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──付き合うようになって初めてになる、彼女の誕生日が近づいていた。
いつも私の気持ちに寄り添い、沢山の幸せをもたらしてくれる彼女に、私も相応のお返しを贈りたいと頭を巡らせた。
数ヶ月前から考えて、誕生日が明日に迫った前日──
彼女をドライブへ誘った。
「どこに行かれるんですか?」
誕生日の前後の予定は空けておいてくれるよう話してはいたが、まだ当日にはなっていないこともあり、何処へ向かうのか彼女も戸惑っているようだった。
「……秘密にしてもいいですか?」
そうもったいをつけて言うと、
「また、秘密なんですね…」
彼女が口にして、
「だけど、一臣さんと一緒なら、どんな秘密でも大丈夫なので」
柔らかな笑みをにこりと浮かべた……。
愛らしい笑顔に惹き寄せられ、思わず頬に口づけそうになって、
「先生、前を…」と、止められた。
「私を、焦らすのですか?」視界に信号が赤になるのを捕らえて、ブレーキを踏んだ。
「焦らすなんて、そんなこと……ただ運転中だから、キスは……」
そこまで告げた彼女が、不意に、
「私から……」
と、頬にちゅっと唇を寄せてきた。
思わぬことに、顔が赤らむのを感じて、片手で目の下半分を覆い隠すと、
「……君は、どこまで私を……」
人差し指を立て、照れ隠しにメガネのブリッジを押し上げた。まだ信号が変わってはいないことを目の端に見留めると、
彼女の首筋を抱き寄せて、
「……翻弄するんだ」
振り向きざまに、その唇を奪った。