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「ふむふむ……
こちらの巨大なアリは女王アリで、下手に
倒すわけにはいかなかったと」
「はい。今は落ち着いているようですが―――
この山を住処としていますので、統率を失った
アリたちがどう動くかわからず……
下手に手を出せなかったとの事」
巨大なテンと巨大アリの戦いを仲裁した形となった
私は、羽狐の一人から事情を聞いていた。
「それで、こちらの方は」
全長十メートルはあろうかとう白いテンのような
獣を見上げ、通訳の羽狐の女性に聞く。
「この山の主、といったところでしょうか。
我々もここを住処としていましたので、
見かけた事はありますが……
別段敵対や協力関係にあったわけでは
ありませんので」
お互い、干渉しないで共存していたという
事かな。
「でもずいぶんと大きいねー」
「こんな獣や昆虫と一緒に住んでいたのか?」
「ピュウ?」
同じ黒髪の―――
セミロングとロングの妻二人が、それぞれ
テンとアリを見上げるが、羽狐はぶんぶんと
首を左右に振り、
「いえ、ここまで巨大とは……
彼に聞いても、大きくなったのはつい
最近との事です」
通訳の羽狐によると、一応そこそこ大きくは
あったらしい。
だけど今の1/3くらいで、
巨大化したのは、ちょうど羽狐たちが山を去る
決心をした前後の時期との事。
「羽狐たちがここを離れたから?
いやでも、彼らの存在が悪影響だったとは
思えないんだけど」
もしくは何らかの力を羽狐たちが山から
取り込んでいて―――
彼らが去った後、それがテンやアリに供給され、
巨大化したという事だろうか。
「もしかしてさー、ルクレさんの影響じゃ
ないかな?」
メルがふと思い出したかのように話し、
「あやつらの人化はアイツが絡んでいるしのう。
その後もこの山に羽狐たちが来た事で、
間接的にフェンリルの庇護を受けて、とか」
「ピュッピュ」
次いでアルテリーゼも同様の意見を語る。
「いやでもそれだと、アリまで巨大化した
説明がつかない。
彼女の力は獣人や獣限定だったと思うん
だけど」
「あ、こちらの女王アリは『普通』の大きさだ
そうです。
なので無関係ではないかと……」
白いテンのような獣が通訳を通し、うんうんと
うなずくように首を振る。
「え、こんな巨大なのがいっぱいいるの?」
「いえ、他のアリたちはずっと小さいとの
事です。
普段は地下にいて、滅多に姿を現す事は
無いと言っております」
彼女は両手を離して六・七十センチくらいの
間を作り、説明する。
私は不安そうに遠巻きにしている、冒険者たちに
視線を送った後、
「ええと……
もう問題は無いと見ていいですかね?
女王アリは正気に戻ったみたいですし、
そちらの主さんも、ケガが大丈夫なら」
話を切り上げて解散したい、と遠回しに
伝えてみるが、
そこで獣と昆虫が顔を近付けて何らかの
意思疎通をし、そしてそれが通訳の羽狐に
伝えられると―――
「女王アリも主も、何か礼をしたいと
言っております。
特に主は、以前息子を助けてもらった
恩もあるとかで」
「ん? 息子?」
すると巨大な獣の頭の上に、ヒョコっと
小さな動物が顔を出す。
「……あ!
地穴を倒した時に吐き出した―――」
(■159話
はじめての こきょう(はぎつね)参照)
「はい。それで何でも仰って頂ければと
言っておりますが」
しかし急に言われてもなぁ。
こっちは採取の最中に乱入されたような
ものだし、それを解決しただけで……
「では、今後もこの山で『キクラゲ』『舞茸』の
採取を許可して頂けますか?
後は人や亜人をむやみに襲わないと約束して
もらえれば」
すると頭の上で、巨大な獣と昆虫は顔を
見合わせ、
「約束する、と―――
それと何かを集めているのであれば、
珍しい物があればこちらで確保しておく、
との事です」
「あ、それはありがたいですね。
よろしくお願いします」
私が頭を下げると、テンと女王アリも慌てて
首を下げ、
じゃあ後は帰るだけかな、と思っていると、
「……え? はい?
