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お久しぶりです!こうちゃです。
第10話になります。 注意事項は第1話をご覧下さい!
やっとストーリーが進みます!クライマックス突入ですね。こんなに投稿が遅くなってしまったのは物語の1番盛り上がる部分を書くのが苦手だからです。激しい感情の動きを書くのがすっごく難しかった…ぜひ暖かく見て頂けると幸いです。
「…はっ…はぁっ……」
息が酷く乱れて、汗が一筋滑り降ちる。胸が苦しい。でも、早く、早くあいつに会わなきゃ。
「……っ…ふ、」
ガシャン、と勢いもそのままに自転車を止めて鍵を閉める。少々雑になってしまったがトーニョには後で謝ればいい。
「…あぁ、もうっ…!」
電車が来ているのが見えて大急ぎで改札を通って何とか滑り込む。
「…はっぁ…も、しぬっ……」
汗で張り付いた髪を剥がしながら頭に思い浮かぶのは、幼い頃に泣いていたアーサーだった。
また、無意識のうちにここに来てしまっていたらしい。
「……っ…い、た…」
殴られた頬がじくじくと痛みを主張する。菊に手当してもらったはずの頬は再度殴られたことにより、より赤く腫れ上がっていた。1度殴られた弱い部分をもう一度殴られるのは想像を絶する痛みで、思わず声に出てしまう。
「……は…っ…」
芝生の上に倒れ込む。何も考えずに走るといつもこの公園にたどり着いてしまうのが、俺の悪い癖だ。幼い頃にフランシスに助けて貰って以来、ここに来れば安全だと体が勝手に認識してしまっているらしい。もうフランシスが助けに来てくれることはないのに。
「…っくそ……」
乱れた制服にボロボロの身体で穏やかな公園に横たわるのはあまりにミスマッチすぎるが、誰もいないのだから少しくらいいいだろう。そんな気の緩みからか、ほんの少し開かれた口から言葉が溢れる。
「……むかし、は、へいきだったのに…」
こぼれ落ちた声はあまりに弱々しくて、そんな自分に鼻で笑う。そうだ。昔は平気だった。1人でも何ともなかったのに、いつから俺はこんなに弱くなってしまったんだろう。目尻に滲みそうになるそれを唇をかみ締めて耐える。甘えてはだめだ。俺は、1人でやれる。大丈夫。
「…だい、じょうぶ、だから……」
「うそつき」
驚いて起き上がると、そこにはどうしても会いたくなくなかったあいつが立っていた。
「…っな、んで……」
「やっと見つけた」
怖くて顔があげられない。話したくない。
「……っ…!」
「アーサー、待って」
逃げようと腰を上げたところで腕を強く掴まれる。
「っはな、せよ…!!」
「やだ」
「なんっ、で……!」
「アーサー、ごめん…ごめんね。1人にしてごめん。酷いこと言って、ごめん」
喉の奥がきゅっと変な風に歪む。これ以上話したら、顔を見たら溢れてしまいそうで、怖い。
「めいわく、なんだろ…本当は俺の世話が、いやだったんだろ…」
「……そうだね。それも俺の本心だ。お前に構わなければ、俺は遊びに行けるし、バイトもできるし、自由に時間を使える」
「……ならっ…!」
「でも…でもね、アーサー。俺が作ったご飯をあんなに美味しそうに食べてくれるのはアーサーだけなの。俺のどうでもいい話をあんなに楽しそうに聞いてくれるのはアーサーだけなの。俺としょうもないことで喧嘩してくれるのはアーサーだけなの。俺は、アーサーと美味しいご飯を食べて、色んなことを話して、時には喧嘩して…笑い合う時間が、大好きなんだ」
ぎゅっと後ろから抱きしめられて、酷く甘い、懐かしい香水の匂いがした。
「……う、そだ…」
「嘘じゃないよ」
「うそだっ…うそだ!!!」
