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「ノンゎ勿論、火星《アレス》の女神様に頂いたのですっ。多分殆どの人が火星の女神様の加護《神具》なのですっ」
「何でよッ? 」
「そっ…… それはっ――― 」
随分と酷い表情を見せるノンに何となく分った気がする。まぁどうせ役に立たない加護《神具》か何かなんだろうと……
「成程ねッ。その加護《神具》ってのはアタシも貰えるのかな? 」
「住人になるなら、その惑星の女神様から誰でも貰えるでのすっ。でも、どの女神様から、どんな加護《神具》を貰うのか、何とかメガ本を探して見てから決めた方がいいのですっ。沢山の女神様の加護《神具》が載ってて、中にゎ魔力《オーラ》が無くても使える魔法《センス》みたいな加護《神具》を授けてくれる女神様も居るのですっ」
「メガ本⁉ 」
「あぃ‼ 女神本。略してメガ本なのですっ」
(扱いが雑ッ――― )
―――エロ本かよw
「かなり挑発的な内容なのですっ。男の人達が女神様ハァハァして買ってたらしいのですっ」
(エロ本じゃねぇかw)
「火星《アレス》の女神ってどんな奴だったのッ? 」
「会った事ゎ無いので分からないのですっ。小さい頃に林の中に何故かカピカピになって捨ててあったメガ本をこっそり見た時ゎ きれーなおねいさんだったのを覚えてるのですっ」
―――だからッそれエロ本……
「会った事無いってッ、洗礼式とかの時に会えないのッ? 」
「会えないのですっ。悠久の推しの女神《アイドル》にゎ会えないものなのですっ。加護《神具》も代理の巫女様が授けてくれるのでっ。お蔭で当時ゎメガ本が爆売れで、その後、過激な内容の為、発禁になったらしいのですっ、今ゎ当時のコレクター《マニア》を探して譲って貰うしか無いのですっ」
―――女神はアイドル活動もしてたとかッ……
(随分めんどくせぇッ…… )
「売れっ子は誰だったの? 」
「過激さと可憐なお姿が、幼さ残る奇跡の融合と謳《うた》われた、意志の強い赤い瞳が特徴の月の女神様、ナンナ様が断トツだったみたいなのですっ。その当時ゎナンナポーズなんてのが流行ったって聞いた事あるのですっ」
―――先代はガチロリかよッ……
「裸体を大きなウサギのぬいぐるみで隠したおねだりポーズらしいですっ」
(全裸癖は先代からか…… ウサギは何でだ? )
「何でウサギのぬいぐるみ? 」
ミューは大きな欠伸をすると、他愛も無い少しの疑問を投げかけた。
「月の巫女様が兎人種《クニークルス》さんだからなのですっ」
「あぁ成程ね…… 」
ミューは言葉に詰まり少し慮《おもんばか》ると、今、偶然着ているウサギの着ぐるみに何かしらの縁を感じ得ずには居られなかった。
―――メガ本ねぇ……
(探すのも面白いかもねッ)
鼻先に吊るされた野菜類を餌に、強制的に歩かされている巨大な古代生物がノシノシ砂丘を渡る。肌を焼く日差しは思った以上に体力を奪い、隙あらば腹を騒がしく鳴かせた。
ジュウジュウと甲羅でパンに挟む目玉焼きと焼いて居ると、今迄ノロマだった乗り物が手足をドシンドシンとバタつかせ大急ぎで走り出す。まぁ走り出すといっても早歩き程度なのだが、乗っている方は堪ったもんじゃない、甲羅の上は大震災である。
「なッ――― コラッ‼ 」
「あばばばばばっ」
激しい縦揺れでノンの顔が何重にも見える。すると……
―――目玉焼きがツルツルと甲羅の上で滑り逃げ出した―――
「逃げるな畜生‼ ノンッ、そっちの目玉焼きを頼む、アタシはこっちの目玉焼きを確保する」
「らじゃ~なのですっ」
後一歩で確保ならず、悲しいかな目玉焼きは、シャーと甲羅の曲面を滑り落ちて行くと、途中でポーンと空に舞う。それを待ってましたといわんばかりに、砂の中から変わった姿をした魚の様な生物が、派手にジャンプしてバクンと飲み込んだ。
「あぁぁぁぁぁッ、アタシの目玉焼きがぁ、てってめぇ~ 」
「泳遊砂魚《デルサクス》なのですっ」
「何だそりゃあ」
「序列ランク外の野獣って言われてる雑魚《ザコ》なのですっ 砂漠を渡る商隊なんかの邪魔したりする悪い獣《ビースト》なのですっ」
「こいつにビビッて走り出したのかッ」
(早歩きだけどッ)
落ち着いて周りを見渡すと、砂の波間から沢山の三角の背鰭《せびれ》が見え隠れしている。どうやら周りを既にグルグルと取り囲まれてしまっているようだ。
「幾ら雑魚って言ってもコノ数は多いわね」
―――20は居るか……
イヤッ30位か―――
すると、この群れのリーダーなのだろう、一際でかい泳遊砂魚《デルサクス》の背中に何かが乗っているのが見えた。
「ノンッ、あの一番でかい奴の背中。何か見える? 」
「何か乗っかってるのですっ、見えるですっ」
「やっぱり何処に行っても彼奴が元凶なんだなッ」
「ゲレッコゲーコ デゲーコ ネゲロッ ゲイコガネゲロッ」
何故かソイツは短い腕を勇者の様に高々と突き上げていた……。