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サイド タエ
ダイキが、ダイキじゃなくなる気がしたから、本当は名字で呼びたくなかった。
でも、私はそう言えなかった。
『ダイキと友達でいて欲しい』
私は……ダイキの友達として、ダイキが前に進むことを応援することを選んだ。
自分のエゴを、グッと飲み込んだの。
「だ、だったら、私のこともタエって呼んで……!ダイキ……ううん、キノを一人にさせない……!させないから……!」
せめて、一人で先に行かせないように、無理させないように、隣に居ようって決めたんだ。
だから、私も名字で読んで欲しいって頼んだ。
元々本当の名前じゃないし、由来なんかも分からない適当につけられた名前より、私はダイキやダイチと一緒に考えた名字の方がいい。
どんな理不尽なことにも“タエ”られる、みんなと一緒にいるなら、こっちの名字の方がずっといい。
…………でも、
『これからよろしくな!ユイカ!』
初めて私の名前を呼んでくれた、あのときの太陽みたいに眩しい笑顔が、今も脳から離れない。
あのときから、ずっとずっと、ダイキは私のヒーローだった。
ダイチじゃなくて、ダイキに私は救われたから。
もう、あの笑顔で、私を読んではくれないのだとわかっている。だからこそ、そのことがすっごく苦しかった。
……ダイキを、ううん、“キノ”を、今度は私が助けるんだ。だから、我儘は、言っちゃダメだよね?
「……ユ、じゃないな。“タエ”、どうかしたのか?」
ズキン、と胸が痛んだ。それに気づかないフリをして、私は無理矢理笑ったみせた。
「う、ううん。なんでもないよ、“キノ”」
あれ以来、私はダイキの名前を呼べていない。