「嘘じゃないってば。俺がお前に嘘ついたことないでしょ?」
「はなせっ…はな、せよ…」
「なんで?」
「だ、って…俺は、1人で、1人で…」
「どうして1人じゃなきゃいけないの?」
「おまえ、の…お前のめいわくに、負担にっ…なるのは、やだぁっ…」
ずっとずっと堪えて、我慢していたものが溢れる。止めたいのに、嫌なのに、止められない。
「迷惑なんかじゃないよ、アーサー」
「…ひ、ぐっ…うあっ…ああっ…」
「ごめんね、1人にして。怖かったし痛かったよね。辛い思いさせてごめんね」
「…っい゛たい、し、こわ、くてっ…ひっ、」
「…うん」
「おまえ、にっ…きらわれるのが、こわ、くてっ…」
「…うん」
「…ひとり、は、やだあっ……」
フランシスが泣きじゃくる俺を今度は正面から痛いほどに抱きしめる。怖くて不安でどうしようもなかった心が、緩く、柔く、溶かされていく。
「1人にしてごめんね。もう、絶対に1人にしないから」
「うぁっ…あぁっ、ふら、ん…」
「苦しかったね、アーサー。もう大丈夫だからね」
伸ばした手を、フランシスは優しく包み込んでぎゅうっと握った。
「アーサー、こっちおいで」
「……いい、別に…ほっときゃ治る」
「そういう問題じゃないでしょ。ほら、おいで」
ちょいちょいと手招きすると渋々と言った具合に俺の隣に座る。何だか少し心を閉ざされてしまったようで悲しいけど、自業自得だから仕方ない。
「……っい、…」
「ごめんごめん、すぐ終わるから」
顔を歪めるアーサーをなだめつつ手早く手当を終わらせる。赤く腫れ上がってしまった頬は痛々しくて少しの間でも離れてしまったことを後悔した。
「はい、おしまい」
頭上に手をかざすとアーサーは明らかにびくりと肩を震わせた。それに気づかないふりをしてぽんっ、と頭を撫でてやるとじとりと睨まれたのですぐに手を引っこめる。いつもなら殴り出しそうなところなのに、やはり遠慮されてるのだろうか。
「ごはん食べるでしょ?なにがいい?」
「べつに…腹減ってない」
この数週間で一気にやせ細ってしまったアーサーにはやっぱりたっぷり食事を取ってもらわなくては困る…のに、本当にお腹がすいてないのかまたは食べる元気がないのかアーサーはうつむくだけだった。
「お腹すいてなくても食べてよ。なんか適当なもの作ってくるからさ」
いくつかのメニューを頭に思い浮かべながらキッチンの方を向くとくい、と髪を引っ張られる。
「あだっ…ちょ、アーサー?」
痛いんですけど、と文句を言おうとしたところでアーサーの手がカタカタと震えていることに気づく。無意識だったのかアーサーは大きく目を見開いたあとなんでもない、と慌てて手を引っ込めた。
「うそ、なんでもある顔してる」
グイッと顔を持ち上げるとその緑の中には明らかに怯えの色が浮かんでいた。今回の喧嘩は俺だって相当しんどかったけれど、アーサーはその更に倍堪えているようだ。とんでもない後悔の波を享受しつつどうするべきかと思考を巡らせていると、ピンポーンと間抜けな音が響く。
「はぁ…もう、なに…」
今は郵便なんて受け取ってる場合じゃないんだけど!と文句を言いながらアーサーの手を引いてインターホンを覗き込む。
「え、トーニョにギル…?菊と耀もいるし…」
「…きく?」
驚いてインターホンを覗き込むアーサーを横目に見つつ不思議に思ってドアを開けると
「「「この度はすみませんでした!!」」」
「……は…はぁ!?」
トーニョとギル、そして菊が深々と頭を下げていた。唖然として突っ立っていると後ろからぱたぱたと足音が聞こえてくる。
「きく!!!」
「…!アーサーさん!ご無事だったんですね!」
