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雨が降ってきた、パラパラという音をたてながら。
彼女は憂鬱な気分になる。『また私の嫌いな雨が降った』そう思いながら彼女は窓を閉めた。
部屋が暗い、全体的に薄暗い。そんな事を思いながら彼女の気持ちはどんどん沈んでいった。
ふと後ろを振り向くとそこにあったのは扉だった。本当はこんな所に扉なんてないのに、その扉は壁と扉の隙間から青白い光を放ちながら彼女がその扉に入るのをいまかいまかと待っているように、そこにあった。
彼女は興味本位でその扉のドアノブに手をつけ、開けてみた。そしてその扉の向こうにあったのはーー雨の世界だった。
雨の世界は晴れていた。『雨の世界なんだから雨降ってろよ』彼女はそう思ったが、次に見た景色で一気にそんな思いが止まった。
彼女が目にした景色はーー天気雨。
ただの天気雨のはずなのに、そして晴れてはいるが自分の嫌いな雨なのに、その風景は彼女にはとても綺麗で美しかった。
空は晴れているのにパラパラと降る雨、そしてその雨が夕焼けの空と赤く染まった太陽に反射してキラキラと輝いて見える。そしてその雨がこの街に良く似合う。この街はどちらかというとヨーロッパ風の家が建ち並んでいるため本当によく似合った。
「ね、ここから見る景色は綺麗でしょ」
そんな声が聞こえた。えっと思い振り向くとそこにいたのは英国紳士のような服装をした男性だった。
えっ、誰。と彼女が言うとその男性は少し微笑んで
「私はこの国、いや、この世界の案内人です。名前は特にありませんが、この世界の人々からはキャノルと言われています」
と言った。続けてキャノルが
「あなたは特に名前を名乗らなくとも結構です。この世界では名前なんて無くとも生きていけますからね。ではこれからこの世界をご案内しましょう。どうぞ、ついてきてください」
そう言ってキャノルは歩き出す。
キャノルは様々な場所を案内してくれた。この街、いや、この世界はとても住みやすそうな場所でとても居心地が良かった。
『なんか雨って良いかも』と彼女は思った。