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手術まであと1時間の所で無事に部屋に辿り着けた、康夫が車を飛ばして急いでくれたからだ。
無事に入院出来て自分の割り当てられた個室のベッドに着いたら、私の神経は落ち着いたのか安定して来た。康夫が遅れた事もそんなに怒るほどではなかったのかもしれない。
そして私はあれこれと康夫に子供達の事を支持する
「遺言書を書いておくべきだったわね」
私は不意に思い出して言う
「もし・・・私に何かあったら・・・子供達をお願いね」
ハハハ「俺は再婚していいのかい?」
「すぐにそんなことをしたら化けて出るわよ!せめて2年は開けて!」
「おいおい!真剣にそんな事考えるなよ!」
康夫は笑う、今の感情を何て表せたらいいかわからない。表情は冷静に保っているけど、いくら帝王切開だとしても生れて始めての手術だ、死ぬほど怖い
いよいよ手術着に着替えて、麻酔や緊急時に関する様々な書類に直筆でサインする
腰から麻酔をいれるので背中が開いた手術着でメディカルストッキングを履く
この世で最も見栄えの悪い服であることは間違いない
看護師が運んできたストレッチャーで運ばれる、私の手を康夫が握っている
「目が覚めたら赤ちゃんがいるよ」
「そうね」
優しく微笑んでくれて彼が言った、なんとなく彼の言葉で安心出来た。康夫が入れるのはここまでだ
手術室に入ると男性の麻酔医が陽気に私に話しかける、手術室は明るくて、最新技術の機械が所狭しと置かれている
ホワイトボードに今日の私の手術チームの名前が書かれている
麻酔医が何か音楽をかけて欲しいかと聞く、私は普段は全く効かないのにクラッシックをお願いした
軽快なピアノにバイオリンのリズムが心地よい「四季」が流れて来た
「沢村さ~んそれでは麻酔を入れて行きますよぉ~」
チクリとしたと思ったら激痛が走った、それでも針が入ってしまえば意外と平気だった
「夕べは何を食べましたか? 」
「お産に精をつけようと妹家族とお肉を食べに行きました」
ハハハッ「普通分娩じゃないですから精はつけなくてもよかったかもですね」
私は麻酔医と笑った、すると手術室が急に慌ただしくなった
手術チームが続々と到着し、私の周りに集まって来た、みんな青いスクラブ帽にサージカルマスクという格好で目しか見えない。私は血圧を計られ、色々と装置を装着された
「沢村さ~ん、お加減いかがですか?」
私の担当医の先生が私の顔を覗き込む
「先生!よろしくお願いします」
「頑張りましょうね!」
途端に担当の執刀医の顔がぐにゃりと歪んだ
彼が何か言った、私も何か言ったが海の中に沈んで話しているみたいだ
そして天井が回転し、私も回転したそれがぐるぐる回り段々とフェードアウトし
そしてただ闇が真っ暗に広がった