「女の子? わかった、直ぐに出るから、その辺に子機を置いといて」
「じゃあ、ドアの所に置いとくからね。それと早く出てあげなさい。泣いてるみたいだったわよ」
泣いてる?
僕は濡れた体を慌てて拭くと、直ぐに電話に出た。
『もしもし、お待たせしっ‥』
『会いたい…会いに来てくれますか?』
声を聞いただけでは亜季ちゃんなのか葵さんなのか、わからなかった。
『わかりました。今直ぐに行きます。どこにいるんですか?』
『駅にいます。こっ‥紺野さんの地元の駅に…‥』
僕の呼び方で、葵さんだとわかった。
『わかりました。待ってて下さい』
『はい…』
それから急いで服を着て家を出た。
外は、まだ雨が降っていた。
僕は傘をさして、駅に向けて全力で走った。
すると、駅まであと1kmという所で、遠くから傘もささずに歩いて来る人影が見えた。
でも直ぐに…その人物が誰なのかはわかった。
「葵さんっ!」
そう叫ぶと、葵さんは僕に向かって走って来た。
そして僕の胸に飛び込んで来ると、震えた体で強くしがみついてきた。
「葵さん…こんなに濡れちゃって…駅で待っててくれればよかったのに…」
僕は、雨で濡れた葵さんの髪を撫でながらそう言った。
「だって…1秒でも早く会いたかったから…‥」
葵さんは僕の胸に顔を押しあて、震えながら泣いていた。
明日になれば会えるのに、何でわざわざこんな雨の中を僕に会いに来たのだろう…?
「ねぇ、葵さん…どうしっ‥」
「どうしても今日会いたかった…それじゃダメですか?」
「だっ‥駄目じゃないよ」
僕は、震える葵さんの体を強く抱きしめた。
「このままじゃ風邪ひいちゃうから僕の家にいっ…」
「ホテルに連れて行って…‥」
「・・・・・」
「私を抱いて下さい…‥」
「わっ‥わかった」
葵さんを、ここまで追いつめてしまった責任を強く痛感した。
それに、決死の覚悟を持って僕に会いに来た葵さんの気持ちに応えるのも僕の使命だと感じた。
それから僕らはホテルに行き…‥
僕は葵さんを抱いた…。
翌日…‥学校に着き下駄箱で上履きに履き替えていると廊下を歩いている千葉に声をかけられた。
「オッハー。瑛太こんな所で何してるんだ?」
「何してるって…見ればわかるだろ。靴を履き替えてんだよっ」
「瑛太ちゃん、あなたはバカでちゅか? そんなの見りゃわかりまちゅよね?」
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