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店長は人形が並ぶショーウィンドウのガラスを布巾で磨きながら、

「そういやぁ自己紹介してなかったね!僕は紗凪幽だ。みんなには『ゆう』とか『ゆっちゃん』って呼ばれてるから好きな方で呼んでくれて構わないよ」

と言った。

「わかりました。では店長と呼ぶことにします」

俺がそういうと少し残念そうな顔をしたがすぐに笑顔に戻って、

「そっか……まあいいか。じゃあさっそくだけど倉庫に行って荷物運んでくれる?それが終わったら制服渡すから着替えて」

と言われた。

言われた通りに倉庫に行くと段ボールがいくつか置いてあった。

開けてみると中には可愛らしいフリフリのワンピース…(ロリータというやつだろうか)が大量に入っていた。

………………これ着るの?マジで?

と眉間に皺を寄せて店長の趣味を疑っていると店長がふらっと現れて、「もしかしてそれが制服と思ったの?君って意外と阿呆なんだね」とけらけら笑ってきた。イラついた。

店長は俺の頭に軽くチョップを入れ、

「サイズが違うでしょうがーサイズが。人形用だよ」

確かにサイズがどれも違くて明らかに人間が着られなさそうなやつもある。

じゃあ俺が最初に手にとった服を着る人形、俺くらいでかいってことだよな…えぐいな…とドン引きしていると、

「そんなに引いた目で見ないでよ……。これは僕が探してきた超レアな一点物なんだから!」

「へぇ、すごいですね……」

「あ、信じてないでしょ!?」

そんな会話をしながら荷物運びは終わった。次はいよいよ制服か。どんな服だろうと思いながら手渡されたのは普通の深緑色のエプロンだった。

制服じゃないんかい。ちょっとかっこいいの期待してたよ。

「おぉ〜似合ってんじゃん!よし、これで君もこの店の一員だね。お疲れ様」

時計を見るともうすぐ10時になろうとしていた。まだ何も始まっていないのにものすごく疲れた気がする。

「あ、そうだ。君にはこれから店番をしてもらおうと思ってるんだけど、お茶汲みの仕方分かる?」

「大丈夫です」

「ならよかった。お客さん来たら呼んでね〜」

と言って店長はまた店の奥に消えていった。

それからというもの、俺は暇を持て余していた。客が全然来ないのだ。

店内には相変わらず美しい人形たちが並んでいるが、やはり不気味な感じが否めない。

早く誰か来てくれないものかと考えていると、 カランコロン とドアベルが鳴ってスーツを着た女が入ってきた。

どうやら初めてのお客様らしい。

「い、いらっしゃいませ」

と言うと彼女は微笑んで、

「こんにちは。人形を探しているのですが」

と言い出した。どうやら人形コレクターらしく、コレクションを増やすためにここにきたようだ。店長に言われた通りに客がいたので店の裏にまで呼びにいくとすぐに出てきた。

「はいはーい、どのような人形をお探しですか?」

「そうね……。あまり大きくなくて、それでいて華やかなのが良いのよね……。あ、あとなるべく古いものね」

「なるほどぉ!わかりました。少々お待ちください」

そう言って店長は奥の部屋へと消えた。そして数分後、何やら古びた箱を持って戻ってきた。

「こちらでいかがでしょうか?」

彼がその箱を開けると、中にはアンティーク調の大きなフランス人形が座っていた。髪は綺麗な金髪で、目は青く輝いていてまるで本物の宝石のようだった。

「あら素敵ね。いくらなのかしら?」

と彼女が言うと、店長は笑顔のまま言った。

「30万円になります!」

……は?この人今なんて言った?え、聞き間違いだよな?

「そうねぇ……。買おうかしら……」

はいぃ!?この人正気かよ!絶対騙されてるだろこれ!!

「毎度あり〜!」

店長は満足げに笑って彼女からお金を受け取っていた。おいおいまじかよ!と驚いていると店長がこちらを見てウィンクをした。

(君もこんだけ稼げるようになれればいいね☆)

とでも言っているような顔だ。

いやいやいや!無理だろ!こんなものぽんぽん買えるような金持ちにそう簡単になれるか!と心の中で叫んだ。

その後、彼女はご機嫌な様子で店を後にした。そして再び店には静寂が訪れた。

俺はさっきの衝撃がまだ抜けきっていないのか、呆然と立ち尽くしたままだった。

すると店長がひょこっと現れて、

「一月くん!お客さんが帰ったんだからちゃんとお見送りしなくちゃダメでしょー!」

と俺の背中を叩いてきた。痛かった。

「すみませんでした。ところで人形って思ってたより高価なんですね。びっくりしましたよ」

と苦笑いしながら言うと店長はけらけらと彼特有の声で笑い、

「あれはちょっと僕が探してきた珍しい子だったからね。普通はもっとお手頃に手に入ると思うよ。あと一月くん、僕は人形を売って稼ぐためにこの店やってるわけじゃないから金額には対して興味ないんだ。僕は人形のそばにいたいだけ」

と言った。よくわからないが人形が好きすぎてここを始めたということだけは分かった。

変わった奴もいるもんだなぁと思っていると、店長が思い出したように話し始めた。

「今日は午後から出張だよ!」

「出張って……訪問販売とかですか?」

「違うよー、訪問販売とか管理めんどすぎるしー。………僕の店のもうひとつの仕事だよ。」

もう一つの仕事?ただの人形屋じゃないのか?と頭を抱えてうんうん唸っていると、店長はまたけらけらと笑い、

「ま!行ったらわかるよ!」

と言って彼は店の奥へ消えてしまった。

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