あのう、その子がそんな苦いきのこを
食べるの? と聞いてきてますけど」
見ると、息子と言っていたイタチのような子が、
興味津々で私たちの方を見下ろしていて、
「いや、これは料理で使うもので……
う~ん」
どう説明したものか悩んでいると、
「シンー、食べてもらった方が早くない?」
「そうじゃのう。
百聞は一見に如かずじゃ」
「ピュイッ」
と、公都に来る事を妻たちが提案。
それを通訳の羽狐が伝えると、
「では、息子だけお願いしたいと。
主は山から離れられず―――
それにこの大きさでは、迷惑だろうと」
連れて行くにはアルテリーゼの『乗客箱』しか
無いが、確かに主の体は大き過ぎ、乗せるのは
不可能だろう。
そこで通訳を通し、次回料理を持ってくる事を
伝えると……
ようやく私たちは公都への帰途についたのだった。
「今回は獲物は無しか」
「ひ、人の事をしょっちゅう何かを倒してくる
みたいに!」
公都に到着した私は、まず冒険者ギルド支部へ。
冬虫夏草から助けた女王アリの事も話したが、
魔物サイズ的には不思議ではない事と、
主に関しても友好的であった事から―――
記録だけに止まり、
「ま、何か約束したんならちゃんと
守っておけよ」
そうジャンさんから丸投げされ、
報告に関しては終わった。
「しかし、とうちゅうかそう? ッスか」
「シンさんの世界にもあった物なんですよね?」
レイド君とミリアさんが、『無効化』させた
ものについて聞いてくる。
「キノコとかの一種ですけどね。
体につくカビのような存在で……
寄生されたらもちろん死んじゃいますけど、
ある程度行動も制限されてしまうんです」
そして離れた席には一組の男女が、
「興味深い素材です。
生きている間に寄生するキノコとは」
「さっそく持ち帰って鑑定してもらいましょう、
パック君」
夫婦してその白銀の髪が特徴的な、医師であり
学者である二人がいた。
「やっぱり珍しいものッスか?」
黒髪・褐色肌の青年がたずねると、
「シン殿からの知識で、菌や発酵という
概念は知っておりましたが―――」
「もしかすると、過去……
狂暴化した魔物や動物も、これが原因
だったものがあるかも知れませんね」
パックさんに続いてシャンタルさんも、
『それ』を器具で扱いながら見つめる。
「だ、大丈夫なんですか?」
丸眼鏡のショートヘアの女性がこわごわと
その様子を遠目で伺うが、
「寄生する対象はたいてい決まっていますし、
もう自分が『無効化』しているので―――
危険は無いかと」
「しかし持ってきたって事は……
まさかコレ、食えるのか?」
筋肉質の体のアラフィフのギルド長が、
片眉をつり上げる。
「いえ、ただ貴重な薬の材料として
重宝されていました。
『無効化』してしまったので、効能が
どうなっているかまではわかりませんけど。
それでパック夫妻に見てもらおうと」
するとパック夫妻は視線を冬虫夏草に
向けたまま、
「薬として使うのなら、加工しますし―――
生きたまま使うわけでもないので、
大丈夫じゃないでしょうか」
「ともあれ、今は氷詰めにしているから、
あまり心配はしなくてもいいでしょうけど……
その辺に置いておくようなものでも」
冬虫夏草の入った箱は、彼女の言う通り
氷が詰められている。
暑さ対策のために氷を持って行っていたのだが、
こんな形で役に立つとは思わなかった。
「では確かに受け取りました」
「それでは、わたくしたちはこれで」
そこでパック夫妻が一礼して退室し、
「じゃあ、私もこれで」
と、席を立とうとしたところ、
「おう、そういや主の息子が来たんだろ?
そいつはやはり児童預り所か?」
ジャンさんに呼び止められ、立ったまま対応する。
「はい。
また次にあの山へ行くまでの期間ですので、
そこにいてもらおうかな、と」
「そっか。
じゃあ後で面でも見に行くかな」
するとレイド夫妻も興味津々な顔で、
「イタチみたいって言ってたッスよね?」
「魔狼や羽狐とはまた違うんでしょう?」
私はその質問に苦笑し、
「そうですね。
でも児童預り所に着いた途端、子供たちに
もみくちゃにされていましたから。
会うのは難しいかも知れませんよ」
そこで全員が笑い合い―――
私は支部長室を後にした。
「精霊様たちが?」
その後、私は自宅の屋敷に戻ると家族と雑談に
興じていたのだが、
児童預り所にはラッチもお世話になっており、
その関係で主の息子についても話が出てきた。
「土精霊様と氷精霊様だけど、
あの子を気に入ったみたいでね」
「まああの中ではかなり小さい方だからのう。
可愛がるにはちょうどよいのであろう」
「ピュー」
メル、アルテリーゼ、ラッチが思い思いに
感想を語る。
「そういえばキクラゲや舞茸は?
