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もちぷよ
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きゅー
2,024
パスタの皿が片付けられ、タイミングよく運ばれてきたのはセットのデザートだった。
四角いお皿に盛られた冷たいティラミスを前にしても、僕の目元はまだ熱く、喉の奥にはうまく言葉にならない感情が小さく震えて残っている。
そんな僕の様子を察してか、正面の吉田さんが、わざとらしく盛大にため息を吐き出した。
「おいおい山中、そんな如何にも泣きましたみたいな顔してフロア戻るんじゃねぇよ?俺がいびり倒したみたいに見えるだろ。ほら、とっととそれ食って涙引っ込めろ」
「じんちゃん最低ー! じゅうちゃん泣かしたー! 帰りにコンビニでアイスおごりなぁ~!」
「は?太智、お前まだ食うつもりかよ。てか便乗すんな。おごらねぇよ?」
「え~じんちゃんのケチ~」
「いいからさっさと食えよ!昼休み終わるぞ?」
「え~僕はもう食べ終わってるわ~!じんちゃんこそまだパスタ食べてるやん!はよ食べ?食べさせたろか?」
「いらねぇよ!」
だいちゃんに煽られた吉田さんは、ムキになったように残りのカルボナーラをフォークで一気に口へと押し込んだ。
「ふふっじんちゃんお口いっぱいにしてかわえぇ~」
「っ!!ん~んっ!ん~」
「何言っとるんかわからんって~ふははっ」
二人の掛け合いとだいちゃんの無邪気な笑い声につられて、気付いたら僕も笑っていた。
隣にいるしゅんも、そんな二人のやり取りを楽しそうに見つめたあと、僕の顔を覗き込んで優しく目を細めて笑った。
会計を終えて、オフィスのビルへと並んで歩く帰り道。
僕はぼんやりと考えていた。
本当は最初からなんとなくそんな気がしてた。
この二人なら男同士の恋も僕の過去も、偏見や憐れみなんかじゃなく、真っ直ぐに受け止めてくれるんじゃないかって…。
だけどもう傷つきたくなくて、また裏切られるのが怖くて、僕は勝手に一線を引いて信じていないフリをして自分を守っていただけだったんだと思う。
気が付けば前を歩く二人の背中が、僕の目には本物の友人のように温かく映っていた。
隣を歩くしゅんの肩のぬくもりをすぐそばに感じながら、僕は視界がじんわりと熱くなるのを幸せな気持ちでただじっと噛み締めていた。
そして、その日の仕事終わり。
オフィスのエントランスを出ると、僕としゅんはいつものように少しだけ距離を開けて夜の道を歩いた。
だけど街灯の薄暗い影に入った瞬間、しゅんの手が僕の手をきゅっと恋人繋ぎで握り締めてきた。
二人きりになった瞬間のそのぬくもりに、昼間からずっと隠していた感情が、喉の奥から一気に溢れ出しそうになる。
「……しゅん、」
「じゅう、良かったな。ほんま……」
しゅんは歩きながら、繋いだ手を少しだけ揺らして、どこまでも優しい声音で僕の顔を覗き込んだ。
「じゅうはきっとさ、最初からずっとたくさんの愛に守られとったんやね。 はやちゃんも、吉田さんも、だいちゃんも……みんなじゅうのことが大切で、幸せになってほしかったんや。これっぽっちも孤独なんかやなかったんやよ」
「うん……っ。……俺、ひとりじゃ、なかったんだね……っ」
ずっと暗闇のなかで独りぼっちで苦しんでいると思い込んでいた。
周りの優しさに気づけなかった自分の未熟さと、それを何倍も上回るような、ただただ嬉しくて、あったかい安心感が胸の奥から一気に溢れ出して、僕の視界が涙でボロボロにぼやけていく。
涙が溢れ、言葉がつまる僕を見て、しゅんは足を止め、繋いだままの手にもう一度きつく力を込めると、真っ直ぐに僕の目を見つめて微笑んだ。
「そうやよ。じゅうはもうひとりで怯えなくてええんや。これからは、吉田さんやだいちゃん、はやちゃんにも……もっとたくさん頼って、いっぱい甘えてもええんやよ?」
しゅんはどこまでも愛おしそうに目を細めてそう言うと、僕の顔を覗き込んで悪戯っぽくニヤリと笑った。
「……でも一番甘えるんは俺が良いなぁ。だって俺がじゅうの恋人やからな! ……俺が絶対、じゅうを幸せにするから。だからさ、俺の隣でいっぱいいっぱい笑ってな?」
その飾らない言葉のぬくもりと、繋いだ手から伝わってくる心地よい熱量に支えられながら、僕は喉の奥の強張りをすっと解いて、小さく頷いた。
to be continued…
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次回、最終回となります。 まずはここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。 気付けばこんなに長いお話になってしまい、それでもここまで読んでいただけたこと、とても嬉しく思います🥲 明日の最終回、彼らを最後まで見届けていただけると幸いです。 よろしくお願いします!