マジックスレイヤーと自称していたおっさんを葬り去った後、ようやく外に出ることが出来た。
そして先に外に出たミルシェとルティを目視で探す――そう思って辺りを見回してみると、そこには覚えのない光景が広がっていた。
「な、何だこれ……!?」
遺跡への出入り口と石柱だけは何ともなっていないように見えるのだが……。しかし、ロネード丘陵地の地面の至る所がえぐられているようだった。
もしかして思ったよりも魔導士たちとの戦いに苦戦したのだろうか?
そう思いながら近くを見回ると――。
「あっ!! アック様~! お帰りなさーーい!!」
「フフフッ、あの様子だと驚かれているみたいですわね」
「イスティさまのことだから、わらわたちがどうにかなってしまったのかと心配していたに決まっているなの!」
かろうじて崩れていない丘の近くでルティたちが手を振っている。シーニャとサンフィアの姿だけが確認出来ないが、この光景と何か関係があるのだろうか。
とにかくミルシェたちに話を聞くことに。
「ルティ、フィーサ。それとミルシェ! 何があったんだ? いや、その前に魔導士の集団は?」
おれの問いかけにミルシェは呆れ顔を見せる。状況を呑み込めていないのか、ルティとフィーサの二人だけがきょとんとしているが。
「魔導士なら、わらわとエルフでたくさんたくさん撃退したなの!」
「ん? そうなのか?」
「なのなの!」
フィーサが自信満々に笑顔を見せている。それならそうなんだろうな。
問題は、そこに見えている光景と姿が見えない彼女たちのことについてだ。
「……ちなみにルティは何かやったのか?」
「いいえ~! 外に出た時には魔導士はいなくなっていましたよ~」
「そ、そうなんだ」
「はいっっ!」
ルティだけは全く疲れた様子を見せていなく、とにかく嬉しそう。そうなるとミルシェの様子が答えに繋がるはずだ。
「ミルシェ。シーニャとサンフィアは?」
「……ふぅ。あたしでは止められませんけれど、アックさまでしたら可能かと思いますわ。そもそも魔導士との戦いだけではこんな荒涼と化すことは無かったのですもの」
「丘陵地の変化はシーニャたちがやったってことか」
「ええ、その通りですわ。とんだ戦闘狂な森人ですわ。……もっとも、遺跡や柱はびくともしないですけれど」
呆れ果てているミルシェが指差すところに向かうと、確かに彼女たちが戦闘していた。見た限りではいがみ合いではなく、単純に戦いに興じているといった感じに見える。
サンフィアは風の精霊を使って攻撃を繰り返しているのに対し、シーニャは持ち前の爪で風をかき消しているといったところだ。
間近に行くのを嫌がるミルシェたちを後ろに残し、おれだけ近づいた。
「ウニャニャニャ!! 精霊なんかでどうにかなるほど、シーニャは弱くないのだ!」
「フン、虎人族のその爪……我の風には通じるものか!」
どうやら丘陵地が穴ぼこになっているのは、お互いの攻撃が地面に衝撃を与えているかららしい。このまま様子を見ていても問題は無さそうだが、地形を変えすぎているのはやりすぎだ。
普通に叫んで命令を出したところで止まりそうに無いので、ここでもルストの力を使うことにする。フィーサとの距離も離れているし問題無く発動出来そうだ。
「《ローグウェーブ》で頭を冷やせ! シーニャ、サンフィア!!」
魔剣ルストにルーンを与えると、通常の魔法よりも威力が増す。その特性を利用したことで、単なる水属性攻撃がより狂暴な威力に変化した。
その結果、巨大な波と化した水が二人を襲う。水渦に巻き込まれたことで、ようやく戦いを止めることが出来た。
「ウ、ウニャ……ずぶ濡れになったのだ……ウウゥ!! ウニャッ?」
「お、おのれ! まだ魔導士が残っていた……き、貴様! アック!! 貴様の仕業か!」
「……シーニャとサンフィア! おれに怒る前に周りをよく見てみろ!」
「む、むぅぅ!? こ、これは……」
「ぼこぼこなのだ。シーニャ、楽しすぎて見えていなかったのだ……フニャゥ」
ふぅ。
ようやく次の遺跡に進むことが出来そうだな。
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