テラーノベル
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心地良い風はいつでも吹いているわけじゃない
時に荒波のような強い風
雫が流れ落ちる雨を含んだ風
風にも喜怒哀楽はあるのだろう
蒸し暑い7月下旬の今日。仕事で山の古民家へ訪れていた。
幸い雨は降っておらず地面もカラカラ。滑る心配はないようだ。
|こんにちはぁ。以前お話した__です!誰かいらっしゃいませんかぁ~?
何の返事もない。ただただ蝉の声が聴こえてくるだけ。
炎天下の中、俺は一人呆然の立ち尽くす。本当なら俺なんかのアイドルは一人でのロケなどあり得ない。
スタッフ、マネージャー、カメラマン…その他諸々居ないロケだなんて…聞いたときは耳を疑った。
|えぇ……今日だよな?てかここスマホ使えねーし…
来てしまったものはしょうがなく、俺は紙の地図を頼りに古民家の周辺を探索することにした。
|わっデケェ畑…
古民家から少し離れた所に膨大な畑が広がっていた。
都会育ちのため、その光景がとても美しつ見える。すぐ近くには湖もあり、中々味わえない風景だった。
|……てか、人探さなちゃ…
|…ん?なんだ…居るじゃん
畑の真ん中、人影らしきものを見つけた。
ホッとする気持ちと、人が来ると分かっていながら家を留守にする度胸に少し苛立ちを覚えたが、ぐっと飲み込んで声をかけた。
|あのぉ!!以前お話したテレビ局の者でーす!
…
反応はない。聞こえていないのだろうか。
|もぉ…あのぉ!!
|えっ……
何もなかった。俺が人と思っていたものは
“ただのカラスの集まり”
それが人に見えていただけだった。
|はっ…カラス…?こんな大量に…??
俺はなんだか怖くなった。今この大自然の中にだった一人。神やら妖怪やら迷信やら…信じるタイプではないのに…
今は凄く、恐い。
|っ……下まで行って…連絡入れよっ…
俺が畑から去ろうとした時だった。
|何してるの?
|ビクッ!!はっ………??
突然後ろから声をかけられた。俺は驚きと一つの疑問をいだいた。
“足音がまるでしなかった”
地面は草が生い茂り、一歩歩けば草同士がこすれ合う音が聞こえる。
なのにこの男が近づいてきた時、音がなかった。
|だ…誰っすか…?
|…取材来るって言ってた人?
|えっ…ん…?まぁ…??
|ふ~ん…ごめんなさい。さっきまで留守にしててね。
|い…やっ…大丈夫っすよ…
|俺の何を知りたいのか知らないけど、家はこっちだから
|あ…はいっす、…
俺は言われるがまま、その男に付いて行った。
|お兄さん、タレントって人?
|いや…僕はアイドルです
|あいどる…?
|えと…歌ったり、踊ったりする仕事です
|へー…俺生まれも育ちもここだから分からないんだよね。そういうの
|ここで…?1人ですか?
|そーだよ。もう家族は全員死んだからね
|……すみません
|別にいいよ
|あの…
|ん?
|…不便じゃないんですか?
このご時世、機械という機械がない家を始めてみた。
家のリビングは冷房も、テレビも、ラジオさえない。辛うじて冷蔵庫はあるようだがそれもいつから使っているのかと思う程ボロボロだった。
|いや…別に……んで…俺の何が知りたいの?
|…、あっ…ここでの生活について…教えて欲しくて…
|いいよ、答えれる範囲でね
|えっと…じゃあ…
|あー待って、名前聞いてなかったわ
|あ、…確かに
質問も後半へ差し掛かった時、男が口を開いた。確かに出会い方が出会い方で名前など名乗るのさえ忘れていた。
|俺は“岩本照”。ここの5代目かな?
|俺は___の“深澤辰哉”です
岩|___ってのは、ぐるーぷ?の名前?
