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かなえと日常組の『秘密』配信
登場人物:
* かなえ: 湖のほとりの花のように儚げで臆病な5歳の少年。
* ぺいんと: 日常組のリーダー的存在。明るく行動的。
* クロノア: 穏やかで冷静。かなえの気持ちを汲むのが得意。
* しにがみ: 少しとぼけた一面もあるが、かなえに優しい。
* トラゾー: 面倒見が良く、料理が得意。かなえを温かく見守る。
真冬の夜の出会い
真冬の凍える夜。公園の片隅にある廃れたブランコに、風がヒューっと吹き荒れる。冷え切ったコンクリートの地面に、小さな体がうずくまっていた。頬を刺すような冷たい空気が、かなえの薄い頬を容赦なく叩く。
ぺいんと:「うわっ、寒っ!今日の肝試し、ガチで凍え死ぬぞこれ!」
しにがみ:「いやいや、それが醍醐味でしょ、ぺんちゃん!」
クロノア:「でも、本当に誰もいないね。まあ、こんな時間にいるわけないか…」
トラゾー:「念のため、もうちょっと奥まで見ておくか。もしかしたら隠し通路とか、あったりしてな!」
トラゾーが懐中電灯で遊具の影を照らすと、そこに小さな塊がある。
トラゾー:「ん?なんだこれ…」
ぺいんと:「え、なんかいる?心霊現象!?やべぇ、動画映えするぞ!」
クロノア:「待って、ぺいんと。…あれ、人じゃない?」
クロノアが近づき、震える小さな体を確認する。
クロノア:「…子どもだ。女の子…?いや、男の子かな。酷く震えてる…」
しにがみ:「うそ!?こんな真冬に、公園で…?」
ぺいんと:「おい、大丈夫か!?なんでこんなところにいるんだよ!」
ぺいんとが手を伸ばすが、少年はびくっと体を縮め、顔を埋める。その子はかなえだった。
トラゾー:「おい、ぺいんと、びっくりさせんな。…かなえ、おいで。大丈夫だからな」
トラゾーがゆっくりとかなえを抱き上げる。今まで感じたことのない、じんわりと広がる温かさがかなえの体を包んだ。トラゾーの服から微かに香る、安心するような匂い。かなえは怯えながらも、その温かい腕の中に顔を埋めた。
クロノア:「とにかく、このままじゃ危ない。うちへ連れて帰ろう。服も薄いし…」
ぺいんと:「動画は中断!緊急事態発生だ!視聴者の皆さん、本当にすみません!また改めて!」
カメラに向かって慌てて告げた。
日常組の家にて:心の距離が縮まる日々
日常組の共同生活の家。温かいリビングのソファで、かなえはブランケットにくるまっている。
トラゾー:「温かいスープだよ。ゆっくりでいいからね」
かなえは小さなスプーンを握るが、嗅ぎ慣れない温かい匂いに警戒し、なかなか口にしない。
しにがみ:「…ねえ、これ、やる?僕が作ったんだよ。可愛いだろ?」
しにがみが自分の作ったマイクラのキャラクターのぬいぐるみを見せる。かなえはぬいぐるみをじっと見つめる。柔らかそうな布の質感、しにがみの優しい声の響きに、ほんの少しだけ緊張が解けた気がした。そっと、小さな手を伸ばす。人見知りだが、愛情を注がれると少しずつ心を開いていく兆候を見せた。
ぺいんと:「お、ちょっと興味持ったか?しにがみの力作だぞ!」
数日後。かなえはリビングの隅で、日常組がゲーム実況をしているのを静かに見ている。
ぺいんと:「うおおお!今の、神回避じゃね!?やっぱ俺、天才だわ!」
しにがみ:「ぺんちゃん、調子に乗らないのー。僕はもうちょっとでボス倒せそう!」
クロノア:「落ち着いて、しにがみ。焦ると見落とすよ」
トラゾー:「かなえ、飽きちゃったか?もっと面白いゲームにしようか?」
かなえは首を横に振る。耳に届く彼らの楽しそうな笑い声は、凍えていたかなえの心を少しずつ溶かしていく、温かい音楽のようだった。
秘密の発覚:ライブ配信中の夜泣き
ある夜。リビングのドアの隙間から、かなえは明かりが漏れる日常組の部屋をじっと見つめていた。楽しそうに話す彼らの声が聞こえる。彼らは今、たくさんの人たちと繋がっている。自分だけが知るこの「秘密」が、彼らの明るい「日常」を壊してしまうかもしれない。小さな胸に、不安と罪悪感が募る。
