジよ。音子ちゃんにバーで歌ってくれって
〇〇)………。期待に添えるか分かりませんが、描かせていただきます
このみ)ありがと
そうして私は金子様の絵を描くことになったが…
サックスを弾く人がいない
こっそり聞いてしまった阿鳥先輩の過去
実は知っていた
風の噂で留学した事、夢を諦めた事
〇〇)どうしたらいいかな…
遥斗)何が?
〇〇)金子様に歌ってる姿、描いてくれって頼まれまして…流石にお客様の前で掻きむしってる姿、見せるわけにはいかないしなぁと
遥斗)多分描けないよ、サックスいないから
〇〇)そうですか。じゃぁ私がサックスを弾きましょう
遥斗)え、弾けるの?
〇〇)弾けません。なので阿鳥先輩、教えてください
遥斗)そんなすぐに出来るような楽器じゃない!
〇〇)阿鳥先輩、サックスが大好きなんですね
声を荒げた阿鳥先輩に私はそう答えた
遥斗)どうしてそんな返しになるの?
〇〇)だって私、サックスの事馬鹿にしました。それを怒ったじゃないですか。それを大好きだと言わずになんと言うんですか?
遥斗)………。〇〇ちゃんは絵で食べて行けなくてバイトをした事ある?
〇〇)ありますよ。家賃払わないといけないんで
遥斗)バイトしてたら絵を描く時間がなくなる、それで自分の腕が落ちたらって思うと怖いって思った事はない?
〇〇)ないですよ
遥斗)そう…なんだ。俺は怖かったから辞めたんだ、サックス
〇〇)そんなたかが数時間程度練習しなかっただけで腕は落ちるとは思わなかったです。それにおお金の余裕は心の余裕という言葉があります。私は心に余裕を持った方がいい絵が出来ると思います
遥斗)心の余裕かぁ…
〇〇)私は阿鳥先輩も同じと思いますよ。阿鳥先輩、器用ですし
遥斗)そんな事ないよ。凡人の努力と天才の努力はそれ程まで違う…違うんだよ
〇〇)前に言いませんでしたっけ?私の努力は凡人の努力よりも遥かに遠い位置にいました。体が弱く、身長が低く、筋肉が少ない。それでも私は黒帯まで上り詰めた
遥斗)………
〇〇)阿鳥先輩は今でもサックスが弾きたいんじゃないですか?それを無理矢理押し込めている。それに意味があるんでしょうか?
遥斗)意味…?
〇〇)私は無いと思いますよ。やりたい事を我慢して生きるか、やりたい事をして死ぬ。どっちが幸せになれると思いますか?
遥斗)………。最後に1つ聞いてもいい?
〇〇)どうしましたか?
遥斗)もしサックスを弾いてまたプロを目指したいとか思ったらどうしたらいいと思う?
〇〇)まずは趣味から始めればいいと思いますよ。私も嫌いになってきたから仕事から趣味へ変えたんですよ
遥斗)わかった。ありがとう、〇〇ちゃん
〇〇)私は何もした覚えは無いですけど、どういたしまして
その後、阿鳥先輩がサックスを弾くのを知った
後は私が絵を描くだけ
落ち着いて、ストレスフリーで
私は金子様の真正面にキャンバスを置き、座った
演奏が始まり、金子様が歌い始めた時私は自分のスマホで写真を撮った
金子様の歌、支配人のドラム、大外様のピアノ、阿鳥先輩のサックス
全部描きたかったけどまずは金子様単体で
スケッチブックに描くのは全体の絵を
まずは鉛筆でキャンバスに下描き、その後下塗りをし、重ね塗る
驚く程に筆が軽かった
気持ちも驚く程に軽かった
このみ)歌い終わったよ〜。どう、上手だった?
〇〇)上手でしたよ。金子様の歌を聞きながら描いたらとても描くのが楽しかったです
このみ)どう、出来そう?
〇〇)乾かしたりしなければいけないのでまだかかりそうですね
このみ)見ててもいい?
〇〇)全然大丈夫ですよ
このみ)どうして何時間も集中できるの?
〇〇)大好きだからです
前までは過集中し過ぎて喋りながら描くなんてできなかった
けど今は出来る
程よい集中になった
このみ)私も歌うのが大好き
私達はポツリ、ポツリと話をした
酩酊は金子様そのものだったと思った
アイドルかねこのでは無く、人間の金子 このみ
そう分かった
〇〇)できましたよ
このみ)ありがと、すっごい上手!生きてたら依頼したかったなぁ、私の楽曲のカバーイラスト
〇〇)私も描いてみたかったです
このみ)これ、貰ってもいい?冥土の土産としてあの世に持って行きたい
〇〇)いいですよ
そして私は金子様にキャンバスを渡した
そしてそのまま自分の部屋へ戻り、スケッチブックの方に全体図を描いた
1時間ぐらいで描き終わった
そのままベットに直行し、寝た
次の日、バーで掃除をしていたら切子様に声をかけられた
切子)君、ちょっと望遠鏡を覗かないかい?
〇〇)覗いてみたいです
音子ちゃん、大外様は覗いたことがある
音子ちゃんは現世が見えるらしい
ちょうど気になっていたのだ
そして切子様から望遠鏡を貰い、覗いてみると
〇〇)お父さん、お母さん…?
瑪瑙)お父さん、お母さん?
