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ヤッホ!
行ってらっしゃい!
放課後。
体育館には、ボールの弾む音と、靴が床を擦る音が響いていた。
「よし、今日はここまで!」
顧問の声が飛ぶ。
「はーい!」
バスケ部の練習が終わり、あっきぃたちは汗を拭きながらコートを後にする。
「ちぐさ、見学どうだった?」
あっきぃがタオルを首にかけたまま聞く。
「……思ったより、楽しい」
ぷりっつが笑う。
「それもう入る流れやん」
「まだ決めてない」
まぜたがボールを抱えたまま言う。
「でも、目で追ってた」
「え?」
「動き」
ちぐさは少し照れたように視線を逸らした。
◇
コートの端。
「水、飲む?」
けちゃがペットボトルを差し出す。
「ありがとう」
その瞬間。
——つるっ。
誰かが足を滑らせた。
「うわっ!?」
あっきぃだった。
バランスを崩し、そのまま後ろへ倒れそうになる。
「あっきぃ!」
誰かが叫ぶ。
その刹那。
ちぐさの視界が、ふっと歪んだ。
(……だめ)
頭で考えるより先に、体が動く。
床に落ちていたペットボトル。
中の水が、ほんの一瞬だけ揺れた。
——ぱしっ。
あっきぃの背中が、何か柔らかいものに支えられる。
「……え?」
あっきぃは、尻もちをつく形で止まっていた。
「今の、誰か支えた?」
ぷりっつがきょろきょろする。
「クッションみたいだったで?」
まぜたは床を見る。
「……何もない」
けちゃが首をかしげる。
「不思議だね」
あっきぃは笑って立ち上がった。
「ラッキーだったってことで!」
「だな」
ぷりっつも笑う。
誰も、気づいていない。
ちぐさだけが、手のひらを見つめていた。
(今の……)
指先が、少しだけ冷たい。
◇
体育館の外。
「チグサ」
らおが声をかける。
「今の、見てた?」
らおは静かにうなずいた。
「感じた」
「……やっぱり」
ちぐさは小さく息を吐く。
「止めようと思っただけなのに」
らおは、責めるような目をしない。
「制御できていた」
「偶然だよ」
「それでも」
らおは少しだけ、表情を和らげた。
「前より、ずっといい」
ちぐさは驚いて顔を上げる。
「褒めてる?」
「事実を言っている」
「……ありがとう」
◇
帰り道。
「今日の練習、なんか不思議な日やったなー」
ぷりっつが言う。
「転ばなかったの、奇跡だよね!」
あっきぃが笑う。
まぜたは考え込む。
「……奇跡、か」
けちゃが元気よく言う。
「えへ、よいしょ! みんな無事でよかった!」
あっとが腕を組む。
「偶然にしては、出来すぎだ」
「そう?」
あっきぃは気にしない。
ちぐさは、その会話を少し後ろから聞いていた。
(“奇跡”で、いい)
今は、それでいい。
夕焼けが、校舎を赤く染める。
水面に映る光のように。
誰にも見えないところで、確かに力は動いていた。
そして。
それを見逃さない存在が、少しずつ増えていることを——
ちぐさは、まだ知らない。
——続く。
オカ( ゚д゚)エリ
(@^^)/~~~
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