メンバー全員がリビングでライブ配信中。視聴者とのコメントのやり取りで盛り上がっている。
ぺいんと:「さあ、次の質問!『最近一番面白かったこと』!んー、やっぱこの前しにがみが作ったトラップに俺が引っかかったことかな!」
しにがみ:「あれは神作だったでしょ!ぺんちゃんがまんまとハマるんだもん!」
クロノア:「僕もあれは面白かったな。トラゾーさんも呆れてたよね」
トラゾー:「まあな。でも、そういう日常が一番楽しいよ」
その時、マイクの向こうから、かすかに「うぅ…」というすすり泣く声が聞こえる。
コメント欄:「ん?今の音なに?」
コメント欄:「誰かいる?猫?」
コメント欄:「子供の声?幻聴かな?」
メンバーは顔を見合わせる。ぺいんとは、ライブ配信のコメントが爆発的に増えていく画面に目を走らせ、顔から血の気が引いていくのが分かった。
ぺいんと:「あ、あれ?ちょっと、マイクの調子がおかしいかな?」
クロノア:「…かなえ?」
かなえの部屋から、さらに「ひっく、ひっく…」という、明らかな子どもの夜泣きの声が聞こえ始める。
コメント欄:「やっぱり子供だ!」
コメント欄:「日常組に隠し子!?」
コメント欄:「なにこれ、どういうこと!?」
ぺいんと:「…ごめん、みんな!ちょっとトラブル発生!配信、一時中断する!」
ぺいんとが慌てて配信を停止する。部屋は静寂に包まれた。
しにがみ:「や、やっちゃった…かなえの存在がバレちゃった…どうしよう、かなえ、このこと知ったら…」
クロノアは冷静ながらも眉間にしわを寄せた。「ファンは混乱するだろうし、最悪、かなえにとって良くない噂が立つ可能性もある。」
トラゾーはかなえの部屋の方をちらりと見た。「でも、隠し続けることの方が、かなえにはもっと辛いことかもしれない。俺たちがここで、かなえの存在をちゃんと認めてやらないと。」
ぺいんとは深呼吸をして、覚悟を決めた。「正直、俺たちの活動にも影響は出るだろう。でも、今一番大事なのは、かなえがこれ以上傷つかないことだ。」
大切なご報告:ファンへの真実
翌日。日常組のチャンネルに一本の動画がアップロードされる。タイトルは「大切なご報告」。
ぺいんと:「皆さん、こんにちは、日常組です。昨日のライブ配信で、皆さんに大変ご心配をおかけしました」
クロノア:「昨夜、マイクから聞こえた声についてですが…僕たちが保護している少年、かなえ君の声でした」
しにがみ:「彼は、僕たちが真冬の公園で偶然見つけた子で、様々な事情があって、今は僕たちと一緒に暮らしています」
トラゾー:「彼のプライバシーと心の回復を一番に考えて、これまで公表を控えてきました。ですが、今回このような形で皆さんに知られることになってしまい…」
ぺいんとは一度言葉を区切った。かなえの存在を公にすることへの不安、自分たちの選択が本当にかなえにとって最善なのかという葛藤が、その表情ににじむ。
ぺいんと:「僕たちのこの選択が、彼にとって一番良いことなのか、まだ分からない部分もあります。ですが、僕たちはこれからも、かなえが安心して過ごせる場所を守っていきたい。僕たちの日常が、彼の安心基地になれるよう、努力していきます。どうか、温かく見守っていただけると嬉しいです。」
動画が公開される。コメント欄には、驚きと同時に、温かいメッセージが溢れる。
ファンコメント:「日常組、よくやった!感動した!」
ファンコメント:「かなえ君、辛い思いしたんだね…どうか幸せになってほしい」
ファンコメント:「日常組ならきっと大丈夫!応援してる!」
ファンコメント:「隠してたのも、かなえ君のためだったんだね…泣いた」
成長の兆し:ゲーム動画への参加
数週間後。日常組のゲーム部屋。ぺいんと、しにがみ、クロノア、トラゾーが協力ゲームをプレイしている。
