テラーノベル
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頭がぼんやりとしている。
時刻は深夜0時。目の前にはパソコンがあり、画面には編集中の動画が映し出されていた。連日のライブ配信に加え、その合間を縫って進めている動画編集。ここ数日はまともに休めておらず、疲れが少しずつ蓄積しているのを自覚していた。今もなお、こうして編集作業を続けている。
さすがにそろそろ休まないといけないとは思う。それでも、最近は知名度も上がり、今まで以上にさまざまな人が配信や動画を見てくれるようになった。その期待に応えたいし、この勢いを無駄にもしたくない。こんなところで立ち止まりたくないという気持ちは、長年ゲーム実況者として活動してきた自分なりの意地でもあった。
あと少しで編集も終わる。
少しくらい目を休めても問題ないだろうと、パソコンから手を離し、ゆっくりと天井を見上げる。目を閉じ、何を考えるでもなくぼんやりと意識を浮かせていると、昼間にSNSで見かけた心ない言葉が、不意に頭をよぎった。
普段なら気にすることはほとんどない。この仕事をしている以上、そういう声があるのは仕方ないと割り切れていた。
けれど、疲れ切った今の頭では、いつものようには受け流せない。
次第に思考は悪い方向へと引っ張られ、自分でも「これは少しまずいかもしれない」と感じ始めた、そのときだった。
コンコン、と控えめなノックが聞こえる。
返事をする間もなく、ガチャリと扉が開いた。
「あれ、ぷーのすけまだ起きてたの?」
「あっきぃ……」
「ふは、すっごい疲れてるね?顔やばいよ」
「あっきぃ〜……」
「もう、なによ」
遠慮なく部屋へ入ってきたのは、恋人のあっきぃだった。
いつもと変わらない柔らかな笑顔を目にした途端、それまで張り詰めていた気持ちがふっと緩んでいく。
胸の奥に溜まっていた重たいものが少しだけ軽くなって、情けないことに、名前を呼ぶので精一杯だった。
「……あまやかして」
いつもなら絶対に口にできない言葉が、驚くほどあっさりと零れ落ちた。
自分でも思わず目を瞬かせる。それ以上に驚いていたのはあっきぃだった。
「え?」
一瞬きょとんと目を丸くしたあと、その表情はみるみるうちに満面の笑みに変わっていく。
「え〜?仕方ないなぁ。ほら、おいで」
そう言ってあっきぃは、自室のベッドに腰を下ろした。普段は一緒に寝ているから、この部屋のベッドを使うことはほとんどない。
ぽん、ぽん、と自分の膝を軽く叩く。
膝枕をしてくれるのか。それとも膝の上に乗れということなのか。
すっかり働かなくなった頭では考えがまとまらない。
誘われるままに近づくと、本能のまま向かい合うようにあっきぃの膝へ腰を下ろした。
「んふ、ぷーのすけは頑張ってて偉いねぇ」
優しく背中を撫でられる。
大きく息を吐くと、張り詰めていた力がゆっくりと抜けていった。
その手の温もりが心地よくて、何も考えられなくなる。ただそこに身を預けているだけで、「もう大丈夫だ」と思えた。
「おれ、すごい?」
ぽつりとこぼした声は、自分でも驚くくらい幼かった。
「うん、すごいよ。世界一すごい!花丸あげちゃう!」
迷いなく返ってきた言葉に、小さく笑みがこぼれる。
「……世界一?」
「世界一!宇宙一!」
「あっきぃの贔屓やん」
「恋人だもん。贔屓して当たり前でしょ?」
そう言って笑いながら、あっきぃはもう一度ゆっくりと背中を撫でる。
一定のリズムで繰り返されるその手が心地よくて、強張っていた肩から少しずつ力が抜けていく。
「ぷーのすけ、最近ずっと頑張ってたじゃん。配信して、編集して、毎日遅くまで起きてさ」
「……うん」
「だから今日は甘やかす日。何も考えなくていいよ」
優しく髪を梳かれる。
くすぐったさに目を細めると、額にふわりと柔らかな感触が落ちた。
「お疲れさま」
たったそれだけなのに、胸の奥がじんわりと熱くなる。
「……もうちょっと」
無意識に服の裾を掴む。
「あはは、珍しい。そんなに甘えん坊になる?」
「……今日だけ」
「うん。いっぱい甘えていいよ」
その言葉に安心して額を肩へ預けると、あっきぃは何も言わずに抱き寄せてくれた。
規則正しく背中をさする手の温もりに包まれながら、さっきまで頭の中を埋め尽くしていた不安は、少しずつほどけていった。
しばらくそのままでいると、少しずつ思考がクリアになってきた。
頭が回るようになるにつれ、この状況と、さっきまでの自分らしくない言動が急に恥ずかしくなる。
……何やってるんや、おれ。
抱きついている体勢だから顔を見られていないのが、せめてもの救いだった。
とはいえ、今さら離れるのもなんだか惜しい。
疲れていたのは本当だし、あっきぃのおかげで気持ちがずいぶん楽になったのも本当だ。
それなら、この機会にもう少しだけ甘えてしまおう。
そう思い、抱きついたままあっきぃの肩をそっと押す。抵抗する様子もなく、そのまま二人でゆっくりとベッドへ倒れ込んだ。俺があっきぃに 覆いかぶさるような体勢になる。
ぱちぱちと目を瞬かせながらこちらを見上げるあっきぃが、なんだか妙にかわいく見えた。
「へ、ぷーのすけ……?」
「……もっと、あまやかして」
ちゅ、と唇に軽くキスをした。
もっと甘やかしてほしかった。
もっとあっきぃを感じたかった。
もう一度キスしようしたが、それより前に視界がぐるりと回って今度は俺が押し倒された。
そして今度はあっきぃからキスされた。
初めは唇の感触を楽しむように、何度も角度を変えて触れるだけのキス。それだけでも温かさと柔らかさが伝わってきて、体から力が抜けていく。
「ん、っ……ふ、んん、!」
すると、突然に舌が唇を割るようにしてねじこまれる。思わず自分の舌を引っ込めたが、あっきぃの長い舌に絡められて、口の端からどちらのかもわからない唾液が垂れていく。
「ぁ、ん……!ゃ、あっ、きぃ……っ!」
息が苦しくなってもあっきぃは止まってくれなくて。やっと口が離れたときには、もう俺は肩で息をしていた。お互いの唇に透明な糸が引くのが見えて、顔が熱くなる。
「ぷーのすけかわいいね。たぁくさん甘やかしてあげるね」
そう口では言いつつ、捕食者のようなぎらりとした視線で見つめられて、きゅんと体が疼いた。
今日はまだ寝れそうにないけど、疲れはどこかへ吹き飛んでいた。
コメント
1件
え、もう最高すぎる……!!😭💕 ぷーのすけが疲れ果てて「あまやかして」って零すとこ、可愛すぎて胸きゅん死にした〜〜!!あっきぃの優しい撫で方とか「世界一!宇宙一!」って即答するとこ、恋人って感じがエモすぎる😍💞 キスシーンも甘々なのにちょっと大人でドキドキしたよ…!2人の空気感が尊すぎて何度も読み返したくなる話でした✨
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とめぃと
8,388
ゆ あ ち ゃ !
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