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次には何が待っているのか。机を見ると、カルテに何かのゲームのルールであろう内容が書かれていた。
【ブラックジャック】
「茉津李。ブラックジャックってゲーム知ってるか?」
「無免許医の主人公が活躍する医療漫画のことか?」
「ゲームだっつったんだよ。名前同じだけど」
デスゲームに巻き込まれても変わらない兄たちを横にルールを読んでいく。
〜カードの数字の合計点で二一点を目指すゲーム〜
・一〇、キング、クイーン、ジャックは一〇、エースは一一とする
・ゲームマスターの「プレイスユアベット(賭けてください)」の掛け声で始める
・チップを賭けたいだけ賭ける
・ゲームマスターの「ノーモアベット(締切です)」の掛け声で終わる
・カードを二枚配る
・ゲームマスターが順番にカードを追加する(ヒット)か尋ねる
・ヒットは何度しても良いが、二一点を超えたらバースト(失格)
・カードを引いて、チップを上乗せ(ダブルダウン)も有り
・点数が十分だと思ったらカードがもういらないことを示す(スタンド)
・全員が終えたら最後にゲームマスターがカードを引く
・ゲームマスターも含めた全員の中で一番、二一に近かった者が勝ち
これをチームごとに三回、繰り返し、最終的に一番チップが少なかった者が脱落。第一回戦の七並べで脱落してしまったあの人のように……。ルールを確認したら次の部屋へ入る。机が三つに山札が一つずつ置かれていた。人数的に八ー八ー七分かれろということだろうか。と思ったら机に名簿が貼ってある。このとおりに分かれろと。そしてチップ。これを賭けろと。
「プレイスユアベット」
今、戦いのゴングが鳴り響いた。一つ目のチームのゲームが始まった。配られたチップは一〇〇枚。ここからどれだけ賭けるのか。それが問題だ。皆、手堅く賭けていく。ルールのとおり全員が賭けるチップを場に出すと自分たちを連れてきた看護師たちがどこからかやってきてそれぞれの机を回ってカードを二枚すずつ配っていく。カードが公開されていく。何のカードが出るのかは本当に神しか知らない。これを三回、繰り返して一番チップが少なかった者は……もしかしたら神というものも案外、残酷で優しくて気まぐれな存在なのかもしれない。
「長月小夜花、脱落」
「嫌だ……嫌だ……嫌だ……死にたくない……」
他のチームではもう早速、犠牲者が出ている。死にかけの魚みたいにあえいでいる。正直、もう見ていられない。体が瞬く間に消えていった。そんなこんなであっさり第一ラウンドが終わってしまった。そして第二ラウンドも……
「玖村佳鼓、脱落」
「ちょっと……やめて……」
なるほど。このチップが減っていくと体にガタがくる。一番、少なくなってしまったということは……。ゲームオーバーになるとこのペンダントが作動するわけか。ようは首輪爆弾だ。初めてもらった時から予感はしていたが。
「この部屋には毒ガスが噴射されている」
モニター越しに待っていたゲームマスターの声が聞こえた。時間内に終わらせないと毒ガスで部屋が満たされてみんなで死んでしまうということだ。もうゲームもクソもなくなってしまう。
「お姉。まずいよ。このままじゃ毒ガスが……」
「毒ガス……! なるほど! その場所を壊しましょ。試してみれば分かるわ」
「え……いいんですか、壊しちゃって!」
参加者の一人の沖兎風卯花の問いは無視して「ふんっ」っと機材に蹴りを入れる歌華。拍子抜けな掛け声に反してガスを噴射していたその機械は活動をやめた。やめたというべきか、歌華が終わらせてしまったというべきか。
「できたわ」
「荒技……」
参加者の天秤旬もドン引いている。この世のものではないですと。
「これでもうあんたは誰も傷つけることはできない!」
「貴様! 見せしめに殺してやる!」
「え?」
「死ね!」
近くの看護師に銃を向けさせる。と思ったが、歌華は弾を避けてしまう。
「クッソ!」
これが文月家の長姉だ。彼女の強さに圧されながらも周りの人間は文月歌華は狂っているのではないかと怪しむのだった。しかし味方になればこれほど頼りになる存在も、そうそういまい。良かった。歌華がいてくれて。とはいえ状況は何も変わっていない。ゲームを進めなければこれ以上、何があるか分かったものではない。一旦、休憩のために次の部屋……というより食堂に行ってみるとデスゲームのテンションとは思えないような声が飛び交っている。
「食べ物がたくさん積んであるよ!」
「魚やアイスもあるぞ。食べ物「は」あるのはありがたいな」
「毒は……入っていませんよね?」
「ただの食事ですって」
どストレートに尋ねながら食べ物にかぶりついている陶瑚が見える。そして自分も近くにあったものにかぶりつく幸呼奈。臭みもなく味も悪くない。もちろん自分たちを労って与えてくれているわけではない。もう食事というよりゲームを生き抜くための栄養補給だ。