アーサーが嬉しそうに俺の後ろから顔を出すと菊もほっとしたように笑みを浮かべた。
「あいやー、無事だたあるか」
「心配したんですよ!」
「ごめん…菊、耀」
感動の再会と言わんばかりの3人に声も出せずに固まっているとトーニョがパンッと両手を合わせる。
「堪忍なぁ、フラン!」
「俺様も今回は悪かったぜ…」
「いやいや待って!?なんのこと!?ちょ、とりあえず中に入って!」
「うち今紅茶しかないからこれで我慢して」
「え〜、コーヒーはないん?」
「俺様はコーラが飲みたい気分だぜ!」
「だから紅茶しかないってば!」
自分勝手に騒ぎ出す2人を適当にあしらいつつ菊と耀、そしてアーサーの前にもカップを置く。
「フランシスさん、こちらお詫びの品です。お口に合うかはわかりませんが…」
そう言って手渡されたのは有名店のスコーンで、どちらかと言うと俺よりアーサー向けだ。案の定アーサーは目をキラキラと輝かせている。
「ん、メルシー。菊の選ぶものなら間違いないよ」
適当な皿を6枚持ってきてそれぞれの上にスコーンを乗せる。アーサーは置かれた瞬間に口に運んで顔をふっとほころばせた。やっぱりさっきは意地を張っていただけで相当お腹がすいてたんだろう。
「それで、なんで4人はうちに?」
早々に食べきってしまったアーサーの皿に自分のを半分ちぎって与えつつ尋ねる。
「その、私たちのせいで申し訳ないことをしてしまい…謝罪をしに来たんです」
「そこがよく分からないんだけど、4人は俺になんかしたっけ?」
「我は巻き込まれただけあるよ」
「えっと、じゃあ3人?」
「いや〜、それが最初、フランとアーサーって兄弟だと思っとったんよな〜」
堪忍なぁといって笑う友人に飲んでいた紅茶を吹きこぼす。隣のアーサーに睨まれたがこんなこと言われたら誰だってこんな反応になるだろうから許して欲しい。
「はぁ!?いや、は、???」
「俺様もそう思ってたぜ…」
「私もです」
「いやいやいや!?な訳ないでしょ!?そもそもLast nameが違うし!!しかも菊はともかく2人には説明したよね!?」
あまりの事実に思わず立ち上がって抗議するとトーニョは肩を竦めてへらりと笑う。
「いや〜、弟みたいなもんなん?って聞いたらそうって言っとったのが頭に残ってて、本当に弟なのかと思ってもうてなぁ…」
「“弟みたいなもん”と“弟”は全然意味が違うからぁ!!」
まさかそんな風に思われていたとはと頭を抱えているとおい、髭と隣から恐ろしい声が聞こえてきてゴクリと唾を飲み込む。
「…お前、俺のこと弟みたいなもんって説明したのかよ?」
「あ〜…っと、それ、は…」
「なら俺が弟だって皆から言われんのもお前のせいじゃねえか!!」
「みたいなもんって言ったの!!弟とは説明してないし!」
「ふざけんなよお前!!」
ぎゃーぎゃーと喧嘩を始める俺たちに菊があの!!と声を張り上げる。
「アーサーさん、フランシスさん、その、私の勘違いでこのような自体を引き起こしてしまって申し訳ございませんでした…!」
菊がまたもや深々とお辞儀をしてきて、よく分からずに首を傾げる。
「…ん?俺らが兄弟だと思われてたことと今回の喧嘩のなにが…」
「わあーー!!!!!黙れ黙れ!!」
突然叫んだかと思えば次の瞬間にはアーサーの拳が俺の頬にダイレクトに直撃し、俺は衝撃に耐えきれず椅子から転げ落ちた。
「ちょ、はぁ!?いきなり何すんだよこの眉毛!」
涙目でそう訴えるも暴力眉毛は何をとち狂ったのか、固く握られた拳を大きく振り上げた。
「意識飛ぶまでお前を殴る…!!」
「なんなの!?どうしてそーなるの!?」
結局そのまま殴るだの蹴るだのの大乱闘が発生し、俺の疑問は奥底に流れてしまった。