ぺいんと:「うわー、この謎解き、まじで分かんねぇ!誰かヒントくれー!」
しにがみ:「これ、絶対変なひっかけあるって!俺は騙されないぞ!」
クロノア:「もう少し、冷静に考えてみよう…」
トラゾー:「俺も分からん…参ったな」
ドアの隙間から、小さな手がそっと伸びてくる。テーブルの上のゲーム攻略メモの、ある一節を指差す。
ぺいんと:「ん?なんだこれ?」
クロノア:「かなえ…?」
ドアの隙間から顔を覗かせているかなえに気づく。
ぺいんと:「お前、これ分かるのか!?」
かなえは小さく頷き、もう一度指差す。そこは、見落とされていた重要なキーワードだった。
しにがみ:「うわっ、まじ!?これか!」
しにがみがヒント通りに操作すると、見事に謎が解け、ゲームが進む。
ぺいんと:「おおおおおお!かなえ先生!!天才かよ!!」
トラゾー:「かなえ、すげえな!」
かなえは頬を赤らめ、はにかむ。しかし、その表情は誇らしげだった。
ぺいんと:「なあ、かなえ。せっかくだから、このパート、一緒にやらないか?君に協力してもらいたいんだけど!」
かなえは一瞬ためらうが、メンバー全員の優しい視線に、ゆっくりと部屋の中へ入っていく。しにがみが椅子を引いてあげ、かなえはそこにちょこんと座り、小さな手でマウスを握った。
動画が公開される。コメント欄は歓喜に沸く。
ファンコメント:「かなえ君参加してる!尊い…!」
ファンコメント:「声は出さないけど、ヒント出してるの可愛すぎた」
ファンコメント:「日常組とかなえ君の絆が最高すぎる」
外の世界への一歩:初めてのスーパー
ある晴れた午後。トラゾーがスーパーへ買い物に出かけようと、玄関に向かう。
トラゾー:「じゃあ、俺、ちょっとスーパー行ってくるな。なんか欲しいもんあるかー?」
かなえが、トラゾーの服の裾を小さな手でぎゅっと握る。
トラゾー:「ん?かなえ、どうした?」
かなえはトラゾーの顔を見上げ、微かに唇を動かす。
かなえ:「…行…く…」
トラゾー:「え?もしかして、一緒に行きたいのか?スーパーまで?」
かなえが、こくりと頷く。
トラゾー:「おーい、みんな!かなえが、スーパーに行きたいって!」
ぺいんと:「まじか!?すげえじゃん、かなえ!」
クロノア:「無理しなくていいからね。もし疲れたら、すぐに帰ろう」
しにがみ:「ちゃんも手繋いで行くんだぞー!」
トラゾーとかなえは、しっかりと手を繋いで家を出る。足元から伝わるアスファルトのざらつき、街路樹の葉が風で揺れる音、子供たちの笑い声、パン屋さんの甘い香り。そして、初めて感じる、外の賑やかなざわめき。かなえは初めての「外の日常の音」に目を輝かせた。
スーパーの中。色とりどりの商品にかなえは目を丸くする。
トラゾー:「これ、今日の晩御飯のお肉だぞ」
かなえは、トラゾーがカゴに入れる野菜や果物をじっと見つめ、時には「これ?」とばかりに特定の商品を指差した。
家に戻ったかなえは、少し疲れた顔をしながらも、満足そうに笑顔を見せる。
ぺいんと:「おかえりー!どうだった、かなえ、スーパーは?」
かなえ:「…た…のしい…」
小さな声で、しかしはっきりとかなえはそう答えた。メンバー全員が顔を見合わせ、喜びを分かち合った。
心の扉、完全に開く時
ある日の午後。メンバー全員が動画編集作業をしている。
ぺいんと:「そういえばさ、かなえって、まだ前のこととか、話してくれたことないよな」
しにがみ:「無理に聞くことじゃないけど、やっぱり気にはなるよな」
クロノア:「彼が話したいと思う時が来たら、それが一番だから」
トラゾー:「うん、俺たちはずっと待ってるよ」
リビングで絵本を読んでいたかなえは、彼らの会話をじっと聞いていた。彼の小さな心に、温かい光が差し込む。
その日の夜。かなえは自分の部屋のベッドの上で膝を抱えている。脳裏には、日常組と過ごした温かい日々が巡る。そして、遠い過去の冷たい記憶も。家を追い出された時の、冷たい風と石畳の感触、聞こえてくる大人の怒鳴り声。しかし、今はもう独りではない。彼らがいる。
