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リビングでは継父と亮平が祖父にビールを出されていて、美奈歩は料理を運ぶ手伝いをしていた。
「負けないもんね!」
私は張り切って台所に入り、次々に料理を運び、どの取り皿をとるか指示をもらって尊さんにも協力してもらって運ぶ。
やがて大きなテーブルいっぱいにご馳走が並び、それぞれ飲み物も行き渡った。
ビールの他には祖母秘蔵のワインや、祖父のウイスキーコレクション、ボトリングティーの『香駿』、山梨果実の赤葡萄ジュースなど、高級レストランも真っ青なラインナップだ。
そしてビールは我が篠宮ホールディングスのビールもあるけれど、京都の地ビールもあって、継父や亮平が珍しそうな顔をしていた。
「ほな、いただきます」
「いただきます!」
祖母の声かけに続いて私たちは手を合わせ、ご馳走にありつく。
九条葱の酢味噌和えはおばんざいの定番で、祖母はそれにカツオを和えている。
祖母の家で初めて知った万願寺とうがらしは、ピーマンを細長くしたような大きさで、まったく辛くない唐辛子だ。肉厚なそれを蒸し焼きにしてお醤油と鰹節でいただく。
ターコイズブルーの小鉢には壬生菜とエノキのお浸しがあり、祖母の作る肉豆腐は勿論牛肉を使ってある。
他にも見ただけでいいお肉と分かるステーキがたっぷりあり、贔屓にしているお寿司屋さんのお寿司もある。
「うわあああ……。嬉しい……。ご馳走。美味しい」
私は笑顔でパクパクと料理を食べ、遠慮なくビールやジュースも飲む。
「お母さん、こんなに張り切らなくていいのに」
母が言うと、祖母はカラカラと笑って言った。
「最初は格好つけてご馳走せな。けど明日の夜は観光ついでに好きに食べてきぃや。宿代は浮くんやから、豪遊してき」
母が言うには、京都の人はおもてなしが好き……というか、しなければ格好がつかないと思う節があるらしい。
知り合いが京都近くに寄ったのに、気を利かせて連絡をしなかったとかだと、もてなす事のできない人だと思われたと感じてしまうのだとか。
そういう考え方、気質があるという話で、勿論全員がそうではないし、予定が合わなかったら仕方ありませんね、ともなる。
「それにしても篠宮さんは、こちらのビールの会社さんなんですって?」
祖母はビールの缶を手に持って、尊さんに微笑みかける。
「はい。父が元社長で、現在は異母兄が社長、私が副社長を務めさせていただいております」
「篠宮ホールディングスのビールには、いつもお世話になってます」
祖母にニッコリ笑われ、尊さんは地ビールの入ったグラスを掲げた。
「京都のビールもとても美味しいですね。このスプリングバレーは、朱雀ビールさんでしょう。確か河原町に直営店があるんですよね」
朱雀ビールは、篠宮ホールディングスのライバル会社であり、こちらも日本全国に名を轟かせている飲料メーカーだ。
「よう知ってはりますね。あら、嫌やわ。ライバル会社のビールが集まっとる」
今になって気づいたのか、祖母は手で顔を覆った。
「尊さん、これが京都人のいけずですよ」
「これ、朱里」
焦った祖母に注意され、私は「あはは!」と声を上げて笑う。
テーブルの上には一乗寺ブリュワリーの、カラフルで可愛いラベルがついたクラフト瓶ビールもある。
たっぷり飲み食いしたあと、デザートに出たのは『和菓子いけだ』の京のくずあそびだ。
アイスキャンディーみたいな葛のお菓子で、冷凍庫で冷やされていてシャリッとしているけれど、モチモチプルンともしている、非常に美味しいお菓子だ。
私は白桃味を選び、満面の笑みを浮かべてデザートを味わう。
「篠宮さん、朱里ようけ食べるでしょう。食費がかさむと思いますが、見放さないでやってくださいね」
「ちょっとお祖母ちゃん!」
私が突っ込みを入れ、全員が笑う。
そのあと、長距離ドライブをして疲れただろうからと、早めに休む事にした。
「隠岐家のお墓ってどこにあるんだ?」
寝る前、シャワーを浴びてスッキリした私たちは、ベッドに寝転んでスマホを弄っていた。
「八坂神社や円山公園の近くです。毎年、湯葉丼食べてますね」
「お、いいな。湯葉は食べたいと思ってた」
「明日は夜、川床予約してくれたんですよね? 楽しみ!」
「なかなか暑いけど、夏の京都でしか体験できない事したいよな」
「はい! ハモハモ」
「願望が口に出てるぞ」
尊さんはクスクス笑い、スマホを枕元に置くとタオルケットを体に掛けて横たわる。