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有名作家――東雲弦。謎の新人監督――久我晃一。二人を中心に作られた低予算映画作品「復讐は既に」。それは失敗に終わった。
「意味不明」
「したいことがわからない」
「復讐とは(笑)」
「創作に不敬」
これはほんの一部ではあるものの、公開初日からこのような意見が溢れ、わずか二週間にして打ち切りに。世界一長い二時間だとか世間に罵られ、その評価はひどいありさま。
本作の問題点は単純な物語としてのつまらなさもあったが、なによりも誉田美蘭という実在する人物。それも、まだ世間からのヘイトも、完全には止んでいない状況で使ったことがマズかった。彼女のような社会のごみと、お前は同じなのだとでも言いたげな作品の姿勢は、とてもじゃないが認められてよいものではない。
「あはははっ。大炎上ですよ大炎上! みんなたくさん不幸になってくれましたかね!」
そこはとある喫茶店。扉には「くろーず」の四文字の刻まれた板が掛かっている。その店内はマスター含め五人が、それぞれ自身の定位置でくつろいでいる。
「まったく暢気なものだな。せっかくの有名作家の肩書に傷つけちゃって」
「ほんとですよ、先輩」
大笑いの彼女に、晃一と冬馬の二人が言った。
「いいんだよ別に。この作品が本当に駄作だったのかは、これから決まる訳だし」
東雲は嬉しそうにほほ笑んだ。ただその指先は震えており、確かな緊迫がそこにはあった。
晃一はその様子を心配しながら、自然にコーヒーを口元へ運んだ。瞬間「美味しっ!」と衝撃が走る。マスターは恥ずかしげにつむじを掻いた。
何がここまだ味の違いを引き出しているのだろう、と晃一は思う。冬馬はそれを察したようで、わざわざ挙手までして答えた。
「手間ですよ、手間。頑張って向き合った分だけ美味しくなる。そういうものなんですって」
「へ―、それってなんだか……」
「ちょっと、これ見てください!!」
晃一の言葉をさえぎって玲奈が叫んだ。すると、それぞれのしていた事を皆が中断し、言葉に従ってその場面を覗き込んだ。
「これは……」「先輩……」
ただのWEB小説、ただその一つが映っていた。
『完結』 ペンネーム――誉田美蘭。