あの子食べた?」
「今はもう夏だけど、児童預り所には
氷柱に送風の魔導具もあるしね」
「通訳の羽狐を通して、とても美味しいと
言っておった。
ラーメンやお味噌汁の具にしたが、
どれも好評であったぞ」
そのために来たようなものだしな。
良かったのなら何より。
「あとねー、オトヒメさんの子たちも
何体か児童預り所で泊っているみたい」
「ん?
陸上で問題無いのならいいけど……
亜人・人外専用居住地の湖だってあるのに」
メルの話に疑問を呈すると、
「あやつ、人間の姿になったであろう?
それで自分の子も、と考え―――
今のうちから人間の暮らしに慣れさせておく
つもりであろう」
「ピュイ」
んー、確かにその可能性はあるんだよな……
魔狼しかり、ワイバーンしかり。
羽狐たちもそうだったしなあ。
「児童預り所、人数的に大丈夫だろうか」
場所を変えたり、増築したりといろいろ
したけど―――
さすがにこうまで増えるのは想定していない。
「今のところは問題ないと思うけど。
昔のままだったらヤバかったね」
「チエゴ国からの留学組もいるしのう。
ていうかあやつら、帰る気あるのか?」
あー、そういう人たちも預かっていたっけ。
確かに留学は年単位でやるけど……
新生『アノーミア』連邦始め、結構な数に
なっているはず。
本当に人が増えたよなー、としみじみと思うのと
同時に、
そういう人たちに対しても、自分の責任は
かなりのウエイトを占めているのだと実感する。
だからこそ、ランドルフ帝国の動向が頭が痛い
ところなのだけど……
そう思っていると、対面の妻二人が手を伸ばし、
「またシン、何か考え事してるねー」
「1人で抱え込むでないと、何度も言っておろう」
「ピュー!」
二人は俺の頬をつまんだりつついたりし、
ラッチはシッポで肩をパシパシと叩く。
「悪い悪い。
ちょっと海の向こうの事を考えてね」
私が謝ると、彼女たちもやや微妙な顔になり、
「まー、何も無いに越した事は無いんだけどね」
「人間の国絡みは本当に面倒だのう。
いっそ我の巣から何人か呼ぶか?
たまに差し入れるここの料理も酒も気に入って
おるようだし―――」
そこで私は首を左右に振って、
「ワイバーンの時もそうだけど、うかつに
『使える』という事を相手に知られるのは
得策じゃないんだ。
それにこっちは友好関係を築いているけど、
あっちが無理にドラゴンと接触しよう
ものなら……
目も当てられないと思う」
そこで私は一息ついて、
「とにかく、後はランドルフ帝国の返事待ちだな。
順当に考えれば、こちらからも使節団を送って
欲しいという考えになるはずだけど」
私は天井を見上げ、そうなる事を祈った。
「水中戦力と飛行戦力の連携は上々。
特にロック・タートルの存在が大きく、
彼女とラミア族・人魚族が共同で作戦を行えば、
数百隻の船団でも対応可能という事です」
「ご苦労だった。
水上戦力の相手は彼らに任せるが、
メギ公爵率いる格闘戦用のワイバーン騎士隊の
訓練も怠るな。
それとスクリューの開発も急がせよ」
「ハッ!!」
ウィンベル王国、王都・フォルロワ―――
その王宮。
国王であるラーシュ・ウィンベルは部下の
兵士から報告を受け、さらなる指示を
飛ばしていた。
報告に来た兵士が新たな指令を受けて退室し、
部屋には主である彼と、
「さてと。
まあやる事はやったが、あちらさんが
どう出てくるか」
そこにはもう一人……
冒険者ギルド本部長ライオットにして、
前国王の兄、ライオネル・ウィンべルが
甥の机の横に佇んでいた。
「こちらは友好的な意思を示しました。
真っ当に考えるのであれば、次はこちらから
使節の要請―――
後に交易、そして同盟の締結」
「そうなると思うか?」
意地悪そうに笑う叔父に、彼はフー、と
ため息をついて、
「半々でしょうね。
新生『アノーミア』連邦の前身……
マルズ帝国のように、支配地域の維持が
出来なくなって、各地の自治独立や
連邦制が取り沙汰されていれば
話は別ですけど」
「あのティエラお嬢さんの話を聞くに、
他種族や周辺国に相当やらかしているっぽい
からなあ。
これを機に考えてくれりゃいいけど、
国ってのはそう簡単に方向転換は出来ない
もんよ」
アラフィフとアラサーの王族が、
眉間にシワを寄せる。
「まあ、シン殿が授けてくれた策……
水中戦力による壊滅作戦があれば、一度は
侵略をはねつけられるでしょうが。
シン殿の考えはどうなのでしょう」
ラーシュ陛下の言葉に、ライオネルは
肩をすくめて、
「いや~、あんまり期待してねぇと思うぜ?
