タクシーの中で、私は光のマネージャー・佐藤さんに場所を詳しく聞いた。
新宿の雑居ビルにある、古びた稽古場。
到着すると、階段の踊り場から怒鳴り声が聞こえてきた。
「……だから、あいつと別れさせろって言ってんだよ! 栞は俺の女なんだ!」
健太の声だ。執着と嫉妬が混じり合った、粘り気のある声。
「……しつこいな、お兄さん。だから、あいつは誰の物でもねえって。本人が嫌がってるだろ」
それに応える、光の低くて落ち着いた声。
でも、どこか無理に抑えているような、危うい響きがあった。
私はドアを勢いよく開けた。
「……健太! いい加減にして!」
そこには、光の胸ぐらを掴み、今にも殴りかかりそうな健太がいた。






