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それから数時間後、俺は店長に連れられてとある場所に来ていた。そこは森の中にある大きな屋敷だった。
「あの、ここは?」と聞くと店長はにっこり笑って
「見てれば分かるよ」と答えた。一体なんなんだと思いながら待っていると、突然門が開き中から一人の男が姿を現した。
「お、やっと来たか。遅いぞ」
男はそう言いながらこちらに近づいてきて、
「久しぶりだな、幽。元気にしてたか?」
と店長に話しかけていた。店長は少し困った顔をして、
「いや、うん、そうだね。…湊こそ元気、だった?」
おかしい。たった2日目の付き合いでも店長は不躾で幼稚な人物とわかる。なのにこの男の人に対してすげーよそよそしい態度とってんの。
こりゃ絶対過去に何かあったクチだな。あとであの男の人に聞いて店長の弱味握ろーっと。
イケメンの弱味なんてなんぼ握ってもええですからね。
そんなことを考えているといつの間にか話は進んでいたようで、湊と呼ばれた男と店長はどこかへと歩き出していた。俺もそれについていく。
「にしてもお前が店を持つとはなぁ……。昔みたいに俺が面倒見なくても大丈夫になったのか?」
「あぁ、まぁ、うん。なんとかね……」
「ふぅん……。ならいいけどな。ところであいつ誰だ?見たことねぇ顔だけど」
「うーんとね、バイトの子かな?」
「おー、なんていうか普通な感じのやつだな。お前のことだからもっと顔面が良いやつ雇うと思ってたわ。」
「……湊、僕が面食いみたいな言い方やめて。僕人形にしか興味ないし、それに僕の店はホストクラブじゃない。」
なんだこの二人。至近距離に俺がいるにも関わらず言葉のナイフで滅多刺しにしてきたぞ。
あと店長自分じゃなくて部下のフォローをする気はないのか。
後ろでぎりぎりと歯を食いしばっていると、
「ところで……今回の依頼なんだが、俺の娘を助けて欲しい。……助けて欲しいと言っても命の危険に晒されてるとかではないんだが……」
すると屋敷の奥から一人の少女が、コツンコツンと靴の音を響かせながら歩いて来た。
その少女は人形を抱えている上その人形と全く同じドレスを身に纏い、
「お客さまですか?」
と無機質な声で俺たちに呼びかけた。