翌朝。朝食の準備をするトラゾーの元へ、かなえがやってくる。トラゾーの服の裾をぎゅっと握りしめる。
トラゾー:「かなえ、どうした?」
かなえは震える小さな声で、勇気を振り絞り、言葉を紡ぐ。
かなえ:「あのね…」
その声に、キッチンにいたぺいんと、リビングのクロノア、ゲーム部屋のしにがみが一斉にかなえに注目する。
かなえ:「おうち…、おそと…、こわかった…」
たどたどしい言葉で、時折詰まりながらも、かなえは家を追い出される前の出来事を話し始める。瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちるが、彼はそれでも話し続けた。メンバーは一言も聞き漏らすまいと、真剣な眼差しでその言葉を受け止めた。
かなえが全てを話し終えると、メンバーは誰も言葉を発せず、ただ黙ってかなえを抱きしめた。
クロノア:「よく話してくれたね、かなえ…」
クロノアが優しく頭を撫でる。
ぺいんと:「もう大丈夫だからな、俺たちがいるから…!」
ぺいんとが力強く、かなえを抱きしめる。
しにがみ:「うん、俺たちが、ずーっとそばにいるからね」
トラゾー:「かなえはもう、一人じゃないんだぞ」
この日、かなえは自分の心の扉を完全に開いた。それは、最も恐ろしい過去と向き合い、それを日常組という「安心基地」の中で共有するという、最大の「日常の冒険」でした。そして、彼らがその全てを受け止めてくれたことで、かなえは、本当の意味での「安心」を心から感じることができた。
未来へと続く、新しい日常
かなえが過去を打ち明けてから、日常組の家には、以前にも増して温かい空気が流れるようになった。かなえは以前よりも笑顔を見せ、メンバーの冗談に、小さな声でくすくすと笑う。
日常組のYouTube活動も、かなえの存在によって新たな局面を迎えていた。「日常組のゆるふわ育成日記」といった動画が人気を博し、かなえの小さな手や楽しそうな声だけが動画に登場しても、その温かい雰囲気はファンに大いに支持された。
ある週末。日常組のメンバーは、かなえを連れて近所の公園へピクニックに出かける。
ぺいんと:「よーし、かなえ!ボール投げるぞー!」
かなえはぺいんとと楽しそうにボールを追いかける。
しにがみ:「かなえ、もっと高くいくぞー!せーのっ!」
しにがみと一緒にブランコに乗って、楽しそうに笑う。
クロノア:「かなえもすっかり元気になったね」
トラゾー:「ああ、本当にな。良かったよ」
ぺいんとが持ってきたカメラで、彼らは記念写真を撮る。真ん中には、満面の笑みを浮かべたかなえが、メンバーに囲まれて立っている。彼の小さな手は、ぺいんととクロノアの手をしっかりと握り、その目には、もう過去の影はどこにもない。
その日の夜。家に戻ったかなえは、自分から進んでお風呂の準備を手伝う。
かなえ:「おふろ…はい、どうぞ」
寝る前には、メンバー一人ひとりに、はっきりとした声で伝える。
かなえ:「ぺいんと、おやすみ」
かなえ:「クロノア、おやすみ」
かなえ:「しにがみ、おやすみ」
かなえ:「トラゾー、おやすみ」
かつての臆病で儚げだった少年は、日常組という温かい家族の中で、強い心と、未来への希望を育んでいた。
かなえにとって、日常組の家はもはや単なる「安心基地」ではなかった。それは、彼がこれから生きていく上で、何があっても帰る場所、そして、何があっても自分を受け止めてくれる「家族」そのものになっていたのだ。
日常組のメンバーたちもまた、かなえとの出会いを通じて、自分たちの「日常」がどれほど尊いものか、そして、自分たちが誰かの「安心基地」になれることの喜びを知った。彼らの物語は、終わりなく続く温かい「日常」として、これからも多くの人々の心に寄り添い続けるだろう。
【物語 完】
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