リビングのソファにごろりと寝転がる仁人は、襟足の髪の毛をちょろちょろ指でいじりながらスマホをいじってた。
画面には、勇斗が出演してるドラマの公式インスタ。ストーリーには、共演中の女優さんと笑い合うツーショット。距離が近い。あまりにも近い。
仁人は思わず小さく眉を寄せる。
(は?何こいつ距離近。こいつ俺にばっか距離近い距離近い言いやがって)
そんなふうに思ってた矢先
「仁人なーに見てんの〜」
後ろからぬっと顔を出した勇斗の声。
いつの間にかシャワーを出たらしく、髪はまだ濡れてて、白いTシャツの襟元がちょっとだけ濡れてる。
「……インスタ。ほら、勇斗のドラマのやつ」
「ふーん?あ〜これ?おれと○○ちゃんのツーショ。どう?かっこいい?」
わざとふざけたトーンで言う勇斗。
仁人は目線を上げずにスマホを操作しながらぼそっと答えた。
「……かっこいいんじゃない?」
「え、素っ気な?!」
「そして距離、近いね〜、佐野さん」
その一言に勇斗の手が止まる。
「え、もしかして……嫉妬してる?」
「別に」
「え、してるやん絶対。顔怖すぎだっておまえ」
「…」
無理に淡々と返す仁人の横顔に、勇斗はにやっと口角を上げて、わざと距離を詰める。
「……ねぇねぇ仁ちゃ〜ん♡そういうとこもかわちい界隈だね?♡」
「うるさい。近いって」
「もー、仁ちゃんにも俺は近づいちゃダメなの?」
「…うるさー」
「…てかさあ俺の方が嫉妬してるから!」
勇斗はちょっと拗ねたように言いながら仁人の隣にちょこんと座る
「……え?」
仁人は眉をひそめて勇斗の顔を見る。
「いや!だってさー」
勇斗は急に早口になる。
「お前、最近レコメンで色んなゲストとぺちゃくちゃぺちゃくちゃ仲良さそうに喋ってんじゃん!?
なんか後輩とも仲良くしてるし!しかもめちゃくちゃ構ってもらえて嬉しそーな顔しちゃってさ?!」
「あとはー」
「……それ、嫉妬の方向性おかしくない?」
「おかしくない!お前が悪い!」
「なんで俺なんだよ?!」
「だって!俺以外のやつとあんなに楽しそうに喋ってるのおかしいもん!」
「いやー、、仕事だから仕方ないでしょ」
「知らん!俺はいやなの!!」
仁人は思わず吹き出して、頭を掻いた。
「……それ仕方ないでしょ、別に。仕事だし」
「でもお前、俺の現場の話とか聞いたら“ふーん”で済ませるくせに!絶対嫉妬して怒ってんじゃん!!俺だって仕事だしー」
「聞いてるじゃんちゃんと。…てか、お前だってドラマの撮影で距離近くなるのはしょうがないけど、なんか写真撮る時とかもちけーじゃん!いっつも俺に距離近いって言ってくるけど勇斗の方が距離近いんだよ!」
「いやそれはカメラマンさんが決めてんの!」
「違うでしょ絶対。お前が悪い!」
「えーなんで俺が悪いんだよ!?!?」
「別になんか頑張れば距離近すぎずに写真撮ることだってできるだろうが!」
ふたり、向かい合って声を張る。
まるで小学生のかわいい喧嘩。
けど、仁人の口元がだんだん緩んできて
「……はぁ。くだらねぇ」
「くだらなくないし!」
「くだらねえよ!」
「じゃあ何、もう嫉妬されてもいいってこと?」
「うん、別にいいけど?」
「ねえなにそれ」
勇斗は腕を組んでふてくされたように顔をそむける。仁人はそんな勇斗の頬を指でつんつん。
「……おい」
「可愛い嫉妬すんなよ」
「可愛くない」
「めっちゃ可愛いよ」
「あーもう可愛くない!可愛いって言われてるのはおいちゃんだけでいいの!」
コメント
2件

めちゃめちゃ最高です😂 ありがとうございます!!