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ぅぁぁぁぁ""大好き
そろそろ終盤。やばい、今日で完結しちゃいそう泣。でも書き溜めて一気に投稿する方が待つ時間が少なくてみんな面白いのかな?
中也の腕の中は、熱い。 けれど太宰にとっては、それは焼けるような熱ではなく、じわじわと自由を奪い、感覚を麻痺させていく致死性の熱量だった。
「……あ、……ぁっ、」
過呼吸で肺がひっくり返りそうなほど、太宰の呼吸は浅く、速い。 涙で視界がぐしゃぐしゃになり、中也の顔さえよく見えない。ただ、背筋を這い上がるような中也の低い声と、逃げ場を完全に塞ぐ大きな手のひらの感触だけが、執拗に脳を支配してくる。
「おい、太宰。そんなに震えるなよ。……俺がお前の隣に居てやってんだろうが」
中也の手が、太宰の細い喉元を、羽毛を撫でるような優しさで包み込んだ。 それは愛撫というにはあまりに重く、絞殺というにはあまりに甘い。 太宰はかつて、数々の地獄を生き抜いてきた「史上最年少幹部」だった。どんな窮地でも不敵に笑い、敵を翻弄してきたはずの自分が、今は七歳の体で、たった一人の男に、魂の芯まで屈服させられようとしている。
(……わらわなきゃ。……いつもの、ふりをして、わらわなきゃ……)
いつものように「ちゅうや、だいすき」と、甘ったるい嘘を吐かなければならない。 そうしなければ、中也の執着はさらに形を変え、自分を粉々に砕いてしまう。
けれど、口角が上がらない。 顔の筋肉が強張り、引きつった悲鳴さえ上げられない。 中也の瞳を見上げるのが、恐ろしい。あそこにあるのは、自分を愛している男の瞳ではなく、獲物を「一生動かない剥製」に作り変えようとする蒐集家の瞳だ。
「……ひ、……あ、……ぅ、」
「……なんだ。笑わねぇのか? いつもみたいに、俺にしがみついて『大好き』って言えよ。なぁ、太宰」
中也の声が、少しだけ冷たく濁った。 太宰の細い手首を、中也がミシッ、と握りつぶさんばかりの力で掴み上げる。 そこにあるリスカ跡――太宰が「構ってほしい」という稚拙な計算で刻んだ傷跡が、中也をさらに狂わせる。
「そんなに傷を作って……。俺がずっと見ててやらなきゃ、お前は自分を壊しちまう。……やっぱり、あれが必要か?」
その言葉を聞いた瞬間、太宰の心の中で何かが決定的に壊れた。 もう、計算も、演技も、何一つ機能しない。 ただ、中也に「飼育」されるという未来だけが、巨大な壁となって目の前に立ちはだかっていた。
「……ぃ、……や……だ……。ちゅ、や……ゆる……て……」
太宰は掠れた声で、懇願するように呟いた。 震える小さな手で中也のシャツを必死に掴む。それは「甘え」ではなく、ただ、自分を壊さないでほしいという、生存本能からの、惨めで、無様な、敗北の証明だった。
「許して? ……ハハ、何言ってやがる。俺はこんなに、お前を愛してやってるんだぜ、太宰」
中也は満足げに目を細めると、もはや泣くことさえ忘れて震えるだけの「雛」を、逃がさないように、奥深くまで抱き込み直した。 太宰の目から光が消え、ただ人形のように中也の熱を受け入れる。 この部屋はもう、セーフハウスではない。 太宰治という魂を閉じ込め、永遠に枯らしていくための、美しくて残酷な温室だった。