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「涼ちゃんこのキーボードあげるよ……。」
「え……?」
デビューしてから2、3年後のこと、
最初に使ってたキーボードは若井のものだ。
「もうすぐ誕生日でしょ。」
少し無愛想な言い方だけど。
照れてるのはわかる。耳が赤い。
まだ仲良くはない。
「でも……若井の大切なものでしょ?」
「……。涼ちゃんがこのキーボードを弾くと周りが輝いて見えるんだ。僕が弾くよりもね。」
「僕が新しいの欲しいっていってたから?」
「いらないって言っても無理やりあげるから。」
「……ありがたく貰うよ。笑」
このキーボードは若井から譲り受けたもの。
大切な大切なキーボード。
どんなに高いキーボードでも、このキーボードだけしかだせない音のやわらかさが鳴る。
「涼ちゃんまだそれ使ってるの?」
同居を初めて、若井と距離が縮まって来た頃。
若井がキーボードを指さす。
「若井から貰った大事なキーボードだからね。」
「……//」
もう塗装が剥がれていて、鍵盤部分が黄ばんでしまっているけど、大切にしてきたキーボード。
「涼ちゃん……。実はさ、……ちょっとまってて」
「んぐっ。何それっ。でかい箱……笑」
「涼ちゃんへの誕生日プレゼント。」
「ちょっと誕生日過ぎたんだけど笑」
「届くの遅れちゃってね。」
「め、つぶってて。」
「……。」
目の前にあったのは赤いキーボード
「……?キーボード?」
「あの時は近づきたくてあげたんだ。」
「え?」
「涼ちゃんと仲良くなりたくて……//」
「涼ちゃん付き合ってください。」
「ん?……付き合う?」
「だめ……かな、」
「ううん。ダメじゃないよ。」
「不束者ですが、よろしくお願いします。」
「……!嬉しい……よ。」
「ちょっ泣かないでよ若井。」
「それと、これ受け取ってくれる?」
僕は赤いキーボードを手にした。
「ありがとう。大切に使うね。」
「それと、もう一個のキーボード。」
「それがどうした?」
「まだ使うの?」
「うん……笑……大切だから。」
「嬉しいな、こんなに使われるとは思わなかったな。でも、次は赤いキーボード使って欲しいな。」
「なんで?」
「君への愛の表しだから。」
「……じゃあ僕からも。」
僕は机から指輪を取り出す。
「かっこいいでしょ。」
「若井に似合うと思って。」
「……嬉しいっ。」
「ずーっとつける!」
「んふっ。」
「それと……滉斗って呼んで欲しい。」
「……。滉斗……。」
「顔真っ赤……笑」
あるものが僕の目に入った。
今日から僕の相棒。
赤いキーボード。
「抱きしめていい?」
「ん?いいよ……笑」
付き合うってこんなに幸せなんだ。