口ではなるべく戦争回避を、とは言って
いたが―――
一方であの水中作戦はなあ。
どう見たって『来る』事を前提に考えて
いるだろ、ありゃ」
「来た場合は一隻も逃さず全滅させる
ようにと……
そして捕虜を救出する魔導具の作成まで。
あの人はどこまで想定しているんでしょうか」
そこでライオネルは近くのイスに座り、
「最初小競り合いというか、ドンパチが
始まるのは仕方ないってこった。
後は調子こいて戦線を拡大させない事。
そこは陛下の手腕にかかっております」
急に臣下の態度を取る叔父に、彼はプッと
吹き出し、
「そうですね。
全て未帰還、一隻も帰ってこないとなれば、
彼らも慎重にならざるを得ないでしょう」
「そうだな。
俺なら戦力を防衛に回して固める。
そして空白の時間が出来るだろう。
そこを見計らってこちらから使者を送る……
って事になるだろうな」
そして互いに二人は視線を交わし、
「今のうちに使者の選定も考えておきますか。
一人、心当たりがありますので」
「おう奇遇だな。
俺も一人心当たりがいる。
じゃ、お互いに進めておこうか」
二人の王族は顔を見合わせると口元を歪め、
そしてそれは大笑いに発展した。
「シャンタル、そのへんで」
「わかったわ。
それじゃレムちゃん、準備はいいわね」
「……♪」
数日後、私は家族、パック夫妻、そしてレムと
一緒に亜人・人外専用居住地の湖に来ていた。
「えーっと、アレで何体目かな?」
「しかしよくも作るものよのう。
研究や医者としての仕事もあろうに」
「ピュイ」
メルとアルテリーゼ、ラッチが見守る先は、
湖の上空。
ドラゴンの姿のシャンタルさんが、巨大ゴーレムを
吊り下げながらホバリング状態で浮かんでおり、
そのゴーレムにはレムが搭乗していた。
「水中用ゴーレムたぁな。
いろんな事を考え付くものだ。
アレもお前のアイディアか? シン」
監督として同行しているジャンさんが、
見上げながらつぶやく。
確かに某ロボットアニメについて、パック夫妻に
求められるままに説明した事はあったが……
まさか再現するとは露程にも思っておらず。
ていうかどう見てもあれアッ〇イ……
「物語としてのゴーレムはいくつか伝え
ましたけど……
地球にも現実的には無いものですからね。
そういえばレムちゃんの呼吸って大丈夫
なんですか?」
私がパックさんに話を振ると、
「レムちゃんはゴーレムですから―――
『魔力核』が動力源であり、生物的な呼吸や
睡眠は必要としていません。
唯一の心配は事故などで沈んだ場合の
脱出方法ですが、そこはラミア族が
いますから」
見ると、湖周辺にはその担当者と思われる
ラミア族が数名待機していて、
「おっ、そろそろみたいだぞ」
彼の説明の後、ギルド長の言葉で改めて湖の
上空に目を向ける。
するとちょうど四メートルはあろうかという
巨大ゴーレムの全身が沈んでいくところで、
気泡を立てて水面下に潜り―――
やがて静かな湖面が戻ってくる。
「おりょ?」
「動きが無いが失敗か?」
「ピュ?」
窒息はしないとの事なので溺れる危険は無いが、
それでも何か確認出来ないと不安になる。
と思っていると波が出現し、
「おおっ!?」
「あの下にいるのか。
ずいぶんと早いな」
「うまくスクリューが作動しているようですね」
私とジャンさん、パックさん男性陣が感想を
口にする。
波は湖をぐるりと一周するように猛スピードで
動くと、やがて静まり返った。
「ン? 終わりかな?」
「しかし上がってこぬのう」
「ピュピュ~?」
家族が首を傾げていると、突然豪快に
水柱が上がり、
「えっ?」
「んん?」
私とギルド長が思わず見上げる。
その先は、巨大ゴーレム。
「ちょっと出力が強過ぎましたかね」
パックさんが白い長髪をなびかせながら、
状況を分析する。
ゴーレムのスクリューは背中についており、
その推進力で勢い余って水上に飛び出したようだ。
飛び出した、というよりは……
何か浮かんでない?