今まで分からなかった顔が見た瞬間思い出した
沢山の管に繋がれ、寝ている私の側にいた両親
泣きながら謝っていた
〇〇の母)ごめんね、〇〇。ごめんね
〇〇の父)過労と栄養失調で倒れるまで追い込んで本当にごめんな
そう言ったお父さんは私の日記帳を持っていた
〇〇)私は…あの日倒れたんだ
そう自覚すると私はどんどん痩せていった
本当の今の私だ
仕事に縛られ、絵に縛られ、両親の期待に縛られていたのは私
切子)面白いものが見られたでしょう?
〇〇)私、帰らないと
立とうとするがふらつく
聖生)どうして此処に来たのだい?それが分かったから帰るのだろう?
〇〇)私は、栄養失調と過労で倒れてまだ生きてる。生きてます。大外様にどんな邪魔をされようが帰ります
瑪瑙)〇〇ちゃん、一緒に行きましょう。まともに立てないでしょう?
〇〇)ありがとうございます、瑪瑙さん。切子さん、望遠鏡を貸してくれてありがとうございます
切子)いいですよ
そして私は瑪瑙さんの手を取った
電話が来た日、両親が私の家に来た
心配した、一緒に帰ろう、何度も言われた
何度も言われているうちに私は倒れたんだ
瑪瑙)どこに行きたい?
〇〇)私の部屋に
瑪瑙さんは私の部屋へと一緒に言ってくれた
そして私は1枚のキャンバス、1冊のスケッチブックの中の1枚の絵を持つ
瑪瑙)皆に挨拶しましょうか
〇〇)はい
おぼつかない足で必死に歩いた
音子)△△先輩、その姿…
〇〇)私、栄養失調と過労で倒れたんです。この姿が今の姿
ルリ)それで、どっち?
〇〇)私は生きてるから現世に帰ります
遥斗)良かったね
支配人)んじゃお給料準備するね
〇〇)いりません。私は今すぐにでも帰りたいです。準備する時間が勿体無いです。あとこれ
私は1枚の絵を渡した
支配人)これ、前のコンサートの絵?
〇〇)額縁に入れて飾ってください。私に描けと言ったのは支配人です
支配人)ありがとう、〇〇ちゃん
〇〇)阿鳥先輩、これを受け取ってください
私は阿鳥先輩に1枚のキャンバスを渡した
遥斗)これ、最高傑作じゃないの!?いいの?
〇〇)貰ってください。阿鳥先輩に貰ってほしいんです。私の落書きでも褒めてくれた阿鳥先輩に貰ってほしいんです
遥斗)分かったよ
〇〇)皆さんが生きてる事を願います。また現世で会いたいと思います、さようなら
そう言って私は出口へと瑪瑙さんの支えてもらいながら行った
出口への扉を開こうとした時
聖生)君が記憶が無いことを願うよ
〇〇)別に覚えていても通報する気はありません。それが大外 聖生という男が歩いて行く人生。私が邪魔する物ではありませんから
遥斗)〇〇ちゃん、この絵大事にするから!だから〇〇ちゃんは自分の体を大事にして
〇〇)今度は来ないようにしますよ。私、此処にこれでよかった
そう言い残して私は現世へと帰った
ピ、ピ、ピ、と機械音が規則正しく鳴る
目が覚めると私は見慣れない白い天井を見ていた
何故か涙が流れた
長くて幸せな夢を見ていた気がする
〇〇の母)〇〇…?
掠れた声でお母さんは私の名前を呼んだ
〇〇の父)起きたのか?
と言い、お父さんは私の手を強く握った
〇〇)ご、めんなさ、い
言葉は弱々しく、詰まり、掠れていた
二人は追い詰めてごめんなさいと謝った
私の方こそごめんなさい
心配かけて、困らせた
私は両親の事が大好き
両親も私の事が大好き
そのはずなのにすれ違ってしまった
お互い思っている事を話さなかったから
私が失望した顔だと思っていた両親の顔は追い詰めてしまったと思っていた顔だったらしい
失望したとは思った事がないらしい
初めて佳作をとった時も、なんと言っていいか分からなかっただけで、本当はとても嬉しかったらしい
再び私は両親と暮らすことになった
3食の栄養バランスが良いご飯
ふかふかのベット
適度な運動
傷つく事のない体
体力はまだまだ少ないが、少しずつ健康体になっていっている
そんな私は今日、依頼の為にあるホテルに足を運んだ
有名な高級ホテル
その日常を描いてほしいとのこと
その絵はホテルに飾るらしい
初めての大仕事で少し緊張してしまう
キャンバスに描いてほしいとの事なので、大荷物でホテルに向かった
かなり疲れてしまった
???)今回は依頼をお受けして頂きありがとうございます、△△様
〇〇)こちらこそ依頼して頂きありがとうございます
あ、この人…
???と〇〇が同時に貴方は!と言葉を発した
???)お先にどうぞ
〇〇)同じ大学でしたよね?
???)やっぱりそうですよね
〇〇)まさかこんな偶然があるなんて…
???)本当にそうですね
〇〇)改めてよろしくお願いします、えっと…
???)私、阿鳥と申します。こちらこそよろしくお願いします
何故か涙が出そうになった
ずっと会いたかったような気がする
盗撮して、それを元にして絵を描き、その絵が初めての賞を取ることができあ事言わないとなぁ
何日かに分けての仕事だからいつかは言えるか
最終日に連絡先を交換出来たからちゃんと謝罪できた
次回、現世