深|そうです
岩|ふーん…聞いたことないや
深|(でしょうね
テレビもラジオもないのにどうやって都会の情報を仕入れるってんだ。
ちょっと内心苛々としつつ、質問を続けた。
深|ここ冷房もないのに、今の時期でも涼しいんですね
岩|冷房…あーあの冷やすやつ?…そうだね、それは“俺たち”にとって要らないからね
深|へー…では次…あの膨大な畑、1人で全部してるんですか?
岩|あれ?あれは“ほとんど一人”かな…結構な重労働だけど
深|………?
さっきからこの人が言う“俺ら”とか“ほとんど”ってなんだ?
ここに住んでいるのは一人なんだろ?
俺は、さっきの畑でのことを思い出す。
深|……カラス…
岩|…からす?
深|あ、いえ、何でもないです
岩|そう…それで、質問は終わりなの?
深|えっ?あ、はい…これだけですね
岩|はーい。……そうだ泊まっていったら?この時間から下り始めるのは危険だからね
深|えっ…そんな急に…
ますます怪しい。でも確かに時間が流れるのは早くて、もう日の入りが始まる時間に。
ここで無理して下って、ほかの仕事に影響が出るよりかはマシかと思い甘えることにした。
深|お風呂もご飯も、ありがとうございます
岩|いいんだよ。俺も久々に人とご飯食べれて楽しかったんだから、
深|そうなんですね…
岩|…部屋一緒でもいい?布団運ぶの面倒だからさ
深|あ、はいっ。俺も手伝います
岩|いいよ、ちょっと待ってて
優しいのか怪しいのか。
でも普通に会話してる分には何も感じない。ただただ優しいパーフェクトヒューマンって感じ。
あの不思議は何処に行ったんだ…?
岩|スースー……
深|……
俺は眠れなかった。環境が変わるとここまで寝付けないなんて…どんだけデリケートなのだろう。
…俺はふと、岩本のほうを向いた。何となく…ただ何となく…
深|……えっ…?
俺が驚いたのは岩本ではない。
その奥の、縁側の窓から覗くカラスの大群に…
深|っっ…!!!うわぁぁぁぁぁっっ!!!?
岩|ビクッ!え…?なに…?!
深|かっ…!!カラス…!!!?
岩|えっ……?あぁ……
ちょっと…お客さん来てるんだから覗かないでよ…怖いわ…
深|はっ…??!
ガラガラッ…
岩|なに?心配で見に来たの?だからって怖いわそんなに大群で…
岩|うん…明日ご飯持ってくから今日は戻って?
岩|うん、はーい
バサバサバサッ……
岩|ふぅ……ごめんね、深澤くん…怖がらせt…
深|カタカタカタッ……!(涙目
岩|あー……大丈夫じゃねーか…
カラスにもびっくりした。
でも…それ以上に…
“なぜカラスと会話ができる”…???
岩|……俺の目見て?
深|はっ…??
岩|……君たちがここへ来るからだよ…なんだろ、お偉いさん?とでも言うのかな?
岩|俺の話を聞かずにゴリ押しでここへの取材に漕ぎ着けて…
岩|君は何も知らないとはいえ、こんな仕事なんで断らないのかなぁ…
深|な、にいって…ッ(涙目
岩|……ここはね、
“烏の集”って言う場所なんだよ
深|烏の…、、つどい…??(涙目
岩|先祖代々、ここは烏が集まって宴を開く場所なんだよ。だから人間はここに立ち入っちゃいけない。
もし立ち入ったものはここから二度と人間世界に戻れない場所なんだよ
深|はっ…?はぁ……???(涙目
岩|そこにこんな可愛い子を連れてきてくれるなんて……人間は愚かだなぁ…?笑
深|っ…!!やだ!来ないで!!!
岩|大丈夫…君を甚振ったりしない…君は俺の…
“子を産むための器になるんだから”…
岩|たーつーやっ!みてぇ?2人とも歩けるようになったよ!
岩|ふふ笑、じゃあ…次の子供作ろっか?♡
岩|“一生逃さないよ?♡”
辰|ビクンッ♡ビクッ♡……ひかりゅ…//♡
辰|“もっとひかりゅのちょーだい?♡”
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