プリュマシエ(羽根細工職人)であるリーシュの作る羽根細工はどれも見栄えがよく素晴らしかった。
華やかな衣装や高級家具には彼の羽根細工が使われるほど人気が高い。だが、その一方で同業者からは妬みとやっかみで嫌がらせを受けていた。
店の前にはゴミが散乱したり、酷いものだと鳥の死骸を置かれたこともある。
「──そんな暇があるなら腕を磨けばいいのに」
どんなに嫌がらせをされようとも冷静に対処していた。そのことも同業者には気に入らず、エスカレートしていった。
そして生卵をぶつけられそうになるが寸前で避ける。玉子が割れ壁にべったりと卵黄がひっついた。
(毎度のことといえ、もったいないな……)
店の奥から水の入ったバケツと雑巾を持ってくる。
「文句があるなら直接言いに来いっつーの」
壁に付いた卵黄を雑巾で拭き取る。
赤いドレスをまとった美女が眉をひそめた。
「なぜきみはそんなに冷静なんだい?」
「なぜって言われても生まれつきだから仕方ない」
「鳥の死骸を置かれるのは、さすがに見過ごせない悪質なことだぞ?」
ため息をつく。
「下手すれば細菌に感染する怖れだってある」
顔なじみである赤いドレスの美女──マギサ・ナシュライティスは呆れた様子でリーシュを見つめた。
「相手がとんでもないことを仕出かす前に手を打つべきではないのか?」
「といってもフードを目深にかぶってるしな」
「わたしのお気に入りの店に嫌がらせをするとは、いい度胸だ──」
彼女は《深潭の森の魔女》と呼ばれ人々から恐れられている。願いを叶えるが代償を伴う。そして気まぐれの性格。
「暴力はダメだぞ」
「暴力など使わないさ」
にっこりと微笑む。
「ああそうだ。アップルパイを持ってきたんだった」
籠から包みを取り出す。
「自信作だ」
包みを開けるとアップルパイが現れた。リンゴの甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
「相変わらずお前はアップルパイが好きだな」
「この世で一番といっても過言ではない」自信満々に胸を張る。
「それなのに友人のアンジュは食べ飽きたといって、食べてくれないのだよ」
「──飽きるまで食べさせるな」
「食べ飽きないようなアップルパイを研究中だ」
「さすがにやめてやれ」
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#TELLER民ワンドロ・ワンライ お題 : 羽根 (+9min) なんとかがんばりました🍵 プリュマシエ(羽根細工職人)はフランスの実際ある職人さん🪶