いつからだろう。自分で思いをセーブしだしたのは。ここまで言わなくてもいい。本当のことを言ったって届かない。
奴に酷い扱いを受けてから周りが怖くなって。どうせ言ったって。自分が辛くなるだけだから。Subがものを言ったところで。
そんな感情が邪魔して思いをセーブして殺してきた。そうすれば、周りは僕を見ないし、呆れてどこかに行ってしまうから。
何も怖くない。呆れられて見捨てられて。それでよかった。1人で奴の的にされれば。奴隷だろうと人として扱ってくれれば。
だけど、心は埋まりやしなかった。ぽっかりと空いた穴を修復するなんて不可能な…
はずだったのに、。
酷い仕打ちを受けた。僕が奴に抵抗してしまったから。奴は暴れ狂い、カッターだのを取りだして切りつけガラスを割って逃亡してった。いつもの感じだ。そう思っていたのに今日は妙に体が重くって。それで腹部を押さえてみたら、案の定血の海が広がってた。
🎈「ヒェッ…」
一瞬で体が凍った。あぁ、ここで死ぬんだって。実感してからはそこが痛くて仕方なかった。でも、このまま死ねるなら。もうこんな痛みを味わなくて済むなら。そう思ったら段々意識が遠のいていった。
🎈「ぁ…」
やっと、死ぬことが出来るんだと思ったのに。だけど、脳裏に彼が思い浮かんで。あの時の涙は。
🎈「あ…や、まり…たい、」
馬鹿だなぁ。最後に思い浮かぶのが天馬くんだなんて。あぁ、こんなにも彼のことを思っていたのかな。ほんとに自分は馬鹿だ。
視界が狭くなる。だけど、僕の目は黄色いカーディガンを捉えて離さなかった。
死んだと思ったのに。僕もきっと彼も。天馬くんの手が触れた時、意識が光に包まれて気づいたら目の前に君がいた。 それがあまりにも嬉しくって、つい抱きついてしまった。
🎈「コ、マンド、……だし、ほし…くっ、て」
もう助からないことなんて分かっていたけれど、どうしてもお願いを聞いて欲しくって。
最後くらい彼に後悔してもらわないようにって。自分なりの配慮だった。
少し自分の好奇心が勝ったのもある。Commandを聞いてみたいという謎の欲。最初で最後の彼からのお願いが聞きたかった。何がくるだろうと。Kissだろうか。lookだろうか。多少のワクワクはすぐかき消された。
🌟「オレにどうしてほしいか
……Speak《言って》」
は、。ぎごちないがそれでも心は真っ直ぐしてて。想像の斜め上に困惑する。でも、困惑する前に自然と口が動いていた。
🎈「た…す、け…て、」
今何を言ったか。僕でも分からなかった。だけど、本心から出た言葉だということは汲み取ってくれたのだろう。
🌟「それが、”類”の本心だな、」
ずっとずっと、僕の心は閉まってれば良い。閉まってれば誰も傷つかない。僕が我慢してれば。自分だけが傷つけば。そんな心はどこか邪魔していた。
素直になることを忘れ、今一番大切にしてくれているんだと気づかなかった。それゆえ起きた、セーブ現象。また、彼は周りのヤツらと同じなんだと偽りの自分で接していた。本当の自分を隠し、彼の望んだ神代類を演じ続ける。それは周りと同じだった。
だが、天馬くんは周りと違った。僕のことを考え親い、救おうとしてくれた。初めて受けたCareでもそうだ。今までしてきた事が否定され、ありのままの僕を受け入れてくれている気がした。
🌟「怖かっただろう。苦しかっただろう。よく耐えてくれたな、。この1ヶ月間、オレの無力さを嫌でも実感した。先輩はオレに正面から話してくれていると錯覚していた。」
🎈「……っ、」
🌟「でも、本当は違っていた。それはオレの理想で現実を見なかった自分自身が悪いんだ。先輩がずっと戦ってきたように今度は一緒に戦おうと心に決めた。」
頭をそっと撫でられる。我慢していた、閉ざしていた心の小瓶にヒビが入っていく。
🌟「オレは嫌ったりなんかしない。何でも受け止める気でいる。だから大丈夫だ。周りの見てるやつとは違う。信じてくれ。」
信じて。何よりも強くって。ヒビは次第に大きくなり、小瓶は弾け飛んでしまった。
🎈「ヒック……ぼ、くはッッ、ッッ、”つかさ”くん、と…た、くさ…ん、、わらい…あい、たい」
🌟「……」
🎈「そ、れで…、おこ、られ…て、け、、んか…して、そ…れでも、なか、…よく、なって。”ふつう”、の…こう、こう……せいかつを、おく、…り、たいッッ、、」
ポロポロと涙と一緒に吐きでていく。歯止めが聞かなくって。それでも優しく聞いてくれる彼に甘えたくって。
🎈「まだ、…まだ、”生きたい”、よ、」
🌟「ッッッッ、」
腕の力が抜けていって、彼にもたれ掛かる。初めてだ。こんなに本心で話せたの。ありがとう。天馬くんのおかげだ。
🌟「絶対にッッ、死なせたりなんかしないッッ。絶対にッッ絶対にッッ、生きてオレと一緒にまた笑い合おうッッ、 」
🎈「う、…ん」
もう1人じゃない。安心してくると身体が重くなる。ここで死ぬのかな。でも、怖くないよ。きっと彼が何とかしてくれるから。
🌟「まっていろ、必ず助け出してみせるッッ。なってったって、オレは大スターだからなッッ!!」
🎈「な、………に、……そ、れ笑」
このお星様にまかせてみよう。
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