というくらい滞空時間が長い。
何度か着水と水面上にジャンプを繰り返して
いたが、
そこでドラゴンの姿のシャンタルさんが
こちらへ飛んで来て、
「パック君、大変!
制御を失っているみたい!」
「何だって!?」
妻の言葉に夫が驚いて聞き返す。
確かにあの動きは―――
何とか制御を保とうとして四苦八苦している
ように見える。
今は湖に落ちているからまだいいけど、
これがどこかに飛んで行ってしまったら……
中にいるレムちゃんは元より、落ちた先にも
被害が及ぶだろう。
するとジャンさんが私の肩を叩いて、
「こういう時のためのお前さんだろう。
早く何とかしろって。
俺が破壊してもいいが、下手をしたら
中のレムも無事じゃすまねぇし」
確かに、武器特化魔法を持つギルド長に
スクリュー部分を壊してもらえばいいけど、
中にいるレムちゃんの安全を考えると―――
やはり自分がやるのが確実か。
「パックさん。
あれは『ロボット』ですね?」
私はかつて、同じように実験ゴーレムの暴走を
止めた時の事を思い出し、彼にたずねる。
(■74話 はじめての ろぼっと参照)
「は、はい!
あれは『ロボット』です!」
彼に確認を取り、私は頭上の『ロボット』へ
向かって、
「魔力で動く『ロボット』など
・・・・・
あり得ない」
そうつぶやくと、
「おっ、背中のスクリューが止まった?」
「という事は―――」
「ピュッ!」
家族がそれを見届けると、空中で姿勢を崩した
ゴーレムはそのまま湖へと落下し、
同時に待機していたラミア族が飛び込み、
レムちゃん救出へと動き始めた。
「何がダメだったんでしょうね、パック君」
「引き揚げてみないとわからないけど、
配分ミスかも知れない。
魔力を貯める魔石に、魔界から輸入した物を
使ったので……
想定以上の出力を引き出した可能性がある」
(■132話 はじめての こうざん参照)
そう話し合うパックさんと人間の姿になった
シャンタルさんの間には、レムちゃんが
抱かれており、
小さなゴーレムは手をパタパタと動かして、
『面白かった!』『楽しかった!』とでも
言っているような雰囲気だ。
「おーい、パックさん、シャンタルさん。
湖底に沈んだゴーレムに、ロープを結び
終わったってラミア族が」
「引き揚げるなら我も手伝うぞ?」
「ピュウ」
そこへ家族がやって来て、引き揚げ作業について
述べる。
「わかりました」
「じゃあレムちゃんをお願い出来ますか?」
と、シャンタルさんがギルド長に小型の
ゴーレムを手渡し、
「ではシン、ラッチを頼むぞ」
と、私にはアルテリーゼから小さなドラゴンが
渡された。
そしてパック夫妻とメル、アルテリーゼは
引き揚げ作業の現場へと向かい、
私とジャンさんが残される。
「……しかし、こういう事して―――
国に目を付けられませんかねえ」
私がこの前やったような合同訓練はとにかく、
パック夫妻のはほとんど独学の独自研究による
実験だからなー……
「安心しろ。
とっくに目を付けられているぞ」
彼の回答に私はガクッと肩を落とし、
「い、いやそれっていいんですか?
ていうかその割には、パック夫妻に対して
あまり接触が無いような―――」
「嫁がドラゴンなんだぞ?
そりゃ強硬手段に出るバカはいねぇよ。
それにパックさんの方も、凄腕の治癒魔法の
使い手として有名になっているんだ。
各国の重鎮や貴族も治しまくっているから、
ある意味お前さんと同じくらい人脈はあるぜ」
そういえばドラゴンと交わった事で、
パックさんの魔力や魔法の威力は桁違いに
なっていたんだっけ。
「まぁいざという時は、シン。
お前さんに頼る事になっているしな」
「へ? な、なんで」
「だってシンの嫁もパックさんの嫁も、
同じドラゴンで知り合いだろ?」
そんなママ友の夫同士だろ?
みたいな感覚で言われても……
私は複雑な思いで、始まった引き揚げ作業を
見つめていた。
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