あの日。三葉くんが死んだ日。
お母さんの誕生日だからカレー作る。
そう少し照れたような色をいつもの生意気な声に滲ませた三葉くんの言葉が携帯越しから聞こえ、胸が暖かくなったのを今でもよく覚えている。
「あ、ジャガイモないや。買ってくる。」
『いってらっしゃーい。』
まさかそれが最後の会話になっただなんて思いもしなかった。
死因は事故死。
三葉くんが最期に喋ったのはわたしだという。
もしもあの時、わたしが三葉くんにもっとなにか言葉をかけていたら、彼は今日もわたしと軽口を叩き合えていたのかもしれない。そんなどうしようもない後悔が弱り切った自身の心をジワジワと蝕んでいき、しばらく学校へ行けなかった。
夜眠れば生きていたころの三葉くんがあの憎たらしい笑顔で生意気な言葉を吐く夢を見る。
起きていたら「もしもああしていれば」という自責の念に心が苦しくなる。
そうやって毎日寝られず、目の下にほんの少し紫色を帯びた黒い隈が刻まれて死人のようにやつれた今のわたしを三葉くんが見たら、きっと疫病神だとか言って笑うのだろうな。
そうなんでもかんでも三葉くんに結びつけてしまうわたしに、ママとパパや先生たちは「今は辛いだろうけど早く忘れなさい」と泣きながら叱った。
だけど誰に叱られても、誰に泣きつかれても、彼のことを忘れられるはずなかった。
─…「え!?プリンって家で作れるの!?」
プリンが好物だと知って、一生懸命作って渡したときの驚いたような顔も。
─…「もうちょっとこっち向いて。」
カメラを片手にこちらを真剣に見つめてくる姿も。
─…「やーい妖怪ナスビババァ!」
中性的な整った顔を歪めて口の悪さを発揮させるときの意地悪な表情も。
『…三葉くん。』
全部好きなんだもん。忘れられるわけないじゃん。
このまま時が止まればいいのにと願うわたしとは反対に時間は止まることもゆっくりとスピードを緩めることも無く、今まで通りの速さで以前通り進んでいった。
そうして、わたしがようやく学校へ行く決心がついたころは、中学3年生になっていた。
コメント
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切ない系だぁ😭