テラーノベル
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屋上の柔らかい夕陽の中、六人は輪になって座った。
みことはいるまにしっかり体を預け、肩をくっつけたまま離れない。
その隣に、こさめももたれかかり、思わずいるまの腕に寄り添う。
「いや、重いし、暑いわ!」
いるまは照れ隠しで声を上げるが、どこか嬉しそうでもある。
「モテモテじゃん」
ひまなつはその様子を見て、にやりと笑っていた。
その微笑ましい空気を一度切り、らんは輪の中心で真剣な表情になる。
「……じゃあ、本題に入るぞ」
らんはみことの経緯を整理して語り始めた。
話し終えると、沈黙の中でいるまがふと眉をひそめた。
「……ふざけんなよ」
その声は低く、しかし鋭く響き、屋上の空気を一変させる。
「みことに、何やってんだ、あのクソども……!」
みことはいるまにぴったり体をくっつけたまま、微動だにしない。
こさめも身を寄せ、いるまの表情をじっと見上げた。
「教師に腕を掴まれたり、カッターで傷をつけられたり……
俺が許すと思うなよ。絶対に許さない!」
「気持ちは分かるが落ち着けよ」
ひまなつが横でそっと声をかける。
「いるま、感情的になるのは分かる。でも、まずは落ち着いて、みことの心を守ろう」
らんは冷静に諭す。
いるまは深呼吸して肩の力を落とすが、目にはまだ怒りの色が残っていた。
らんは輪の中心で、声を低めに話す。
「18時までに屋上に来いって言ったけど……主犯、来るかな」
全員で待つとかえっていじめる立場が逆転する可能性がある為、最低限の人数で出迎えることとなった。
らんとすちは残ることに決めた。
「みことはどうする?」
すちがそっと聞くと、みことはいるまから離れ、決意を示すように小さく言った。
「……残る」
「みこと…!? それなら俺も残る!!」
いるまは慌てて手を伸ばすが、らんがすっと前に出て一喝する。
「怒りに任せて話すやつはダメだ。落ち着け」
みことはためらうことなく、いるまにもう一度抱きついた。
耳元でかすかに囁く。
「大丈夫…いるまくん、ありがとう……」
その声に、いるまはぎゅっと肩の力を抜き、深く息をつく。
心の奥ではまだ怒りが渦巻いているが、みことの安心が最優先だった。
「……分かった」
いるまはみことの頭をそっと撫で、視線をらんとすちに向ける。
「みことに怪我させたら、絶対に許さないぞ」
鋭い視線に、らんとすちも頷き、安心感と緊張が入り混じる。
ひまなつとこさめも一緒に、屋上を後にするために歩き出す。
すちはみことに手を差し出す。
みことはためらうことなく、そっとその手を握った。
小さな手の温もりに、すちはほっと微笑んだ。
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