目が合うと時間が止まって、周りが透明になった。
『あ、うん…』
求められた握手の手を重ねる。
ほんのりと手に移った彼の──三葉くんの体温にあたしは初恋みたいに体中の熱を上げる。
ドクドクと脈打つ心臓は明らかに新しい学校生活を待つ心音ではなく、自覚した瞬間、紅葉のように皮膚が赤く染まっていく。
『よろ、しく…』
これがわたしと三葉くんの、平凡な出会いだった。
彼の言う通り席はしばらく席は隣同士で、その間に彼のことについてたくさん知れた。
カメラが好き。実は口が悪い。声がうるさい。女顔。生意気。怖がり。
─…そして、わたしと同じく友達が出来ない。
そんな彼の内側を知れば知るほど胸の奥がドクドクと熱湯を注がれているみたいに熱くなって言葉には言い尽くせないほどの幸福感に包まれていく。この教室でわたしだけが知っている彼の姿なんだって思うとさらに体の奥が熱くなっていく。
これが“恋”と呼ばれる感情だと気付くのにはさほど時間はかからなかった。
「なんで友達って上手く作れないんだろ。」
『わたしに聞かないでよ』
それもそうか。って言って二人で笑う時間が好きだった。
口では友達が欲しいと言っておきながら彼が居ればべつにどうでもよかった。入学前はあれほどたくさん友達が欲しいっと思って居たのに、彼一人だけで良かった。
彼一人だけで、よかったのに。
『………ぇ?』
隣の席に置かれた百合の花が添えられた花瓶がぐにゃりと歪む。
今自分の耳に入ってきた涙に濡れた先生の声が夢の中に居るかのように曇って聞こえる。
みんながザワザワと話し合う中、わたしだけがずっと固まったままだった。
何か言いたかったのに声が出なかった。逃げ出したかったのに体が動かなかった。
─…「また隣の席?」
─…『なんで嫌そうな顔するの?』
中学2年生の、冬の日。
三葉惣助が死んだ。
コメント
2件
みつば君がぁ😭