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追憶
…しょーたくん?
宮舘「はぁ…」
もう会わなくなって数年。あれから俺は暗くなったとよく言われる。兄と慕う渡辺翔太は10歳離れており、でも優しくいつでも俺のそばにいてくれた。でも翔太が就職活動に入ると会う機会がめっきり減った。
宮舘「え…翔太ここで働いてるの?」
母『そうみたいよ?』
俺が中3。受験生になって初の夏休みに事が動いた。高校なんてどこでもいいなと思い進路について何も考えていなかった頃、母親から聞かされた。そこはここら辺じゃ中々の“不良学校”だった。でもそこに翔太は先生として働いている。
俺は母親に言った。
宮舘「ここに行っちゃ駄目?」
母は最初こそ渋い顔をしていたが、俺がどれだけ翔太に懐いてるのかを知っていたから許可をくれた。その代わり、一つの条件を加えて。
受験日。ここまで来るのに色々なことがあった。まずは教師たちとのぶつかり合い。自分で言うのもおかしいが成績はまあまあいいので、ドップクラスの高校から推薦や特待などと言ったものが来ていたようで猛反対されていた。
でもそれを黙らせたのが母。頼もしい母に…こんなにも俺を思ってくれているんだと改めて実感した。
次の壁はクラスメイトたちからの態度だった。これまで俺は“優等生”と言われ、クラスの人たちから信頼を得ていた。のに、不良学校に行くという噂が立ってから、クラスメイト達は俺を軽蔑した目で見てくるようになった。
でも俺は気にしなかった。翔太と一緒にいれるのであれば、何もいらなかったから。
そして、最後の壁が実力だった。人なんて殴ったことがない。喧嘩をしたこともない。身を守ったこともない。
これでは不良学校に言っても舐められるだけだと思い、父が少しだけ相手をしてくれた。そしたらまぁ…才能があったのだろう。父がコテンパンにやられてしまい、妹と母に怒られてしまった。
こんな事があったが受験はまぁ余裕で、名前を書けば合格!…なんてことはないが、筆記テストはほぼ満点で合格となった。やっとこれで翔大の近くにいれる……そう確信した。
入学式。俺はピシッと制服を着ていると、母親がイチャモンつけてきたから少し着崩す。シャツのボタンを1つ開け、ネクタイを少し緩く結ぶ。母親に見せたら駄目と言われあきれた表情になる。
宮舘「じゃあどーしたらいいの…??」
母「任せなさいっ!」
と言った母は、俺のシャツのボタンをもう一つ開け、胸元がガバ開きに。腕はブレザーごとめくられ腕が少し寒い。そして最後に、開けていたピアスホールに妹たちから貰ったピアスをつける。
宮舘「不良…じゃん」
妹『いいんだよそのくらいっ!翔大くんに会うんでしょ?そんな心配しないで!』
宮舘「う、うん…」
昔から妹に弱い。このピアスも貰った時、付けたくてつけたくて中学の時にピアスホールを開けた。妹達は喜んでいたが、両親はちょっと呆れ顔。先生には心底驚かれたのを覚えている。
宮舘「…先行ってるね」
母『翔太くんに連絡しないで良いの?』
宮舘「うん、驚かせたいしっ!」
母『そう、分かった』
俺は体育館の真ん中の方に座る。俺の席だ。少し周りを見渡すが周りには本当に不良って思える人が沢山いた。怖かった。でもここまで来て弱音を吐いていられない。
式が終わって教室で休んでいると、入ってきたのは担任、渡辺翔太だった。
俺は胸が高鳴った。1年間翔太のクラスで過ごすことができる。嬉しくてしょうがないのだ。でもなぜだか翔太は目を合わせてくれない。気まずいのだろうか。俺は少しだけ心が沈む。
ホームルームも終わり俺はすぐ翔太のところへ行こうとした。が、何故か色んな女子やら男子やらに囲まれる。
ジョシ『宮舘くーん!♡』
ジョシ『ねぇねぇ!♡♡』
甘い声。気持ち悪い。俺はアンタたちに興味がない。お願いだからどいてほしい。でも、ここで声を荒らげてはいけない。冷静に、冷静に対処しなくては…
宮舘「……ガタッ」
ジョシ『あ!宮舘くーん!!』
ダンシ『…宮舘って……』
女子の止める声、男子のヒソヒソ話。興味ないし聞く意味もない。でもこれでいい、俺は翔太の為にこの高校に入ったんだから。
教室を出ても人集りは酷いままで通ることが出来ない。そして今俺の前にはピンク髪の俺より少し背が低い男子が立っていた。
宮舘「…ねぇ君邪魔、退いてくれる?…」
「にゃ…?あ、俺っち??」
宮舘(にゃって何…?)
「コクッ…」
「……ね!ちょっと来てよ!」 クイッ!
宮舘「?!」
顔も知らない、名前も知らない。そんな奴に腕を引かれ廊下を歩く。抵抗するがなかなかに力が強い。でもそんなの知らない、俺は早く翔太に会いたいから構ってられない。
腕を振り払ったが付いてくるピンク髪の同級生。これじゃ職員室なんて行けないから仕方なく帰ることにした。
帰り道、俺の後ろやら横やら前やらさっきの子が付きまとってくる。俺はつい声を荒らげてしまった。面識もないのにすごく腹が立っていた。申し訳ないことをしたな……あれ?なんか…いや気のせいか。どこかで見たことがある顔だ。
宮舘「……」
(どこで見たっけな…?)
ふと我に返った時、声がしない。不思議に思い後ろに振り向く。そこにはさっきまでの元気の彼の姿とは異なる、倒れた彼がいた。
俺はそれでようやく思い出した 。
宮舘「“さくまくんッッ”!!」
うる覚えだ。中学2年か3年だった。今の状態のように倒れている人がいた。その時は黒髪で背も今よりかは低かったのを覚えている。ヒートではなかったものの、歩けそうになくて俺が家までおぶっていったのを覚えている。
彼は多分忘れているだろう。何せ意識が朦朧としていたときのことなのだ。覚えていたら逆に怖い。その時名前と家を教えてもらったな…なんで今まで気が付かなかったのだろう。やはり髪色もそうなのかもしれないな。
宮舘「やば、もう18時だ…」
翔太と話すはずだったのに、もう今日は会えないだろう。でも明日から翔太がいる生活。俺は心が高鳴っていた。
そう、あんな事があるなんて知らずに……